英国王立音楽院教授で、ヴァイオリン科出身の井上祐子先生による
ヴィオラ研究会を開催しました。

 
 3月22日(水)、ヴィオラを演奏されるヴァイオリン科指導者の皆さんと、聴講される他科の指導者が集まり、ヴィオラ研究会が開催されました。講師は、かつてヴァイオリンを奥村三郎先生に5歳から師事された井上祐子先生。現在は、ロンドン在住で、英国王立音楽院教授として演奏活動とともに後進の育成に力を注がれています。井上祐子先生をお招きするのは、実に2019年12月以来。ひさしぶりの研究会となりました。
 
→2019年12月の研究会の取材記事
 

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 今回は、あらかじめ参加者からの質問に答える形で、ヴィオラを学ぶ生徒に教える指導者としてのポイントを学びました。
 
奏法について
・ヴァイオリンとヴィオラの楽器の持ち方の違いがある。井上先生ご自身が、15歳、16歳の生徒さんに教えることが多いそうですが、器用に弾いてしまう生徒さんが多いとのこと。将来のことを考えると、最初にきちんと違いを伝えたほうがいいと、まずご指摘いただきました。
 
カール・フレッシュを使ったスケール練習

井上先生オススメのカール・フレッシュ

・C-durを2オクターブ練習することから始める。第1ポジションから第3ポジション、第5ポジションを12の調性で弾く。
・ただ音を弾くのではなく、2オクターブのスケールでは、ポジションを移動しなくていいので、右手の形を確かめる。音階が下がってくる時、移弦する際に4の指だけでなく、1、2、3、4の指を全部おさえる。
ヴァイオリンと違うのは、指の幅の感覚。上がるときに指を離さないのは同じ。
第3ポジションで2オクターブ練習。長調の後は短調で。下がるときに1の指を置いたまま、下の弦の4の指をとる。
「いつも手の形を気にして!」井上先生が何度も指摘した言葉がこれ。左手の手首が不自然に飛び出ない形が理想。
「音符を追うことよりも、できたら手の形を見てほしい」ボウイングのように、弦が変わっても、手の形が変わらずに、滑らかであることが大切。
「ただ音を弾くだけでなく、手の動きを確認することです」
 

 とにかく音階です。音階を楽しく練習することが大切。アカデミーでの試験でも春は必ず音階の試験をします。
 エチュードが綺麗に弾けるのに、音階ができない子が結構います。どうして音階が嫌かというと、自分の出している音を好きになっていないから。
 音階をやっていて自分の音が好きになれないのは、一つひとつの音がきちんとしていないと。「まぁいいや」では、絶対にダメ。弾いたときに100%あっていないと。
 間違って戻ったときに、その時だけでも何回もやって繰り返して、音程を合わせます。その作業をしている間に、自分の音が好きになります。これができていると譜読みも早くなる。だから、音階は好んで練習してほしいです。第7ポジションでオクターブ練習、半音上げてゆく。そのときに左肘が下がっていないかどうか確認しましょう。

 
4の指のトレーニングをしていますか?
ある程度、4の指が強くならないと。おさえると4の指が伸びてしまう。
弦に4の指が触れている程度で、自由に弦の上を4の指が動くように。そのときに楽器が下がらないで。
ヴィオラを支えるのは顎だけではない。100%支えるのは絶対に無理がある。
楽器を顎で固定する感覚は、忘れて欲しい。
シフティングが下がるときに、楽器が下がらないこと。
 
フィジカルトレーニング
ヴィオラでは、背筋を伸ばす感覚をいつも持つこと。
肩甲骨から上に手を伸ばす感じ。尾てい骨は下に下ろす。反対方向のエネルギー。
手を伸ばして大きく息を吸う。
ラジオ体操と同じで、手を大きく振る。
首が痛くなるのは、背中からきているのが原因。首だけ運動してもダメ。
左手を左耳に当ててながら天井の方向に伸ばして、息を吸いながら右に体を傾ける。そのときに顔が下を見て、上を見る。これを何回かやると、首に効き目がある。
知らず知らずに圧力がかかっている背中を伸ばしてあげることを意識する。
 
手を楽にしてあげる運動
指の間を広げて、壁に直角に手のひらをまっすぐに当てる。壁の手を90度左に。そして下に。呼吸しながら。そして、足のつま先を壁の手と反対側に回転する。
逆も同じ。
寝る前などの時間にやるといい。
 
その他、以下の内容について、レッスンがありました。
C線の弾き方と音を美しくする方法
合奏で遅れないで弾くためにはどうする?
移弦のこと
ボウイングのこと
ヴィブラートの掛け方
譜読みの教え方
弓の持ち方
アメリカで出版されているThe Tuning C.D.の利用の仕方
アンサンブルのヒント
ヴィオラを弾く姿勢
などなど。
 
印象的だったのは、エチュードは暗譜することが大切という教えでした。
教則本は、暗譜する
・エチュード練習で大切なことは、まず暗譜すること。いつまでも譜読みのレベルでは、だめ。
・暗譜の仕方がある。
・メロディックに考えると見えなかったラインが見え、音の確認ができる。
・バッハの無伴奏は、ほとんとすべてレガートで弾くと覚えやすい。和音が見える。
 
その他
・楽器を弾くのは言葉と同じ。音楽もコピーです。コピーすることに恥ずかしいと思う必要はない。
・YouTubuでもいろいろあるから、今、どういう弾き方をするか、考えるために利用できる。
・いい音楽をするために、利用したらいい。
・ヴィオラばかり弾いているわけではない生活でも、自分から音のことを離さないこと。いつも考えているといい。
・タイミングの取り方をよく生徒に話します。いい演奏をしている人と一緒に弾くことを薦めている。
・上手い人は、思いもしないタイミングで弾いていることがある。音の質を変えるとか、いろいろな要素があるけど、細かく聴いて、研究するといい。


 
ということで、ここではダイジェストで記載していますが、2時間に満たない中で、大変に中身の濃い研究会となりました。こうした研究会を通して、ヴィオラを学ぶ生徒さんたちに、ヴィオラ認定指導者からそのエッセンスを伝えることになります。