関東地区ピアノ科有志の指導者による
第21回研究科全課程卒業生コンサートが、今年も開催されました。
9月1日(日)、関東地区ピアノ科有志の先生方が開催する、研究科全課程卒業生 第21回ピアノコンサートが王子の北とぴあ つつじホールで開催されました。今年は、30人によるソロ演奏、1組のデュオ演奏が披露されました。今年もショパンの作品が一番人気で、約半数の14名が果敢にチャレンジしていました。
ちなみに、ピアノ科の卒業課程は9段階あります。それぞれの課程で課題曲を録音し、全国レベルで検定評価します。
・前期初等科〜A.M.バッハのための音楽帳より:メヌエット ト長調
・初等科〜クレメンティ:ソナチネ 作品36-3第1楽章
・前期中等科〜バッハ:2つのメヌエットとジーク
・中等科〜モーツァルト:ソナタ ハ長調K.545全楽章
・前期高等科〜モーツァルト:ソナタ イ長調K.331全楽章
・高等科〜バッハ:イタリア協奏曲全楽章
・才能教育課程卒業*〜モーツァルト:協奏曲 第26番 ニ長調「戴冠式」K.537、または協奏曲 第23番 イ長調K.488、または協奏曲 第12番 イ長調K.414
・研究科A*〜バッハ:パルティータ第1番全曲、またはフランス組曲より1組曲
・研究科B*〜ベートーヴェン:ソナタ第23番「熱情」、またはソナタ第8番「悲愴」、または、ソナタ第14番「月光」、またはソナタ第17番「テンペスト」
(*1曲を選択します)
早野会長 会長になられてから3年連続で、このコンサートに足を運ばれた早野龍五会長からは「毎年楽しみに聴かせていただいています。その魅力の一つは、プログラムに書かれている皆さんの短いコメントが、とても興味深いことです。今回、気づいたことの一つは、そのコメントに『練習』という言葉がとても多く使われていることでした。鈴木先生は『練習』と言わず、『お稽古』という言葉を使われていましたが、漢字で書ける方、どのくらいいらっしゃいますか? そして『お稽古』には、どのような意味があるかご存知でしょうか? 辞書には、古を稽る(いにしえをかんがえる)とあります。つまり、昔のことを考え調べて、繰り返しながら自分で考えるというわけです。鈴木先生はそのこともよくおっしゃっておられました。そこに個性が生まれます。もっと昔に、世阿弥は『風姿花伝』の第1章で『年来稽古条々』と書いています。年齢に応じた稽古の仕方を示していますので、一度お読みいただければと思います。とにかくこのコンサートは、毎年出演される皆さんが、とても楽しんで演奏されていることがよくわかり、毎回楽しみながら聴かせていただいています」との素敵なご挨拶をいただきました。
右から川久保雄揮さん、進行役の河野京子先生、川久保さんの先生の森治子先生 また、10回目の出演となったお一人への記念品贈呈の場面もありました。この日、ベートーヴェンの交響曲「英雄」第4楽章のリスト編曲版を演奏された川久保雄揮さんでした。「9年前に大学1年生の時にこのコンサートに出演させていただきました。皆さんが素晴らしい演奏をされ、恐縮していたのですが、それからの9年間、いろいろな方々と出会えて、とても恵まれていたなぁと実感しています。ピアノは一生続けていきたいと思います」と挨拶。大きな拍手が寄せられていました。
どの参加者も、忙しい時間を縫っての練習は、さぞかし大変だったはずですが、暗譜で見事な演奏が続く姿は、一生音楽とともにある豊かな人生を目指すスズキ・メソードの理想形とも言えます。研究科の全課程を卒業されておられるだけに、醸し出される響きは、しっかりとした日頃の精進に裏打ちされ、説得力のある演奏が続きました。研究科を卒業したばかりの方から、お子さんが全員小学生になりましたというご夫婦や、15年ぶりにピアノに向き合いましたという方も出演されるなど、このコンサートが研究科を卒業された皆さんの演奏活動への「潜在的な欲望」と「意欲づくり」の大きな受け皿を担っていることがわかります。今後、ますますこの催しが広く知られるようになることを期待しています。