早野龍五会長と保護者との
「第3回ネット交流会」を開催しました!

 
早野 おはようございます。保護者の皆さんとのネット交流会の第3回になります。第1回は昨年8月20日に開催し、1時間で47本の質問に答えました。第2回は、昨年12月25日に開催し、チェロ科出身の上野達弘理事が登場されました。私たちも上野理事のスズキとの関わりをそれまでに長い時間聴くことがなかったので、大変嬉しかったですね。
 →第1回ネット交流会の様子
 →第2回ネット交流会の様子
 

 今日は、私が2016年に会長になって2年後に本会理事として就任いただきました黒河内健業務執行理事をお迎えしています。コロナの始まった2020年以降、さまざまな難しい状況の中で、松本の本部に常駐してくださる理事として大変活躍してくださっています。

 今年は、松本で夏期学校を対面で開催しますが、このネット交流会は、夏期学校の中で保護者との懇談会というのが元々の企画でした。それがコロナですべてオンラインになりました。そこで、理事の方と保護者の皆様がオンラインで交流できればと思って、この「ネット交流会」を始めた次第です。今日は、指導者の末廣悦子先生、永田香代野先生、石川洋子先生、上杉亮子先生にも出席いただいております。それでは、黒河内さんにお話しいただきましょう。
 
黒河内 おはようございます。黒河内健です。 約5年間、業務執行理事として活動しています。今、65歳。諏訪松本がホームグラウンドです。セイコーエプソンに定年まで在籍していました。途中、シンガポール・中国・ドイツで合計18年間、海外勤務をしておりました。山下健一先生の上諏訪の教室で3歳からヴァイオリンを始めました。小学6年の頃、9巻になった頃から、急にお稽古が楽しくなったことを覚えています。 8歳の頃には、第2回テンチルドレンツアーに参加して、(全然覚えていませんが)ニューヨークで有名なテレビ番組「エド・サリヴァン・ショー」に出演したようです。左の写真がその時のものです。

 オーケストラ活動に専念した早稲田大学時代には、

眼鏡姿が黒河内理事

西ドイツへの演奏旅行があり、まだ東西ドイツがあった頃でした。ベルリンの壁で記念撮影したりしました。また、前年には、早稲田の大隈講堂で、カラヤンの指揮でR・シュトラウスの 「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」のリハーサルをするという得がたい経験もしました。

 20代は割とよくヴァイオリンを弾きましたが、30代〜40代はほとんど演奏しなかったですね。50代になってドイツに駐在するようになってから、会社のクリスマスパーティで初年度に弾いたら、みんな喜んでくれて、それから8年間、毎年弾いていました。 この写真にありますように、宴たけなわになってからの演奏ですから、演奏が終わるまではジュースで我慢しながら参加していました。スズキの曲はとてもいい曲がいっぱいあって、それらが幾つになってもヴァイオリンを持つと弾けますから、とても重宝しました。

 
 山下先生は今思うと大陸的で優しい先生でした。毎週金曜日の会議で当時はお元気でいらした鈴木鎮一先生から「こんなことで怒られた」という話を、山下先生からよく聞きました。私自身は、何ヵ月も同じ曲でも気になりませんでしたが、特に母親は気になったようで、山下先生に進度についてはよく聞いていたようです。母は、本当に厳しかったですね。小学校に上がるまでは、叱られた思い出しかありません。とにかく鈴木先生のお考えに心酔していました。今でも機関誌の巻頭言を読みますと、母の姿を思い出します。
 
 よく、保護者の皆様からは「どこまで楽器をやったらいいでしょう」とか、「受験勉強で忙しくなったらどうしましょう」と質問されます。どの楽器でも同じですが、研究科卒業まではやっておくといいと思います。今日は、ご入会されたばかりの保護者の方もいらっしゃると思いますが、やはり最後まで続けてみるといいことがたくさんあります。社会人になってからは、仕事などでなかなか弾けないことがあっても、50代になって、ドイツに赴任した時に周りの環境を見て、「あぁ、またヴァイオリンを弾きたいな」と自然に思えたことは、今でも良かったなと思っています。大人になってからは、自分が楽しいと思える時に集中できればいいのですから。

