関東地区の新年指導者研究会を3年ぶりに対面で開催

 

 新年早々に毎年開催している関東地区指導者会主催による2023年新年指導者研究会が、1月9日(月・祝)の10時〜13時に、東京日暮里のアートホテル日暮里ラングウッド2階ホールで開催されました。本当に久しぶりのバンケットルームでの開催となり、新春らしい華やぎが感じられ、そこかしこに指導者同士の笑顔が見られました。今年の開催テーマは「スズキ・メソードを次世代につなぐ」。10月には国際ティーチャー・トレーナー会議が松本で開催されることもあり、指導者養成をはじめ、さまざまな分野、局面で「次世代につなぐ」道筋を、スズキ・メソードに関わる全員で確認し合うことが必須となります。
 
 関東地区ヴァイオリン科指導者で関東地区委員長の小川みよ子先生の司会進行で、最初に早野龍五会長から新年のご挨拶がありました。
 
 

早野龍五会長の年頭挨拶

 「こうして皆さんと新年にお会いできますこと、本当に嬉しく思います。3年前を振り返りますと、会員の皆様向けのマイページを設定することができ、本会と会員がダイレクトに結びつく仕組みができ、定着しました。また卒業録音の提出も今回で言いますと、全体の2/3がオンラインでの提出となりました。非常に楽であるという評価や、早く検定ができるようになり、喜ばれております。
 多くの先生方や事務局においても、去年と同じ仕事をしていればいいということはなく、さまざまな新しいことに対応していただきました。その中でもスズキ・メソードの新しい広報、ならびにロゴマークを定着させることができました。
 今年は特別な年になります。第3回国際ティーチャー・トレーナー会議が10月に松本で対面で開催されます。この会議の主要なテーマは「スズキの先生の資格ってなんだろう?」です。これは、コロナによってオンラインによる指導者育成が国境を超えて活発に行なわれたことにより、スズキの指導者として同じクォリティがあるかどうかが問題になってきました。それを松本での会議によって、指導者のクォリティとして何が求められているのか、何をしたらいいのかを、可能であれば合意した形で宣言が出せればと思っています。
 また、私が会長に就任してから6年半になりますが、私自身は音楽家でもなければ、スズキの指導者でもありません。今後は、スズキの教育、スズキの音に関して、指導者の皆様のリーダーになってくださるようなポジションを新設したいと考え、意見交換を始めているところです。私の残りの任期は最大であと3年半になります。次の世代にスズキ・メソードを続けていくためにも、オールラウンドの会長でなくても務まる仕組みを作っておくことが必要だと考えています。その意味で、会長とまだ名前のない、教育部のリーダーを必要があれば分けられるような形で、この会を進めていきたいと思っています。できれば、私が会長である時に、その仕組みを試み、必要なところは改善していきたい。このことが、2023年の私の所信表明になります」
 

特別講師長・東 誠三先生による講演

 続いて、ピアノ科特別講師で特別講師長でもある東 誠三先生による「拍について」の講演がありました。2021年に行なわれたピアノ科指導者への講演内容が素晴らしく、他の科の指導者にもぜひ聞いていただこうということで、2年越しのリクエストで企画されたものです。
 「拍ってなんでしょう?」冒頭、東先生からの問いかけがありました。そして、「拍があることによって、どんな働きがあるかを考えましょう」と進みます。音楽は空気に刺激を与えること、その例として言葉を話す、手を叩くなど一定のペースで持続すると拍が続く。「つまり、拍は脈。私たちの体に流れている脈、Pulseなんです」
 東先生は、ピアノで「ロングロングアゴー」を例に、いろいろな実例を示しました。「音楽である以上は拍があります。拍がなければ音楽ではありません。ですから拍をきちんと扱うことは、音楽に必須です。私たちの脈のように」。リタルダンドやアッチェレランドの例を示し、さらには、意味もなく乱れた演奏も披露され(大拍手!)、「こうした演奏例は、実は頻繁にあるのではないでしょうか」と先生方に日頃の指導の大切なポイントを促されました。それは、拍を感じられる演奏を目指すこと。拍の感じ方で曲想がガラリと変わることも明示しながら、生徒さんがちょっとおかしいなと気づけるような指導が望まれるとも。
 「拍が連なり、テンポを作ります」と語る東先生は、自分の体の中にある何かを変えていくことがテンポを変えることであって、表面上で手を速く動かすことではなく、体で感じたことを表現することが大切と強調されました。「ロングロングアゴー」は、4拍子の中でエネルギーの波が起こる曲。これをどこかで感じる力を生徒さんが身についているかどうか。それがキャッチできにくい生徒さんには、強拍、弱拍を数値化するなどのアイデアも披露されました。数値化することで、「まず曲のイメージを持ってもらえるかどうか。それができれば答えが出てきやすい」と言い切られた東先生。なるほどと頷かれる先生の多いこと。 「拍は数えるものではなく、感じるものです」という言葉は、強い説得力を感じさせました。
 さらに、「時間に関して関心を持ってほしい。縦の流れ(拍、リズム)と横の流れ(フレーズ)、この両方の融合で音楽ができています。早いうちからこの両方について、バランスよく認識、体得していくことが大切です」。そして東先生は、感じ取ったものから、その場面で何が必要かを判断し、それを活用すること。その音がその場面でマッチしているかどうか。判断し働きかけていくことの大切さを加えました。これはピアノに限らず、すべての演奏者にとって大切な考え方であることがわかります。
 最後に、東京大学との共同研究の第2弾が進行中であり、ピアノ科の生徒を対象にした観察を今年度、進めていることの説明がありました。その際に、国際的な論文にまでまとめられた第1弾を紹介したマンスリースズキの記事について、何度もPRしていただきました。ありがとうございました!
 

スズキチルドレン ニューイヤーコンサート

 ティータイムとなった休憩時間には、往年の海外演奏旅行(テン・チルドレンツアー)での貴重なスライド上映と、参加された蔵持典与先生(関東地区ヴァイオリン科指導者)からのエピソードのご紹介がありました。
 
 そして、第2部は久しぶりにスズキチルドレンが日頃の研鑽ぶりを披露する場となりました。9歳から16歳までの生徒さんの演奏は、表現するのも大変な難曲、名曲が続きましたが、いずれも素晴らしく、よく練習を重ねてこられたことが見て取れ、ニューイヤーにふさわしい華やかさもたっぷりありました。

モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番〜第1楽章


ゴーベール:ファンタジー


ドヴォルザーク:チェロ協奏曲〜第3楽章


メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲〜第1楽章


ショパン:スケルツォ第2番