教室めぐり

4.高知県「語りかける言葉のチカラを大切にしたい」

高知支部 依岡クラス

高知市福井町839-4

TEL:088-873-3810

 依岡先生は、生徒たちと母親たちには、繰り返すことの大切さを実践。
3カ所ある教室の内、救世軍の教会を会場にしている教室を訪ねた。

 蝉時雨の山道。依岡先生が運転する軽自動車が快調に駆け上がったのは、高知市内を一望の元に見下ろす五台山展望台。暑い中、クラスの皆さんが待っていてくれた。

 鈴木先生が、この高台から市内を見下ろされたかどうか定かではないが、1974年、講演に高知を訪れた。柔らかな口調で「育て方によって、どの子も育ちます」と話す鈴木先生の語りは、依岡先生の母を瞬時に魅了した。5歳の由起さんに「やってみる?」「うん」。母の直感だ。金子典子先生の教室に通い始めた。

 姉のピアノ、妹のヴァイオリン、娘たちの習い事にあわせ、母が始めたのはフランス刺繍。音楽の専門知識を持たない分、範を示し、先にその道の指導者になっている。

 学校から帰ると待ち構えていて、友だちが来ても「ヴァイオリンの練習が終わってから」と、ぴしゃり。練習してきたことがレッスンでできないと、たとえ金子先生の前でも足を踏んだ。それが「愛情の裏返し」であることを依岡先生は最近、反対の実例で実感することが多い。

 たとえば、毎日のようにお稽古ごとに通わせる「子育ての外注化」が増えている点だ。外にお願いすれば子どもが育つのだろうか。依岡先生は、母親が子どもと正面から向き合い、徹底的に繰り返すことが大切だと感じている。「お母さんが言って、先生が言って、定着する」その働きかけを徹底する。依岡先生はベテランの指導者たちとコミュニケーションを重ねる中で、アンテナを張り、解決の糸口を賢明に見つけている。

 この7月、クレモナで楽器制作をしている松下敏幸さんが高知で講演した時のこと。「よいものを作るには時間がかかるし、自然のサイクルに逆らわないこと。ヴァイオリンの裏板のカーブを作るのに、夕暮れの光が斜めになる時に、ほんの少し削る」という話や、90歳を越すアメリカの絵本作家ターシャ・テューダーさんが、ガーデンでも蝋燭でも何でも手作りで、丁寧に生きる姿勢、そこに依岡先生は人間を育てる醍醐味を感じる。そして自分が語りかける言葉の意味を大人になって気づいてくれればいい、いわば先行投資。それが指導者になって17年で得たことの一つ。だから、スズキ・メソードの「初歩指導に力を入れる」という思想にとても共感するし、そのエッセンスが「音にいのち在り」のように一冊にまとめられたことが嬉しい。


 松本での4年間、多くのことを学んだ。鈴木先生がお菓子を見て「一番いいものを選びなさい」というのが、実はお菓子でなく、「いいものをキャッチできる目や心を磨きなさい」であること、子どもの成長も練習回数や音程より、その子なりの変化を見極めることが大切と学んだ。「CDを聴かない、練習をしない、人の話を聞かない小学生時代を過ごした女の子が、中学2年の時に自分なりに話を聞く大切さを知り、レッスンが変わりました。こうなると面白い」と話す依岡先生。現在、高校2年になった川口ひろかさんが、合奏の醍醐味とともに、いろいろな発見を楽しんでいる様子に、先生は温かい視線を投げかけていた。

 指導を始めて2年目の頃、徳島県での新規教室を願う母親からの熱意で、片道3時間の鉄道距離を5年間通ったこともある。その間、5000人収容する「アスティとくしま」でのコンサート開催もあり、関西、四国地区の指導者の力を借りながら、東奔西走。その時の子どもたちが、今は音大に進み、海外の大学でヴァイオリンを楽しむ。「蒔いた種が育っています。あの時、徳島に行かなかったら、どうでしたでしょう」

 常に自分に問いかけ、よりよい指導の実現を今日も目指している。

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