15年の歳月を超えて、4人の音楽が再び響き合う
BS朝日「カルテットという名の青春が過ぎても」11月22日(日)放送!

 

 かつて、弦楽四重奏に青春を賭けた4人の若者がいました。ヴァイオリンの植村太郎さん、佐橘マドカさん、ヴィオラの原麻理子さん、そしてスズキ・メソード出身のチェリスト、宮田大さん。彼らが結成した「ジュピター・カルテット・ジャパン」の挑戦と挫折、友情と葛藤を描いたドキュメンタリー「カルテットという名の青春」は、2011年にBS朝日で放送され、第49回ギャラクシー賞など数々の賞を受賞しました。

 あれから15年。4人のその後の人生と再会を追った続編「カルテットという名の青春が過ぎても」が、11月22日(日)21時〜23時に、BS朝日で放送されます。マンスリースズキでは、15年前の「カルテットという名の青春」の映画館での上映に関するニュースを、今年は何度か紹介してきました。

 

■ 世界を目指した4人の青春

 
 2004年、桐朋学園で学んでいた4人は、弦楽四重奏の魅力に取りつかれ、互いの才能をぶつけ合いながら音楽を追求していきました。世界への飛躍を目指して挑戦したミュンヘン国際音楽コンクールでは、一次審査で落選。しかし、夢を諦めず、スイスのジュネーヴ高等音楽院に留学し、名匠ガボール・タカーチ=ナジのもとで研鑽を積みました。
 
 弦楽四重奏は、4人がそれぞれ独立した声を持ちながら、一つの音楽をつくり上げる芸術です。自分の考えを主張するだけでも、相手に合わせるだけでも成立しません。時には激しく意見を交わし、互いの違いを受け入れながら、一つの響きを探し求めます。
 
 2011年の番組が描いたのは、華やかな成功物語ではなく、理想と現実の間で揺れ動きながら、懸命に音楽と向き合う若者たちの姿でした。
 

■ 15年の歳月が育んだ「成熟」

 
 2010年にカルテットは活動を休止。それぞれが異なる道を歩み始めました。ソリストとして、室内楽奏者として、あるいはオーケストラの一員として、国内外で音楽活動を続けてきた4人。その間には、音楽家としての成長だけでなく、一人の人間として積み重ねてきた人生がありました。
 
 そして2026年4月18日、東京・春・音楽祭の舞台で4人は再会しました。東京文化会館小ホールは満席。マンスリースズキ編集部も会場に駆けつけ、その演奏を身体いっぱいに堪能しました。
 
 前半に演奏されたのは、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第12番変ホ長調Op.127でした。交響曲第9番の直後に書かれたこの作品は、ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲の幕開けを告げる名曲です。壮大な交響曲の世界から一転し、親密な響きの中で内面的な対話を深めていく音楽。そこには、かつての若者たちが15年という歳月を経て獲得した、確かな「成熟」が感じられました。
 
 後半は、世界的ヴィオラ奏者の今井信子さんを迎えたブラームスの弦楽五重奏曲第2番ト長調Op.111。83歳の今井さんと、円熟期を迎えつつある4人の音楽家が織りなす響きは、室内楽の醍醐味を存分に伝えるものでした。
 
 今井さんは、かつて4人を指導した師の一人でもあります。また、タカーチ・クァルテットのリーダーで、ジュネーヴで彼らを育てたガボール・タカーチ=ナジとも共演歴があり、そこには世代を超えて受け継がれる室内楽の伝統が息づいています。
 
 特に、2台のヴィオラが音楽の中核を担うブラームスの作品では、今井さんの第2ヴィオラが音楽の重心となり、豊かな対話を生み出していました。それは、技巧を競い合うのではなく、互いの音に耳を傾け、人生経験を重ねた者同士が音楽を語り合う、まさに室内楽の本質を感じさせる演奏でした。ヴィオラ奏者なら誰もが憧れる名曲です。
 
 アンコールでは、4人によるモーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」に続き、今井さんが再登場してブラームスの第1楽章後半を演奏。終演後、互いに抱き合う出演者たちの姿に、客席からは温かな拍手が送られました。
 

■ 青春が過ぎても、音楽は続く

 
 この再会コンサートの会場には、何台もの撮影カメラが設置されていました。15年前のドキュメンタリーを手がけた制作陣が、再び4人の姿を追っていたのです。
 
 今年2月には、2011年の番組を再編集した映画「カルテットという名の青春」が劇場公開されました。その際、宮田大さんはマンスリースズキの読者に向けて特別なメッセージを寄せ、ジュネーヴで学んだ「音楽とは何か」という問いに触れながら、作品を自分自身の人生と照らし合わせて見てほしいと語ってくださいました。
 
 音楽を学ぶことは、単に楽器の演奏技術を身につけることではありません。仲間の声に耳を傾け、相手を理解し、自分の思いを伝える。そして、ともに一つのものをつくり上げる喜びを知ることでもあります。
 
 幼い頃から音楽を通じて人間性を育むことを大切にしてきたスズキ・メソードにとっても、この4人の歩みには深く共感できるものがあります。青春時代に追い求めた理想は、年月とともにどのように変化していくのでしょうか。15年前には表現できなかった音楽が、人生経験を重ねることで初めて生まれることもあるでしょう。
 
 11月22日(日)21時〜BS朝日放送の「カルテットという名の青春が過ぎても」は、4人の音楽家の成長を記録するだけでなく、音楽とともに生きることの意味を、私たち一人ひとりに問いかける作品となることでしょう。15年前の彼らを知る方にも、今回初めて出会う方にも、ぜひご覧いただきたい番組です。


 
「カルテットという名の青春」上映館
☆新文芸坐での上映・トークが決定!
11月16日(月)16:15
11月18日(水)19:10 ★上映後トーク:宮田大(チェリスト)、浅野直広(監督)
11月20日(金)10:15
そのほか、2027年2月12日(金)〜宇都宮ヒカリ座(栃木)