20回目となる ピアノ10台のコンサートを松本で開催しました!
フルコンサートピアノ10台が奏でた優美な音の世界!
4月28日(日)ザ・ハーモニーホール(松本市音楽文化ホール)で。
ピアノという楽器は、ソロ、連弾、他楽器とのアンサンブル、歌の伴奏、弾き語り、など楽しみ方はたくさん! でも10人で10台のピアノを一緒に奏でる、世界でも珍しいこのコンサートでは、もっともっと貴重な体験ができました。自分で自由に演奏するのとは違い、お友だちと呼吸や音色、そして気持ちを合わせることがいちばん大切。皆の心と指先をひとつに、迫力と感動の美しいパフォーマンスが繰り広げられたのです! 今年はアメリカとオランダからの生徒3名も加わり、足掛け33年、記念すべき20回目のコンサートになりました。
アメリカから初来日のJack Olmson君(13歳)に日本での今回の体験について、尋ねました。
ジャック君(中央) ピアノを始めたのは9年前、4歳の時です。レッスンを始めた頃、練習は全然好きじゃなかったし、今でもそうだけれど、でも練習するのは、練習すると上手くなるし、ピアノを上手くなりたいと思っていて、そのためには努力しなくちゃいけないことを知っています。
曲間のインタビューでも、滞在中に感じた文化の違いなどを話したジャック君 日本は初めてです。最初のカナダの時もそうでしたが、違う国の文化を知るのは楽しい体験です。最初、松本に来る途中の休憩所では、食べ物を注文する時のボタンを押すところが、アメリカと随分違うな、という感じでした。でも松本に着いてみたら、そんなに違っていなくて、同じところが多いなと思いました。
何度かカリフォルニア州サクラメントで10台ピアノコンサートに出たけれど、でも松本でのコンサートは随分違っていて、アメリカよりもずっと進んでいました。
カリフォルニアから来た先生とレッスンして、上手になるにはどんな努力を続ければいいのかということのアイデアをいっぱいもらいました。それに、ホームステイ先の子がひとり、同じ曲に参加するので、練習しやすかったです。お互いに他の人が何やってるかわかって、それを使えるから。
演奏したベートーヴェンのソナチネは好きな曲です。強弱をしっかりつけるところが多いし、すごく速くて、上手く弾くにはかなり操っていかなくてはなりません。コンサートでは、うまくいってヘマしなかったので、アメリカに戻ってからも、いい気もちでいます。面白かったので、また2年後の松本でのコンサートに参加したいです。
最後に、こんな素敵な旅行ができるようにしてくれた方々、すべての皆さんにお礼を言いたいです。
Jack君と一緒に参加された祖母のRenee Eckis先生にもお話を伺いました。
スズキ・メソードの指導者になるための勉強を始めたのは、35年前のことでした。娘が6歳の時、アメリカでブルース・アンダーソン先生のワークショップに参加した時に、私は生徒さんたちが到達した、音色の質の高さに魅了されたのです。そして、私も、同じやり方で生徒たちを手助けするために、スズキを学びたい、と思ったのです。
片岡ハルコ先生の思い出は、私にとって特別なものです。先生とのレッスンでは、驚きと畏怖の念を抱かされたものですが、先生は私が最善を尽くせるよう助けてくださっているのだ、という信頼の気持ちを、常に感じることができました。覚えているのは、先生が教室に入ってこられた途端、練習の雰囲気がすっかり変わってしまうことです。私たちは背筋を伸ばして座りなおし、レッスンの一部始終を学びました。片岡先生は、生徒がすぐに、めざましく上達するのを手助けする術を、心得ておいででした。
ジャックについては、アメリカのことわざで表現すると、彼は、keeps me on my toes、つまり、私の気を引き締めてくれる存在です。私はかつて娘の、スズキ・メソードのピアノ教師でした。ですから、彼女から、自分の息子たちにもピアノを教えてほしいと望まれ、とても光栄に思っております。
