川本嘉子先生によるヴィオラ研究会を
初めてオンラインで開催しました。
6月14日(月)10時から開催されたオンラインによるヴィオラ研究会。東海地区の伊藤達哉先生、大久保貴寬先生のサポート、ヴィオラグループ委員長の野田豊子先生の進行で始まりました。
ヴィオラ研究会は、2019年12月28日の豊田耕兒先生による研究会以来、久しぶりの開催です。予定していた2021年2月の豊田先生による研究会は、コロナ禍で延期されていました。川本嘉子先生とは、以前、松本市のあがたの森の講堂で研究会を開催したことがありました。通常はヴィオラ認定指導者対象の研究会ですが、この日は、ヴィオラに興味を持たれ、川本先生のご指導にも興味津々のヴァイオリン科の先生方も聴講されました。まさに、オンラインならではの新しい試みとなりました。
①モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲ト長調 K.423
まずは、ヴァイオリンとヴィオラが同等に楽しめるこの名曲からスタート。伊藤先生のヴァイオリン 、川本先生のヴィオラで第1楽章が進みます。ところどころで川本先生からご指摘が入りました。
・ヴァイオリンの方が立場が強く、ヴィオラがついていく、というイメージをお持ちの方が多いかもしれません。でもそれでは面白くありません。それで、最初の音から、ヴァイオリンに対してヴィオラからのアインザッツを余計に出すことで「共通の責任」というか、「イニシアチブの共有」があると楽しいです。ヴィオラの醍醐味と言えるでしょう。
・ヴァイオリンとヴィオラを持ち替える場合、ヴァイオリンよりも早く切り替えないと、遅れがちになります。その分、ヴィオラは察知能力をより高めないといけません。カルテットなら、チェロはどうしている? 第一ヴァイオリンは?というように。そうでないと、いいアンサンブル奏者として評価されません。電波をいっぱい張り巡らせて、目で見ることです。
② バッハ :ブーレ
伊藤先生が、ヴァイオリンとヴィオラを持ち替えて、ブーレを演奏。それまでヴァイオリンを学んできた生徒さんに、2つの楽器の違いを教えるには、ぴったりの選曲です。もちろん川本先生にも演奏していただきました。
・ヴィオラの時は、ヴァイオリンを弾く時よりも少し足幅を広くします。ヴィオラを持った瞬間に必ずそうしますね。
・そのため、夜寝る前にベッドの上で足のストレッチをすることを欠かしません。私の場合、割とふんぱって演奏しているのでしょう。
③テレマン:ヴィオラ協奏曲
・ヴィオラの弓は、ヴァイオリンよりも重いので、しっかり弦に乗せて、弾きたい音量を想定して弾き始めたいですね。イメージとしては、「弓を置いて、スッと動かす」感じです。発音には特にこだわって欲しいです。
・ヴィブラートは、倍音を増やすことが目的です。だからあまりかけすぎてもおかしい。
・弓の動きは、鈴木鎮一先生がおっしゃったように円の動きです。直線的に動くと思われがちかもしれませんが、倍音を出すために弧を描きます。ヴィオラという楽器は、倍音が出ないとダメですので、そこはしっかりと意識してください。
・移弦は、肘までの動きですので、肩は動かしません。ヴァイオリンに比べて、ヴィオラの方が肘をあげますね。
・ヴィオラは筋肉で弾かず、なるべく「骨を動かすイメージ」なんです。これだと体のどこも疲れず、簡単です。毎日意識していれば、できますよ。
・重音も弓を置いて発音。肘から動かし、肘を添えるくらいで音が綺麗になります。
この後、質問コーナーなどもあり、とても内容の濃いオンライン研究会になりました。対面での研究会が難しい中、このようなスタイルでの研究を進めていくことは、とても大切に思います。
最後に川本先生から、この日のご感想をいただきました。
画面を見ながらの研究会でしたね。みなさんの様子も拝見しながら、今日のヴィオラ研究会ができ、嬉しかったです。こんなにたくさんのヴィオラを勉強される先生方、そして興味を持たれる先生方がいらっしゃること、とても喜んでいます。なかなかヴィオラの醍醐味を話す機会が少ないので、こうした機会は貴重ですね。ヴィオラという楽器は大変ですが、これからもその素敵な魅力をたくさんの方々に伝えたいし、ヴィオラの世界そのものを盛り上げていきたいと思っています。そのことに私自身、力を精一杯注ぎたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。
もう一つ、川本嘉子先生の最新情報!
6月23日(水)〜25日(金)にかけて、音楽之友社のWebマガジン「ONTOMO」に川本嘉子先生が登場されました。「My楽器偏愛リレー!」というユニークな連載記事です。
名ヴィオリストでありながら、名コピーライターでもあることを実感させてくださるこれらの記事、ぜひお楽しみください。それぞれの記事では、ヴィオラを「偏愛」される川本先生のお人柄や興味の方向、好きな作品など実際の演奏を通して、見たり聴いたりしながら楽しむことができます。ヴィオラファンがきっと増大することでしょう。ヴァイオリンを学んでこられた皆さんも、これらの記事をきっかけにヴィオラにも大いなる関心を寄せてくださること、期待しています。
My楽器偏愛リレー! vol.16 川本嘉子
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