スズキ・メソード出身のヴァイオリニスト、中澤きみ子さんによる
音楽活動50年を祝う集大成のコンサートが、紀尾井ホールで開かれます。
ぴあ(Pコード/208-272)
コンサートオフィスアルテ:03-3352-7310
・ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61
・モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 第3番 ト長調 K. 216
コンサートオフィスアルテ:03-3352-7310(11:00~18:00 火祝休)
約120年ほど昔のこと! 中澤家に一丁のヴァイオリンが到着しました。それは私の祖母が嫁入り道具の中に積んで牛舎に揺られてやってきたヴァイオリンでした。
それから30年後、孫の私がヴァイオリンのお稽古を始めました。戦後からようやく世の中に落ちつきを取り戻し、復興の兆しを感じる中、スズキ・メソード(長野県上田支部)のお教室に通うことになったのです。私は当時5歳でした。
昭和30年代の信州の田舎の家から、町のお教室に通うことは経済的なことを含めて大変でした。でも子どもの私には毎週日曜日は特別な日だったのです。ウキウキと、今までの日常には味わったことのない、何やら上等で華やかな世界に行ける日でした。
その日から私の人生は、ヴァイオリンとともに続くのでした。それがまさか、この年まで続くとは!
大学卒業を目の前にしたある日、一本の電話が下宿先の家にかかってきました。なんと恐れ多くも鈴木鎮一先生からでした。
「きみ子ちゃん!お元気ですか?そろそろ大学卒業ですよね!上田市の今の先生がご結婚で上田を離れることになり、次の先生を探しています!きみ子ちゃん 教えてくれませんか?」
教育学部にいたので、もう少しヴァイオリンの専門的なことを学びたくて、東京の音楽大学のディプロマを受験し、合格していました。初めての東京での生活に経済的にも不安を感じていた時だけに、この話を両親に話すと大賛成でした。
悩み抜いたあげく鈴木先生からのありがたいお話を受けることにしました。東京のでのディプロマはあっさりと諦めてしまったのです。
さあ、その春から、私は突然50人の生徒の先生になり、毎日教える日々になったのでした!
人生の転機は、それからもいくつもありました!
結婚、子育て、留学(文化庁芸術家派遣員)、10数ヵ国への演奏旅行など、ヴァイオリニストとして、まっしぐらの人生でした。
今回のコンサートは私の集大成です!
共演してくださるオーケストラのメンバーは、主に私が長年教えた生徒さんたちです。そして、指揮者は、こちらも長年のお付き合いのある、元東京藝術大学の学長でいらした澤和樹氏、コンサートマスターはウィーンのもっとも信頼のおける共演者であり友人のルードヴィッヒ・ミュラー氏です。71歳の今、コンチェルトの名曲、3曲を一夜にしての演奏は、最後の私の挑戦です。
そうそう、最後に一つ、お伝えしますね。
私の座右の銘は鈴木鎮一先生の「音に命あり、姿なく生きて」です。