苺狩りを楽しまれたRenee先生(左)とJack君 ホストファミリーの皆さんは素敵な方たちでした。リハーサルの後、夜遅くの夕食を何度もともにしてきましたが、そんな時には、本当においしいスープをご馳走になります。諏訪湖への小旅行も忘れがたい思い出です。なんて美しい湖と神社だったことでしょう。苺狩りの苺もとても甘くてジューシーでした。忘れられない、大切にしたい思い出は、他にもたくさんあります。お蕎麦を食べに行ったこと、ホストファミリーの奥様のコーラスの練習に伺ったこと、ご近所の農園を通らせてもらったこと、そして見事な桜の花。
この日のコンサートは、まさに、片岡先生の精神がよい形で受け継がれているのを感じられたコンサートでした。 先生がお亡くなりになられて以来、初めて参加しました。片岡先生が、もういらっしゃらないことを寂しく思いましたが、リハーサルの間、先生がまさにそこにおいでになるかのように感じることができたのは、とても嬉しい体験でした。
10人もの生徒が一緒に演奏し、一つの音楽を作り上げるのを聴くのは、驚くべき体験です。生徒さんたちは、一つのチームとして、音楽を通じて心を通い合わせています。どの曲も、チームの全員が一緒に演奏することで高い音楽性のレベルに達しています。ジャックは、チームの皆さんと、一つの心で演奏する喜びを味わう機会を持つことができました。そのことに深く感謝申し上げます。
リストの「ラ・カンパネラ」で素晴らしい演奏をされた、金子さくらさんにもお話を伺いました。
金子さくらさん(中央) ピアノを習い始めたのは5歳の頃です。家に母が昔弾いていたピアノがあったので、弾けるようになりたいと思って自分から「習いたい」と言いました。小さい頃はかなり練習が嫌いで(今も好きではないですが)、母親と言い争いしながら練習していました。でも今思えば、母親が根気強く、私を練習に向かわせてくれたことが今の演奏に生きているなあと感じます。
河村圭子先生には、幼い頃からずっとお世話になっているので、先生は私のことをほぼすべてお見通しです。時に厳しく時に優しく、ピアノ以外のこともたくさん教えていただいています。私の人生に大きな影響を与えてくださいました。その一つ、コツコツ積み重ねることの大切さは、いつも教わっています。でも昔から私はコツコツ積み重ねることが苦手で、すぐに怠けてしまいがちです。それをちゃんと直そうとしてくれる人は、私の周りには多分河村先生しかいないだろうと思います。小さい頃からピアノに触れていたことで音楽が自然と好きになり、学校の教科で一番好きなものが音楽になり、一番得意なことも音楽になりました。現在、信州大学の3年生で専攻は音楽教育です。小さい頃から習っていたピアノを大いに活かして、日々学んでいます。
ピアノ10台コンサートには、小学1年から8~9回出演しています。母が作ってくれたドレスを着て出演したことくらいしか覚えていませんが、年齢が大きくなるにつれて、この10台のコンサートの存在を大きいものに感じるようになりました。高校1年の時に、サクラメントでの10台のコンサートに一度参加しました。リハーサルは日本の先生が指導して、通訳の方が同時に伝える、というスタイルでやっていたので、すごく英語の勉強になった気がします。その頃の私は今よりももっと英語ができなかったので、とにかく不安だらけでしたが、ホームステイ先の家族はみんなゆっくりの英語で話しかけてくれたし、不安にならないようにいつも気をかけてくださり、本当に楽しい時間でした。しばらく帰りたくないなと思ったくらいです。当たり前のことですが、音楽は世界共通の言語なんだなあと実感した経験でした。
