0〜3歳児コースと、スズキ・メソード幼児教育研究会が初のコラボレーション。
互いに「質の高い乳幼児教育」を目指すことを確認しました!

 
 11月3日(火・祝)9時〜15時、「0〜3歳児コース」のスタッフの皆様と、スズキ・メソードの理念に共鳴する幼稚園・保育園で組織される「スズキ・メソード幼児教育研究会」による初のコラボレーション企画が、約70名の参加でZoomを使って開催されました。開催テーマは以下の通りでした。
 

「コロナ禍におけるスズキの乳幼児教育」
〜今!何を大切にして何を伝えたいか、スズキスピリッツの共有と実践〜

 
 
 
 午前中は、以下のプログラムで進行しました。
➀Change after Suzuki:スズキ・メソードの原点を振り返る
   0〜3歳児コース特別講師 村尾忠廣
②幼児教育研究会の紹介、目的と活動についてのご報告
  幼児教育研究会会長、双葉ヶ丘幼稚園園長 土居孝信
③講演「取材から見えてくるスズキ・メソードの幼児教育」
  スズキ・メソード機関誌編集部、マンスリースズキ編集部 新 巳喜男
④0〜3歳児コース 各教室からの発表
  松本教室
  所沢教室
  津田沼教室
  多治見教室
  大府教室
  郡山教室
  富山教室
  名古屋教室
  長野教室
  鎌倉藤沢教室
  西宮さんだ教室
  麻布十番教室
⑤幼児教育研究会 各加盟園からの発表
  白百合幼稚園(松本)  初代園長田中茂樹先生の教育理念と白百合幼稚園
  五風会(大阪)     意欲を育む環境づくり
  双葉ヶ丘幼稚園(大分) 幼稚園の中のスズキ・メソード
  白百合幼稚園(福島)  幼稚園活動の中でのスズキ・メソード
  ももぞのこども園(大分)0~3歳児の絵本とその育ち
  光が丘幼稚園(宮崎)  広報活動と保護者
 
①では、0〜3歳児コース特別講師の村尾忠廣先生から、本来、家族的で楽しい才能教育から、昨今のスズキ・メソードのレッスンが技術面を優先するように変化しているという研究論文の紹介がありました。また、わらべ歌は気品のある形で歌いたいなどの提言がありました。
②では、幼児教育研究会の土居孝信会長より、鈴木鎮一先生と田中茂樹先生に始まる幼児教育の歴史の中で、どのように幼稚園として活動されてこられたか、ご挨拶をいただきました。
③では、機関誌編集部より、様々な取材を通して得られた0〜3歳児コースの歴史、幼児教育研究会の歴史を紐解きながら、両者が今回初のコラボとなったことの意義が語られました。
④では、0〜3歳児コースの各教室より、0〜3歳児コースを始めたきっかけ、教室新規開設への思い、コロナ禍で見つけた取り組みへの課題、これからの0〜3歳児コースのあり方などでの発表がありました。どれも力の入った発表となりました。
⑤では、幼児教育研究会に加盟する6園から、それぞれの個性あふれる発表がありました。園創立の理念、絵本を通しての取り組み事例、スズキ・メソードをどう取り入れているかの具体的な発表、さらには広報活動の考え方と保護者対応の基本スタンスなど、豊富な実践例の数々に、多くの共感が集まりました。
 
 それぞれの熱意あふれる発表で、午前中の予定時間を大幅にオーバーしてしまいました。この辺り、時間管理の徹底は今後の課題となりました。
 
 午後は、フリーディスカッション。午前中の発表への感想など、0〜3歳児コーススタッフ以外の指導者からの発言もあり、貴重な時間となりました。お互いに知りたいことなどへの質問などもありました。
 
 また、幼児教育研究会の土居会長からは最後にご提言もいただきました。

「ぜひ全国のスズキの先生方の地元で、スズキ・メソードに理解をいただける幼稚園の情報をお知らせいたきたいし、私たちも横のつながりで探していきたいと考えています。スズキ・メソードの考え方に幼児教育が近づいている昨今、そうした幼稚園のネットワークを生み出すことも、こうした機会を通して進めたいと思っています。橋渡しが必要であれば、私たちが園を紹介することができます。お互いにネットワークを生み出し、活動を広げていきましょう」

