国際スズキ協会(ISA)のオンライン理事会に出席しました。
早野龍五会長による報告
国際スズキ協会 (International Suzuki Association)は、スズキ・メソードを世界に広め、また、スズキ・メソードの名称や鈴木鎮一先生の知的財産を守るために、1983年に設立され、日本(TERI)、アメリカ(SAA)、ヨーロッパ(ESA)、パンパシフィック(PPSA)、アジア地区(ARSA)の5つの「大陸」で構成されています。
ISAは、全世界のスズキ指導者が、一人当たり年間6ドルの会費を納めることによって運営され、その理事会は各「大陸」代表 5名と有識者理事3名(+ISAのCEO)で構成されています。議長は大陸代表が2年交代でつとめることになっており、今年と来年は、私が議長です。
従来は年に1回、各大陸持ち回りで対面で開催されてきましたが、Covid-19パンデミックになった昨年の2月以降は、年に2回、オンラインで開催されるようになり、今回は、日本時間で10月16日(土)と17日(日)の2日間、各々3.5時間の会議でした(議長としては一瞬も気を抜くことができない、かなりハードな2日間でした)。
ISAが設立されてから約40年の間に、世界各国ではスズキの指導者の育成・認定を精力的に行なってきました。その結果、現在では、全世界のスズキの認定指導者数は約1万人にまで増え(そのうち、日本の指導者の割合はおよそ8%)、コロナ禍中でも増え続けています。
この2年間で特に顕著なのは、オンラインレッスンによる指導者育成が加速されたことです。
これまでであれば、まだスズキの指導者がいない国の方がスズキの指導者になるためには、旅費と滞在費を自己負担して、他国のTeacher Trainer(スズキの指導者を育てることを認められている先生:日本では担当指導者と呼ばれる)のところまでレッスンを受けに行く必要がありましたが、オンラインによって、その経済的・時間的障壁が大きく下がったのです。
一方、国境をまたいでの指導者育成は、新たな問題も引き起こしました。その問題の根源は、スズキ指導者の定義や、指導者になるための条件が、「大陸」間で統一されていないことにあります。
ヴァイオリンを例にとると、ヨーロッパにはレベル1指導者(子どもに指導曲集の1巻だけを教えることができる)から、レベル5指導者(指導曲集1巻~10巻を教えることができる)の5段階がありますが、日本では准指導者(1巻~10巻を教えることができる)と、正指導者(研究科A・B・Cまで教えることができる)の2段階だけです。そもそも、研究科が存在するのは世界中で日本だけです。
スズキの指導者の定義が各国でバラバラで良いのか、という議論は以前からありましたが、コロナ禍によって、これを真剣に議論しようという気運が、ISA理事会の中で高まりました。
そこで、日本で開催予定の『第3回国際スズキTeacher Trainer会議』における一つの重要なテーマが、「スズキ指導者の定義を明確にし、各国間に現存するローカルルールを、可能な限り相互に読み替え可能なものにしよう」ということになる見込みです。
もともと、この会議は2022年に日本で開催予定でしたが、コロナ禍のために延期されていました。今回のISA理事会で、(国際的な移動が可能になれば)2023年の秋に日本主催で開催してほしいという要請が出され、次回のISA理事会(来年3月頃開催の見込み)までに、日本側で検討することになりました。
たとえば2023年の10月に、全世界のスズキのTeacher Trainerの方々と一緒に、鈴木先生のお誕生日を祝う会を開けたらいいな、というのが私の個人的な意見です。
その他、スズキ・メソードにマンドリン、クラリネット、アコーディオンを加えることの可否、YouTubeなどでの演奏動画の公開と著作権違反の考え方など、議論は多岐にわたりました。
なお、先日逝去された鈴木裕子ISA名誉会長(Honorary President)の後任についても議論を始めました。ISAとして大事な問題なので、次回以降、慎重に審議することにしました。
→国際スズキ協会(ISA)