あらためて、スズキ・メソードと東京大学の共同研究の成果を
「毎日メディアカフェ」のステージで、語り合いました。
今回のテーマは、「脳から見る音楽と言語の接点」。共同研究から分かった研究の成果とともに、情操教育の大切さを浮き彫りにする内容となりました。
マクラは「鎌倉殿の13人」の膝枕のシーンから
脳から見る音楽と言語の接点
酒井先生は、早野会長の意表をついた「枕」に喜びながらも、本論を進めました。表音文字や発音記号は、音符と同じであるけれど、文字では音声の抑揚を十分に表せないことを指摘されました。文字とは言葉を表す「記号」でしかないのです。そのためSNSなどで文字のやり取りをすることの多い昨今では、文字ばかりに頼りがちで、時に読み取り方の誤解が元で炎上することもある、とのことです。
だからこそ、音や文字には区切りの「間」となるフレージングや、抑揚や緩急の変化をつけて、まとまりを作るアーティキュレーションが必要となるというのです。フレージングやアーティキュレーションによって、言葉や音楽に「構造」が生まれる、すなわち相手に中身が伝わりやすくなるわけです。サンプルとして提示された「チャウチャウちゃう?」「ちゃうちゃう、ちゃうんちゃう?」は、つい口に出してみると、その意味するところがわかり、フレージングやアーティキュレーションの大切さがわかりました。実に面白いですね。
そして、酒井先生は、楽器演奏の習得の脳科学的効用を、音楽経験の内容や期間の差によって、特定の脳活動がどのように活発化するかを調べるために、今回の実験を行なったことをお話しされました。
→マンスリースズキ1月号
①ヴァイオリンなどの楽器を5歳頃より習得してきた中高生は、9歳以降に習得を始めた楽器経験者や未経験者と比較して、音楽判断に対する脳活動が活発になること。
②楽器演奏に必要な音の高さ、テンポ、強弱、複数の抑揚を司る脳部位は異なること。
を説明されました。そして、今回の共同研究の成果による社会的な意義についても言及されました。
さらに研究を深めたい
これを受けて、早野会長からは「母語教育の大切さについては、鈴木鎮一先生が最初からおっしゃっておられたことです。それが音楽できちんと子どもさんたちを育てているその一端が、今回の研究で見えたことは大変に嬉しいことでした。ただ、この結果を得て、スズキで音楽を教えている指導者の先生方には、あまり拡大解釈をしないようにとお願いしています。何かこれが万能薬みたいに効きますみたいな、そういう形では使ってほしくないと思っています。音楽が子どもさんたちの脳活動の中で、どのように育っていくか、どのような働きがあるのか、あるいは他の能力とどんな関係性があるのか、今後の研究のテーマとして明らかにしていきたいですね」。
途中、音源の演奏を担当された宮前先生によるフルート独奏も、即興で披露されるなど、楽しい時間となりました。