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 10月20日(日)、歴史ある甲信地区大会を岡谷市カノラホールで開催しました。実行委員長の臼井紳二先生から、早速速報が届きましたので、ご紹介しましょう。
 

ホールにスズキトーンがあふれた、第60回甲信地区大会  

甲信地区ヴァイオリン科指導者 臼井紳二

 

  鈴木鎮一先生126歳のお誕生日の3日後、2024年10月20日(日)に岡谷市カノラホールにて第60回甲信地区大会を開催しました。前日までの暖かさがどこかに消え去り、今期最低気温の朝でしたが、晴天に恵まれ長野山梨両県下から大勢の生徒さんにお集まりいただき、盛大に開催ができたこと大変嬉しく思います。どの演奏もホールにスズキトーンが満ちあふれ、素晴らしかったです。

 特に冒頭の弦楽合奏とフィナーレの三科合同演奏では心を動かされました。弦楽の指導と指揮をしてくださった山本裕康先生、各科の伴奏をしてくださった臼井文代先生、ご講演くださった早野龍五理事長、ご参加いただいた会員生徒の皆様、ご協賛ご後援いただいた関係各位、運営にご協力いただいた甲信地区の指導者各位、演奏でバックアップしていただいた諏訪交響楽団のコントラバスの皆様とヴィオラの指導者の皆様に心から感謝申し上げます。

 岡谷での開催は2017年以来7年振りとなります。このコンサートは北信、東信、中信、南信、山梨の各エリアで持ち回り開催ですから、7年というのは計算が合いません。実は2020年10月にカノラホールでの開催が決定していましたが、コロナ真っ只中で、泣く泣く開催中止となりました。結局コロナ過で2021年まで開催が見送られ、2022年に松本で再開されましたが、2回開催が飛んだため60回という節目の開催が南信エリアに回ってきました(コロナがなければ2022年の松本が60回だったはず…)。
 
 60回目を岡谷で開催することが決まった段階から、何か核になる企画はないかと思案しました。そこで思いついたのが、本会チェロ科特別講師の山本裕康先生に弦楽の指揮・指導をしていただくことでした。主管する岡谷諏訪支部の指導者間で了承を得て2023年の夏期学校の際に山本先生に腹案をお話しました。ただ、その時点では会場の確保ができる時期ではなかったため、ホールの予約が完了した時点で再び依頼することとなりました。13ヵ月前にあたる2023年9月にカノラホールの予約が完了し、真っ先に山本先生のご都合をお伺いしましたところ、大学の行事が重なっていたのですが、ご都合を付けていただけることになり、コンサートの核となる部分が決まりました。その他は各科の演奏、初歩のごあいさつ、早野会長(現理事長)の講演と決め、具体的に動き始めました。
 
 弦楽の曲目は山本先生と協議し、弦楽合奏の名曲中の名曲、グリーグの「ホルベアの時代から」となり、本番前の9月と10月のリハーサルと本番午前中のゲネプロに必ず参加することを条件にエントリーを募りました。様々な理由でリハーサルに出席できず、エントリー取り消しが少なからずありましたが、最終的にヴァイオリンが各15名、ヴィオラが指導者含め9名、チェロが12名の総勢50名超の演奏となりました。
 
 2回目のリハーサルまでは着座で演奏していましたが、「普段立って練習しているなら最後に試しに立って弾いてみよう」という山本先生のご提案で立奏してみたところ、演奏レベルが数段アップするほどの違いがあり、最終的に本番でも立奏となりました。本番では練習で積み重ねた以上のものを発表できたと思います。事前のリハーサルから本番まで生徒にとっても指導者にとってもかけがえのない時間になりました。山本先生には甲信地区大会に関わっていただき、お導きいただいたこと、深く感謝申し上げます。
 
 山本先生からも、特別に今回のご感想をいただきましたので、どうぞお読みください。


 

第60回スズキ・メソード甲信地区大会に参加して

チェロ科特別講師 山本裕康

 
 前日とは打って変わって秋と言うには風が冷たく、少々戸惑う寒さではありましたが、青空も広がり、第60回スズキ・メソード甲信地区大会を祝福するには絶好の日になりました。
 
 僕は弦楽合奏のみのお付き合いではありましたが、その後繰り広げられたフルート、チェロ、ピアノ、そしてヴァイオリンの演奏を会場内で聴かせていただき、子どもの頃のこういった大きな大会の記憶を少しずつ思い出しながらの鑑賞となりました。
 