 
 午後3時になったところで、朝一番から参加の早野龍五会長から講評をいただきました。

 「朝からありがとうございました。非常に画期的なコラボの企画でした。コラボによって大変ご苦労されている中で、実はコロナがあったからこうしてリモートでできたというポジティブな面もありました。これだけの人数を一堂に集めるとなると普段はハードルが高いわけです。しかし、鈴木先生がご存命でいらしたら、今の時代、必ずこのような形で開催されたことと思います。現場の先生方がコロナの中で先進的な取り組みをなされていることを聞き、大変ありがたく思いました。
 幼児教育研究会の先生方とは、本来なら8月9日に大分の土居先生のところに伺ってお話をさせていただくことになっておりましたが、残念ながら今年はできませんでした。改めて再スケジュールさせていただければと思います。
 0〜3歳児コースでは、村尾先生に特別講師になっていただき、認定指導者の仕組みを作りました。それに合わせて、テキストが作られたことは大変重要なことだと思います。鈴木先生を直接ご存知の第1世代から、ご存知ではない次の世代に鈴木先生の幼児教育を伝えていくためには、「言語化」がどうしても必要なことでした。次世代の先生方、幼稚園の皆様に伝えられることができたことは、画期的でした。国際スズキ協会の理事会でもこうした動きを伝えており、今後はフィロソフィーの部分の英語化も期待されていることをお伝えしておきます。
 それと、文科省の取り組みやOECDの取り組みがスズキに近づいてきているという土居先生のご指摘は、まさにその通りですし、ノーベル賞を受賞しているヘックマン教授も「質の高い乳幼児教育」を唱えております。そのあたり、さらに世の中に私たちで発信し、広めていくことがとても大切だと思います。
 日本は少子化で、急激に子どもの数が減っており、一時は1学年に200万人いたのが、今では80万人を割り込むようなところまできています。また、幼稚園への就園率も1990年代から下がっているというデータもあります。子どもの教育には熱心でありながら、子どもを預けることへの意識の変化があるようです。ですので、幼児教育の一番始めに何が必要か、きちんと「言語化」し、これを発信していく、きちんと広報していくことが、なおさら大切です。今回のコラボをより強固にし、知恵を交換し、人脈を交換しながらさらなる発展につなげて行ければと思いました」

0〜3歳児コース各教室の皆様からの感想

・コロナ禍の中で皆で一堂に会することができませんでしたが、共有画面を有効につかい、充実した内容となり、刺激をいただき、勉強になりました。
・才能教育の幼児教育の歴史の講演を聞き、当時の先生方の熱い思いを感じることができ、身の引き締まる思いがしました。
・来年からも、多くの方が参加しやすいようにオンラインにしてほしい(併用でも良い)。
・幼稚園にあったやり方で子どもたちの成長を見守るの報告を聞いて、0〜3歳児コースも、もっと形にとらわれず、地域にあった、スタッフの得意を生かしたやり方で取り組んではと思いました。
・どのお教室も、どの幼稚園も幼児期の教育に情熱を注いでいる方たちばかりのお心がひしひしと伝わってくる発表でした。皆が同じ方向を向いていることが伝わり嬉しくなりました。
・スズキの理念が幼稚園で実行されているのは素晴らしいと思いました。
・幼児教育研究会の先生方の発表内容はどれも素晴らしいものでした。特に広報や保護者のクレーム対応など、意外とお教室経営を取り巻く環境や変化は見落としがちだということに気づくことができました。
・コロナ禍でいろいろと工夫されて対面レッスンを行なっている映像を拝見して、いろいろなアイディアと、「今できることをがんばってやりなさい」と鈴木先生から背中を押されたような気持ちでした。
・今回の企画、本会0〜3歳児コース関係者のみの参加は非常にもったいないと感じました。内容的にも、決して0〜3歳児コースだけに関係することではないので、指導者研究会などで、全指導者向けの開催を望みます。
・田中茂樹先生の教育理念が素晴らしく、子どもたちにはその年齢に合った必ずできることを提供しなければならない、先生は子どもたちとともに学び続けなければならない、など、どの言葉も0〜3歳児コース教室スタッフとして忘れてはならない、大切なお話だった。
・絵本紹介、読み聞かせ、同じ本を1ヵ月続けるお話、いろいろに発展させておられる活動に感動。
・広報活動のお話、生徒募集、クレーム対応などしっかりと考えておられ、さすがと感心、私たちはそれが弱いと考えさせられた。
・10月に0〜3歳児コースを開始したばかりで、毎回のレッスン準備に追われている毎日です。長年の経験からくる各教室の愛溢れるアイデアや工夫を見せていただきました。それを実現するための各教室の労苦を惜しまない姿勢にも感動しました。
・日本にこんなに真摯に幼児教育について実現されている方々や幼稚園があることを初めて知り、ぜひともその素晴らしい教育法をもっと身近な所で、未来に繋げていただきたいと思いながら傾聴させていただきました。
・幼稚園でヴァイオリンのレッスンを取り入れ、園の活動の一環として発表会で見事な演奏ができるまでになっていることにとても驚いた。
・乳幼児期こそ、やはり教育のベースであること。そして、誕生の時から乳幼児に我々が与えられのは「信頼」の関係という教育の基本であることを再確認した。
・各幼稚園のお話も実践例を上げて説明されたので、とてもわかり易かったです。話を聞いて、とてもワクワクしました。自分たちのこれからの可能性を感じ、チャレンジしてみたいこと幾つも出てきました!幼稚園とのコラボ、また企画してほしいです。
・幼児と毎日関わっているプロの方の取り組みやお話が聞けたことはとても良かったです。今後全国各都道府県の幼稚園にスズキ・メソードを取り入れて貰えたら本当に嬉しいことです!東海地区はまだないのでなんとか、そういう幼稚園との繋がりができると良いです。
・幼稚園のお話を伺うことで、楽器とは違う側面からスズキ・メソードを見ることができました。そして田中先生のお話からも、「才能教育は育児国策である」ことを改めて実感しました。
・幼児教育研究会の話は0〜3歳児コースだけでなく、すべてのスズキの指導者が聴くべきことではないかと思う。来年の指導者研究会では0〜3だけでなく、全体プログラムにも入れて欲しい。
 


