Dialogo Anticoとは「古い対話」。
歴史的な作品研究を行ないながらも、各パートが対話し合うように
調和されるアンサンブルを目指す若手バロック演奏家たち。
アムステルダムを中心に活躍する彼らのコンサートが、
松本と東京で開催されます! 

 Dialogo Anticoの日本公演は、今回が初めてになります。300年前のバロック時代の音楽を、研究しあい、そして演奏をし、未来につなげる活動を続けているのが、若手奏者たちDialogo Anticoのメンバーです。来日公演に合わせて開設されたYouTubeでは、メンバーたちによる演奏の触りをご覧いただくことができます。
→Handel Trio Sonata

 また、ヴァイオリニストの島野千春さん(甲信地区ヴァイオリン科指導者、島野ロンダ先生のお嬢様です。左のチラシの写真で、一番右の方)と、同じくヴァイオリニストの今田利さんによるバロックの説明動画が公開されています。
→古楽紹介
→Baroque VS Modern Violin 

Dialogo Antico〜イタリアンバロック、愛の対話

12月6日(金)19:00開演
 才能教育会館ホール
 入場料 一般:3,000円、学生:2,500円

12月10日(火)19:00開演
 東京・大田区 大森福興教会→map
 入場料 一般:3,000円、学生:2,500円(当日券は+500円)
 【問】dialogoantico@gmail.com
※12月8日に予定されていた奈良公演は、オーガナイザーの都合で中止となりました。


 来日にあたり、島野千春さんからメッセージをいただきました。  

音楽についての書簡 - Dialogo Antico日本公演に添えて

「和声を必要だと思うのは、われわれが堕落しているからである」J.J.ルソー

 ルソーは、ラモとブフォン論争の最中にあって、音楽上の信条を支えたのは彼のイタリア音楽の体験でした。音楽は「人間の情念をそのまま表せるジャンル」で、「音楽のいちばん自然な形は旋律である」から、「自然に還り」イタリア音楽の「旋律性」をわがものとせよ、『新エロイーズ』が活写する<パラノイア>としての他界の風景は一種の<理想状態の仮構>であり、ヴェネツィアに旅行し「音楽に浸った」ルソーのロマン主義的感情のミメーシス: 模倣です。

 「音楽は諸芸術のなかで最もロマン的なものだ - 実際、唯一のロマン的なものとさえ言えるだろう」E.T.A.ホフマン

 2018年冬、オランダで、私は友人とバロックアンサンブルDialogo Anticoを結成しました。イタリア語で「古い対話」を意味します。日本、オランダ、スペインから古楽を愛する若手5人が一堂に会し、バロック期のイタリアの作品を中心に演奏します。しばしばアンサンブルの語は「調和したもの」と訳されます。メンバーの〈対話〉を通じ音楽が〈完成〉する、望蜀(※)の思いはすでに、今年、隣国ドイツのゲッティンゲンで開催された国際ヘンデルコンクールをファイナリストとして終了したことに一種の成就をみました。今月、アンサンブルとともに帰国し、地元松本(6日)/東京(10日)(8日の奈良公演はオーガナイザーの都合で残念ながら中止となりました)の2都市での日本初公演を予定しています。私自身、バロックヴァイオリンを日本で演奏するのは初めてのことになります。
一つの望みがかなうと、 さらにその先を望むこと。人間の欲望には限りがなく、満足を知らないことのたとえ

「生命と詩と光の神を見よ。それは人間のからだに宿った太陽であり、その額は戦いの勝利に輝いている。今、矢はまさに放たれたところだ、不死の神の復讐の矢が。その眼と鼻には美しい蔑みと力と尊厳が宿っていて、その電光の光を輝かせ、そのまなざしに神々しさをきらめかせている」

 バイロンの『ハロルド』はヴィンケルマンを通してアポロを見ていました。主人公のチャイルド・ハロルド、すなわちバイロンがもっていたイタリア、およびイタリアを通しての古代への憧れは、新古典主義者たちがもっていたそれと同質でした。バイロンのロマン主義を養ったものとして古典主義があり、古代に対する憧れがありました。「われわれはすべてロマン派である」(ミシェル・ビュトール)8年前アメリカで、私は古楽の浪漫に「憑かれた」のです。シュリーマンが古代に情熱を注いだように、ヴァザーリがギリシア、古代という過去を価値の基準にしたように。

「愛して祈って歌う、これが自分の生活のすべてである」ラマルチーヌ

 古楽のコンサートは即興が多いものです。それは演奏者とお客様と音楽が〈出会う〉一回性の美学であり、その瞬間をともにすることができたら音楽家冥利に尽きるというもの。皆様とコンサート会場での出会いを楽しみにしています。

旅の途中、オランダ・アムステルダムより
島野千春