 当時はまったく気にも止めませんでしたが、今回会場内から拝見していて先生方の本当に細やかで素早い大変タフな仕事ぶりに頭が下がりました。こういう先生方に僕は育てられたんだなと、この歳になって気づき、恩返しの想いを強くしました。
 
 弦楽合奏の生徒さんとは2度みっちりとリハーサルをさせてもらいましたが、2回目のリハーサルの最後にヴァイオリン、ヴィオラの生徒さんに立って演奏してもらいました。その時の響きの幅、音のスピード感、音楽の推進力が忘れがたく、演奏会では先生方に無理を言って、立奏という形をとらせていただきました。
 
 ホールでの最後のリハーサルで、演奏会では大変良い演奏になることは確信しましたが、生徒さんたちの本番での集中力や今までにない生き生きとした姿に感銘を受けました。演奏したグリーグの「ホルベルグ組曲」が持つ颯爽とした推進力を彼らが作り上げていくその瞬間は、忘れることのできない、かけがえのない時間となりました。
 
 偉そうに生徒さんたちに蘊蓄を垂れましたが、最終的には僕が生きる勇気や人生の楽しみを彼らから教わった素晴らしく、ありがたい機会になりました。そんな機会をいただいた甲信地区の先生方には心から感謝しております。
 
 そして今後、さらに輝かしく暖かい歴史を刻んでいかれることを心より願っております。


この日は、コンサート中盤に早野龍五理事長による講演もありました。マンスリースズキ編集部から、その内容について臼井紳二実行委員長に問い合わせたところ、大変お忙しい中、要約の形で送っていただきましたので、こちらで紹介します。臼井先生、ありがとうございました。

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子ども時代に身につけられる能力があります。

早野龍五理事長

 
 鈴木先生は「必ずしも音楽家を育てるために才能教育運動をやっているのではない」ということを仰いました。しかし、「だからといって、いい加減に弾いて良いわけではない」とも。「ちゃんといい曲を聴いていて、いい音楽を聴いて、そして立派に弾きなさい」と。「少なくともモーツァルトを弾けるように」と。モーツァルトを弾けるようにと仰る意味は、「才能教育課程(モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第4番、第5番)を卒業録音するくらいまで、きちんとやりなさい」ということが鈴木先生の教えでした。そうすることによって、忍耐力であるとか、規律であるとか、他のお子さんたちときちんとやっていくことができる協調性であるとか、そういうものが育っていくのだよと。それによって、音楽家という以前に立派な大人、いい社会人になるということ、とにかく子どもを育てるということを非常に注視しておられました。

 その忍耐力であるとか、そういうものについては、その後ノーベル経済学賞を取ったヘックマンという人が、非認知能力、すなわち学校の成績や試験では測れないけれども、とても重要な子ども時代に身につけるべき能力として定義され、それが日本にも輸入されてきていますが、それは昔から鈴木先生が言っておられたことです。そのヘックマンも言っている非認知能力の中の1つに、やる気があります。

 「今日はやる気が出ないから練習しない」とか、「今日はやる気がないから何々をしない」と、自分自身や自分のお子さんが言ったことがあるかと思います。普通は、やる気が原因で、実際に何かをやることが結果だと思っているのですが、実はこれは逆です。何かをやるとき、実際に体を動かして行動するとやる気が出るのです。スズキの例で言うと、まずピアノの蓋を開ける。それでやる気が出る。楽器のケースの蓋を開ける。それでやる気が出る。体を動かしてやることの方が先で、そこからやる気が出る。やる気が出ないと口で言っているのは、これは単にやらない言い訳に過ぎない。
 
 これは僕が言っているのではなくて、東京大学の脳科学の池谷裕二(いけがやゆうじ)先生のおっしゃっていることの受け入れです。実は、鈴木先生も似たようなことを言っておられました。このことを子どもの時にちゃんとできるようになる、毎日何かをやる、まず行動があって、そこからちゃんと練習できるようになる、これを積み重ねて、やる気が云々とかいうことを思わなくても、ちゃんと体が動いて何ができるようになるという、そういう訓練、そういう育ち方、それをすることが一生の宝だと私は思っています。ですので、今日の大事なポイント、やる気が原因で行動が結果ではないということ。そのことをよくよく考えてみてください。
 
 今日のコンサートは、つい先日お誕生日だった鈴木先生も必ず聴いてくださっています。この後の後半の演奏も楽しみにしております。