 スズキで身についたことは、一つのことを粘り強くやり抜くことですね。どんなことでも簡単には諦めません。地道にやることです。それに、音楽の良さを味わえることを通して、直感力も磨かれたように思います。
 
 60歳の定年以降は会社に残留するよりも、別の環境に身を置きたいと思っていた時に、バイロイト音楽祭で本日ご出席の末廣悦子先生と出会い、早野会長らとの面談を通して、現在の立場になりました。
 
 スズキの業務執行理事としての私の命題は、「スズキ・メソードを継続発展させること」につきます。少子化に伴う会員減少への対策もそうですし、中長期視点での安定運営も必須です。鈴木先生がお亡くなりになられたあと、民間企業でもそうですが、偉大な創業者亡き後の今のスズキを理解して、これからの道を考えることを心がけています。トップダウンではなく、ボトムアップの活動をどう構築するか、そして今日のネット交流会がまさにそうであるように、保護者や生徒さんが参画してくださる機会をどう作るか、そして鈴木先生が直接育てられた第1世代の先生がだんだん少なくなっていく中で、第2世代、第3世代の先生をどう育てていくかについても、 将来のスズキの指導者像も含めて考えていきたいと思います。

 

ここからは質問タイムです。黒河内理事が質問に答えながら、かつ進行役も務めてくださいました。

 
黒河内  いくつか質問をいただきました。「最近はどのような練習をしていますか」ということですが、毎朝、ラジオ体操をしてから、6時40分から7時までの20分間は、ヴァイオリンの練習にあてています。疲れている時など継続するのは大変ですが、やはり毎日が大切というのがスズキ・メソードですから、音階練習や、今日はこのページだけと決めて、ゆっくりと課題曲を弾くことを続けています。時間にも気持ちにも余裕のある日は、憧れの曲でありながら自分の技量でも弾けるヴァイオリンソナタを弾いています。
 
早野 黒河内さんのラジオ体操の後の20分というのは、すごいなと思いましたね(笑)。僕は都心の集合住宅に住んでいますので、黒河内さんのような時間帯に音を出すことが禁じられています。どうしても練習が必要な時は、サイレントヴァイオリンを弾きますが、ヴァイオリン科の先生方には叱られますね(笑)。何か目標がないと練習を続けるのは難しいと思います。その点、人前で弾く機会に向けて練習をすることがモチベーションの一つになっています。
 
 お子さんたちにもいつも言っています。「本番が大事だよ」と。卒業録音やいろいろなコンサートで弾く、先輩たちが弾いているのを聴く、という経験がお子さんたちにはすごくモチベーションになると思います。そういう機会がたくさんあるのは、スズキならではですね。
 
 最近、お誘いがあって、浅草や表参道でジャズヴァイオリンを弾いています。スズキの楽曲とは違って、チャレンジになりますが、僕の大きなモチベーションにもなっています。
 

石川 先ほど、保護者の方もおっしゃっていましたが、

九州地区ヴァイオリン科指導者:石川洋子先生

あれもこれもお子さんに伝えようとすると、言葉が厳しくなってしまいますね。私たちは、初歩の時代は、「短い時間でいいです」と伝えます。極端な話、毎日楽器を出して、しまうだけでもいい。お稽古の合間にお人形を使ったり、シールや色塗りを取り入れたり、お絵かきが好きだったら、1曲弾いたらお顔に目を入れていくとか。少しのことができたら「できたね!」と喜び合うことです。一度にあれもこれもではなく、がポイントです。

早野 そういえば、鈴木先生のレッスンでは、「今日は、ヴァイオリンのケースを開けるだけの練習をしましょう」というのがありました。お子さんごとにその日の様子を見て、できることを少しずつ増やしていくということだったろうと思います。
 
