ヴィオラを愛する先生たちが集い、研鑽を深める場、
それがヴィオラ研究会です。
ヴィオラ研究会は、ヴィオラを演奏することが大好きなヴァイオリン科の先生たちによる自主的な集いで、35名ほどの先生方が登録されています。ヴィオラを愛してやまない豊田耕兒先生から直接、ヴィオラのレッスンを受けられるのですから、この上ない喜びでもあります。
12月27日、世間は年の暮れの忙しい時ですが、この日は松本の才能教育会館ホールで、じっくりとバッハの名曲、ブランデンブルク協奏曲第6番に向き合う日となりました。
・J.S.Bach:Brandenburg Concerto No. 6 in B-Flat Major, BWV 1051
ブランデンブルク協奏曲は、1721年にブランデンブルク=シュヴェート辺境伯クリスティアン・ルートヴィヒに献呈された作品です。元々は異なった種々の楽器による協奏曲集でしたが、ブランデンブルク辺境伯に献呈されたことからこの名がついたのです。
この第6番は、6曲あるブランデンブルク協奏曲の中でも、ヴァイオリンが参加しない大変珍しい作品です。その分、低音楽器だけで演奏される滋味溢れた楽曲になっています。「腕のヴィオラ」(つまりは現在のヴィオラ)を意味するヴィオラ・ダ・ブラッチョ、「足のヴィオラ」を意味するヴィオラ・ダ・ガンバなどにパートが分かれ、またチェロにも第3楽章に技巧的なフレーズをたっぷり配した作品になっています。
早速、ヴィオラグループの委員長、野田豊子先生(東海地区ヴァイオリン科指導者)にこの日の様子をレポートしていただきました。
野田豊子先生(ヴィオラ・ダ・ガンバ1)
「次回は、ブランデンブルク第6番!」
豊田耕兒先生からヴィオラ研究会の曲目を告げられたのは、夏期学校の最終日でした。以前より、いつかブランデンブルクを研究会で取り上げたいとお話を伺っていましたので、「遂にこの日が!」と内心嬉しくも、さてどのように準備を進めていっていいのか不安でした。
最近のヴィオラ研究会では、ヴィオラ指導曲集の曲か、豊田先生からいただいた曲は、ソロ曲でしたが、今回は、弦楽曲です。ヴィオラ・ダ・ブラッチョ第1、第2、ヴィオラ・ダ・ガンバ第1、第2、チェロ、コントラバス、チェンバロと各パートの人数バランスを考慮しながら、豊田先生からいただいた楽譜を配布して、パートも決まり、お手伝いくださる先生方もお願いでき、10月22日の研究会に向けて、すべて準備万端でした。
ところが、ハプニング発生!です。
台風19号の影響で、交通機関が寸断され、松本に集まれず、やむなく延期にいたしました。再度、仕切り直しの結果、12月27日に研究会開催となりました。豊田先生も私たちヴィオラ認定指導者も、念願のブランデンブルク第6番の研究会でした。
午前は豊田先生の講義。ヴィオラ・ダ・ブラッチョを担当される先生方へのパート練習を兼ねたご指導が中心となりました。昼食は賑やかで楽しく過ごし、午後は全員で、豊田先生の気迫溢れる指揮で全楽章を合わせました。
終了後、豊田先生からの一言は、「まだまだこの曲は終わりではない」と仰られました。確かに、ブランデンブルクほんの入り口の研究会でしたが、豊田先生の熱意が伝わるご指導と指揮で、集まったヴィオラ指導者、お手伝いの先生方と心一つに演奏でき、感動の1日となりました。
参加された宮下朱里先生(甲信地区ヴァイオリン科指導者)と、塚尾桃子先生(甲信地区チェロ科指導者)のお二人からもメッセージをお寄せいただきました。
宮下朱里先生(ヴィオラ・ダ・ブラッチョ1)
ヴィオラ研究会では、毎回豊田先生のヴィオラに対する深い愛情とヴィオラグループの先生方の熱意に包まれ、とても有意義な時間を過ごさせていただいています。
今回の課題曲はブランデンブルク第6番。ヴィオラの深みのある音色がホールいっぱいに響き渡りました。
普段、指導にあたるばかりで自分自身の演奏技術向上や音の研究にまでなかなか時間を裂けずにいますが、研究会が近づくにつれ次第に高まる緊張感や高揚感は自分を高めてくれます。
また音楽院時代を過ごした会館、とくにホールでの研究会は、『指導者になりたい!』と同期の先生たちと朝から晩まで練習に練習を重ねた当時を思い出させてくれ、指導に少し慣れてきた私を初心に戻してくれます。
豊田先生にはお身体を大事に、これからもたくさんの事をご教授いただきいと願っています。
塚尾桃子先生(チェロ)
最初の音が出た瞬間からゾクゾク!
豊田先生、ヴィオラの先生方のエネルギー、そして並々ならぬ熱意が伝わってきて、まさに「音に命あり」を感じた瞬間でもありました。
ブランデンブルク第6番は、チェロパートにもなかなか見せ場が多く、久しぶりに真面目におけいこしました(笑)
皆で合奏するってやっぱり楽しいですね! 今回このような勉強させていただく貴重な機会をいただき、ありがとうございました。
さらに、この日、コントラバスパートで参加された嘉納雅彦さんからもメッセージが届きましたので、ご紹介しましょう・
嘉納雅彦さん(コントラバス)
私は、松本で国際スズキ・メソード音楽院の演奏助手として、毎週土曜日の午前中に豊田耕兒先生のレッスンを約20年にわたって受けるという、とても幸せな経験をさせていただいてきたのですが、今回のヴィオラ研究会で、本当に久し振りに豊田先生のレッスンを体験させていただきました。
小澤征爾さんよりも、さらに年上の豊田先生…そのバイタリティーと情熱は相変わらず凄まじかったです。
台風19号の被害により、10月開催が延期となったヴィオラ研究会を、12月にやるとのことで、コントラバスのエキストラのお話をいただいた時から本当に楽しみにしていました。
午前中は、ヴィオラ・ブラッチョと低弦に分かれ、パート練習を各部屋で行なっていたのですが、ブランデンブルク協奏曲第6番という、普段は滅多に演奏されない(もちろん編成上の都合もあるのでしょうが…)曲をチェロの塚尾桃子先生と一緒に突き詰めて仕上げていく作業も、とっても興味深かったのです。
そして美味しいランチタイムでは、何だか音楽院の卒業演奏会ティーパーティ後のような、実際に豊田先生のレッスンを受けてみて、豊田先生のバッハに対する並々ならぬ情熱、そしてヴィオラグループの先生方のレッスンが始まってからの「スイッチの切り替え」の鮮やかさにとても感動しました。
ヴィオラ研究会の皆さん、本当にありがとうございました。