「ラ・カンパネラ」を見事に弾ききりました(左) 一番最後の曲に参加するのは今回が初めてで、やっとここまで来たなあという風に感じます。「ラ・カンパネラ」は、自分に弾けるような曲ではないと勝手に思っていたのですが、今回出演するにあたり、練習していく中で、ちゃんとした方法で練習していけば弾けるんだ!と少し驚きを感じたりもしました。
他の9名の方々とは、リハーサルの前に注意する箇所や合図の確認などをしています。全員が集まる機会が少ないので、集まれる日のうちにわからないところは解消していこうという姿勢でがんばりました。
リハーサルでは、真剣に取り組んでいる中で力の抜けてしまうようなミスが出ると、みんなで笑ってしまうことがありました。もちろんミスは良くないことなので、いつでも笑ってるわけにはいかないのですが、たまにこういうことがあると、少し気持ちがほぐれるのも事実です。
ピアノ10台コンサートの意義は「ほかでは経験できない」というのが一番大きいと思います。普段1人で演奏しているものを10人で合わせるのですから、簡単なことではありません。でもそれを経験することで得られる達成感も10倍なんじゃないかと思っています。
自分本位でも、他人本位でもいけない、という意識が大切です。自分のことしか考えていない演奏ではもちろん他人とあいませんし、逆に他人を頼ってばかりの演奏には魅力がなく、その人が間違えたらドミノ式でみんながバラバラになっていってしまうと思います。だから、自分の演奏も周りの演奏も聴く耳がとても重要なのだと思います。
「ラ・カンパネラ」メンバーは、当日の朝にもリハーサルを行いました。なので、朝から出番まで時間がかなりありながら、ずっと気が抜けない、という1日でした。そわそわしながら迎えた本番でしたが、演奏が始まったら、緊張よりも楽しい気持ちの方が大きく、10人での演奏をしっかり楽しむことができました。特に午後の第2部の演奏では、最後に大きな拍手と、生まれて初めての「ブラボー!」をいただくことができて、とても感激しました。
本当に思い出に残るコンサートになったと思います。いつもこのコンサートが終わるたびに、「次も出たいなあ」と思ってしまいます。次に開催する頃には、私は社会人になっている予定ですが、周りには社会人になっても出演し続けている先輩がいらっしゃるので、簡単なことではないと思いますが、挑戦してみたいです。
2019年4月28日(日)
1回目公演 10:30〜12:30
2回目公演 13:30〜15:30
ザ・ハーモニーホール(松本市音楽文化ホール)
入場料:250円
主催:スズキ・メソード松本支部ピアノ科
曲目
・ベートーヴェン/ケンプ:6つのエコセーズ 変ホ長調 WoO83
・ごあいさつ:小林一茶俳句
・鈴木鎮一:キラキラ星変奏曲 AD
・ドイツ民謡:かっこう
・フンメル:エコセーズ
・シューマン:メロディ 子どものためのアルバム Op.68-1
・クレメンティ:ソナチネ ハ長調 Op.36-1 第1楽章
・ペツォルト:メヌエット ト短調 J.S. バッハのアンナ・マグダレーナ・バッハのための音楽帳より
・シューマン:勇敢な騎手 子どものためのアルバム Op.68-8
・モーツァルト:メヌエット No.1 8つのメヌエット K.315gより
・バッハ:ジーグ パルティータ 変ロ長調 BWV825より
・ベートーヴェン:ソナチネ ヘ長調 Anh.5 No.2 第2楽章
・ベートーヴェン:エリーゼのために WoO59
・モーツァルト:ソナタ ハ長調 K.545 第1楽章
・モーツァルト:トルコマーチ
・ダカン:かっこう クラヴサン組曲 第3集よりNo.1
・ショパン:ワルツ 第1番 変ホ長調 Op.18「華麗なる大円舞曲」
・ベートーヴェン / ルービンシュタイン / ラフマニノフ:トルコマーチ
・ドビュッシー:月の光 ベルガマスク組曲 第3曲
・リスト:ラ・カンパネラ パガニーニによる大練習曲 第3番