末廣 「ご飯を食べたらヴァイオリンをしましょう」

東海地区ヴァイオリン科指導者:末廣悦子先生

というのが普通でしたね。「ヴァイオリンをしなくていい日があります。それは朝から晩までご飯を食べなかった日」というのもありました。今だと幼児虐待と言われてしまいそうですが、病気の時はしなくていいですよ、ということでした。やはりこれがお稽古を軌道に乗せる基本だと思います。昔は、子どもの調子の良い時を見計らってというのができましたが、今の大半のお母さんがお仕事をお持ちでお忙しくて、なかなかできません。私は「それでも5分早く起きて、ともかく朝、5分楽器に触ってください」と伝えています。朝5分触っていると、夕方にまた触ってみようかなという気になりやすいようです。

黒河内 今日ご参加の保護者の皆さんで、習い事をされていた方、どのくらいいらっしゃいますか。あ、結構いらっしゃいますね。逆に、お母さんなりお父さんが楽器をされて来られなかった方の場合、いろいろと大変かと思いますが、永田先生、いかがですか?
 
永田 うちのクラスでも2歳のお子さんのお稽古を始める時に、

関東地区ピアノ科:永田香代野先生

「まずお母さんがやってみましょう」ということで、お母様からスタートしたことがありました。そうするとお子さんが始める時にとてもスムーズでしたね。ヴァイオリン科の皆さんが見学の時間をたっぷり取ることをヒントにそのようにしてみたわけですが、良い感じでスタートできたと思います。

 
黒河内 以前の機関誌のアンケートでも、「子どものお稽古をするためにお母さんが1,000回くらい練習したら、子どもも発奮して良い刺激になったようです」というお答えもありました。親御さんもがんばっている姿がいいようですね。同じアンケートで、「毎日練習していますか」という質問と「どんなタイミングで練習していますか」という質問をクロス集計した時に「家族で決めた時間に練習しています」というお答えのおうちの80%が毎日練習しているという回答で、他のタイミングで練習している場合と比較して、毎日練習できている率が顕著に高かったです。そこから見えてくるのは、朝でも夕方でもその時間になったら、そのお稽古を始めるという習慣です。それが家族のリズムになっているようです。家族全員で相談して、その時間になったらお稽古を始めるというのが、実はお子さんにとってもストレスがないのかなと思いました。
 ところで、ピアノ科の皆さんにお尋ねしたいのですが、夏期学校でのピアノ科のグループレッスンでは、先生方もどう楽しんでいただこうかと毎回アイデアを練っていらっしゃいますが、これまでの経験で、どんなところに楽しさを感じていらっしゃいますか?
 
保護者 コロナの前でした。市民芸術館で鍵盤ハーモニカとか打楽器などいろいろな楽器を持って、「茶色の小瓶」を演奏した時が楽しかったですね。それと2台ピアノで4人一緒に連弾した時もすごく楽しかった思い出があります。
 
上杉 いろいろな楽器と合わせることができるのが、

中国・四国地区ピアノ科指導者:上杉亮子先生

スズキの楽しいところですね。それと、本日のお話の中で思ったことですが、毎日のお稽古の中で、嫌なこともあると思います。その中でも、何か一つ褒めてあげてほしいなと思います。例えば「今日は、座れてよかったね」とか、「ヴァイオリンのケースを開けられてよかったね」とか。子どもの笑顔はお母さんも笑顔になります。そういう楽しさがあると、長く続いていくと思います。

保護者 「ご飯食べたらお稽古する」というように、日常生活の中にルーティンとして入れていく楽しい仕掛けが必要なんだなとあらためて思いました。なかなか難しいことですが、ありがとうございました。
 
早野 先ほど、「他の楽器と合奏できるのが楽しい」というお話がありました。 最近、ピアノ科では他の楽器と簡単に合奏できる伴奏譜を作っていただきました。こういうものをうまく活かして、子どもたち同士で例えば1巻の曲を一緒に演奏してみるというのをやってみたいですね。先生方には、この企画をぜひ進めてほしいと思います。あ、ちょっと今、地震がありましたね。皆さんのお住まいの地域は大丈夫ですか。あ、おさまりました。

 この夏は、多くの皆さんが夏期学校にいらっしゃると思います。このような機会※を今度は松本で対面にて行ないますので、ぜひご参加ください。
 
※編集部註:7月28日(金)18:00-19:00 才能教育会館ホールで開催予定
オンラインでもご覧可能です。