幼児教育研究会の皆様からの感想

・今回、0〜3歳児コースの諸先生方が、教室運営に強い思い入れを持ってお子様方の指導に当たっておられる姿を知ることができたこのコラボ企画は、認定こども園を経営する私どもも、お教室の先生方も幼児の教育に携わっていく上でまったく同じ方向、つまり鈴木鎮一先生の「愛に生きる」「感性を育てる」「全人的な幼児教育」を共通の目的にしていることを確信できました。あらためて感謝の念でいっぱいです。
・0〜3歳児コースの発表はコロナ禍での各教室の工夫が見られ、感染拡大防止対策、ご家庭でのレッスンなど何とかしなければという想いが伝わってきました。実際の映像も多く、理解がしやすいように工夫されていたこともありがたかったです。幼児教育研究会の発表は、各園の色が出ていて0〜3歳児コースの先生方も参考になったと思いますが、各園も大変参考になりました
・今まではそれぞれに活動をしていましたが、コラボ企画により、共通項が多く見つかったように思います。私の園も日々の保育に追われ、「スズキ」の色が前面に出せていないところも正直あります。幼児教育研究会の会員だけではなく、これを機にもう一度鈴木鎮一先生の信念を受け継いでいる現場の指導者の皆様から教えていただくことも、各園にとっては有意義なものになるのではないかと感じました。次回はコロナだけではなく、考え方の共有やお互いの指導法を伝え合うことで、スズキに関わるすべての方が良い指導法を学び、教室も園も発展していくのではないかと思います。
・私が思っていた以上に0〜3歳児コースの各教室の先生方はじめスタッフの皆さんがこのコロナ禍の中、衛生面やリモートを駆使され、教室の現在の取り組み方を工夫されているのには頭が下がる思いでした。
・世界の幼児教育は、いま大きく変わろうとしています。モンテッソーリ教育や森の幼稚園、オランダでいま全世界が注目し、取り組もうとしているイエナプランなど、子どもを中心とした異年齢や個々の遊びから育まれる自己肯定感や達成感を感じ、あらゆることに挑戦したり興味をもったりできる意欲を育むという方向にむかっています。鈴木鎮一先生が80年前に唱えた「才能教育」にようやく追いついてきたということが今回のセミナーを通して感じました。自園では、幼児教育研究会の他園のようにまだヴァイオリンのレッスンまではできていないですが、楽しく遊びを通して子どもたちとかかわっていきたいと思います。
・0〜3歳児コースの教室で、消毒などの衛生管理に対する徹底した取り組み、リモート教室を開催するための創意工夫は、幼稚園でも参考にさせていただけることが多くありました。コロナの影響で諦めてしまうこと(諦めざるを得ないこと)もありますが、「このような状況でも教室に通うお子さんがどうすれば楽しく過ごせるか」を真剣に考え、実践していらっしゃる先生方の思いは、本当に尊いと感じました。鈴木鎮一先生のお言葉である、「愛深ければ為すこと多し」を思い出しました。
・冒頭の村尾先生のお話は、深く心に残っています。主には音楽指導について語られたことでしたが、幼児教育の場でも同じことが言えると思います。感性を育むこと、人としての心を育てることは、幼児教育の大きな使命です。日々の保育が豊かなものになるよう、考えていきたいと思います。そして、早野先生がおっしゃる「ただの幼児教育ではない、質の高い乳幼児教育」の実践を目指していきたいと思います。


 今回のコラボ企画、早速第2弾が計画されました。
 第1弾で十分にディスカッションできなかった部分「特に幼児教育研究会の園での取り組み事例」について、さらにオンラインで意見交換されることになりました。
 日程:2020年12月26日(土)9:30〜11:30