コロンビアの首都ボゴタに行ってきました。
会長 早野龍五
ボゴタ、どこにあるかご存知でしょうか。南米コロンビアの首都。赤道のほぼ真下、標高2600m以上のアンデスの高地に800万人が暮らす大都会です。その郊外、標高3000mの広大な敷地に、ロス・アルカパロスという創立26年目の私立学校があります。幼稚園から高等学校まで一貫校で、科学教育を重視し、理系の科目はすべて英語で教えている一方、スズキ・メソードで全学年の音楽教育を行なうという、非常に特色ある教育を行なっている学校です。卒業生の多くは、米国を中心とする国外の大学に進学しているようです。
コロンビアの首都ボゴタの郊外、標高3000mのところにあるロス・アルカパロス校の開放的な校舎 創立者のカサスさんは、国連で働いていたご主人とともに米国で双子を育てていた時にスズキ・メソードに出会い、コロンビアの子どもたちにも質の高い教育を受けさせたいとの思いから、スズキ・メソードを取り入れた学校を設立されたとのことです。
ロス・アルカパロス校では、昨年、創立25周年記念行事として「脳と音楽」というシンポジウム、および、南米のスズキ・メソードの音楽会を開催し、私はゲストとして招待されて講演を行ない、子どもたちと一緒に演奏もしました。
昨年のイベントはコロンビア国内で多くの関心を集めたとのことで、今年は少し規模を大きくし、コロンビア教育省、テレビ局、新聞社などの協賛を得て「El Cerebro Científico = 科学する脳」というテーマで、11/14-16に開催されました。
講演会場入り口風景。私を含め5人の講師が登壇しました 今回の私の講演タイトルは”Strings, strings, …”です。タイトル中の一番目の”Strings”はヴァイオリンの弦、二番目の”Strings”は素粒子理論の最先端の超弦理論(String theory)から取りました。
その他の講師の方も、たとえば天文学者のKuchnerさんがハッブル望遠鏡を用いた遠方の銀河の研究とアート作品の制作を両立しておられるなど、科学、脳、アートを縦横に駆け回る、魅力的な話をされました。会場は約400人の聴衆で満員。英語とスペイン語の同時通訳があり、講演後には、活発な質疑応答が行なわれました。
会場で突然ヴァイオリンを渡され、ロス・アルカパロス校の生徒さんたちと一緒に演奏しました 昼休み後には、スズキ・メソードで学んだロス・アルカパロス校の生徒さんたちによるミニコンサートがあったのですが、私もその場で突然ヴァイオリンを渡され、生徒さんたちと一緒に演奏しました。
今回のイベントに向けて、学校の生徒さんたちは数ヵ月をかけて、学年ごとに自主研究プロジェクトに取り組みました。講演会の前日、私たち講師は学校の教室を回って、それらのプロジェクトの成果について、子どもたちから(英語で)説明を受け、議論を取り交わしました。
環境問題に取り組んだ幼稚園の子どもたち 私が見たプロジェクトは、
・「土と水をきれいにしよう」(幼稚園)
・「(スパイダーマンなど)スーパーヒーローの科学」(5年生)
・「蜘蛛の糸の科学」(9年生)
・「地球が丸くなかったらどうなる?」(11年生)
・「ギリシャ神話 -伝説と科学」(12年生)
でしたが、どれもとても素晴らしい着眼で、子どもたちとの議論も弾みました。
スーパーヒーローの科学に取り組んだ5年生の部屋には、何と漢字で「早野教授 私たちのプロジェクトへようこそ」の掲示が! 夕方には、教育における国際性の重要性、科学と芸術のように複数の分野で活躍できる子どもを育てることの意味、母語教育と外国語教育の優先度(特に小学生に算数を英語で教えることのメリットとデメリット)などについて、ロス・アルカパロスの先生方と講師陣との意見交換も行なわれました。
そして最終日は、学校のすぐ近くに広がる国立公園(標高4000m!)へ 、講師の方々と学校関係者有志とでピクニックに行きました。世界でこの地方でしか見られない珍しいランなどを見ながらアンデスの高地を歩くという珍しい体験。子どもたちは元気に走り回っていましたが、講師たちは皆、薄い空気でぐったりした1日でした。
ロス・アルカパロス校では、この2年間の実績を踏まえ、来年秋にもイベントを企画したいとのことです。私は「必ず来るように」と念を押されていますので、おそらく来年も、この場で何か報告できるのではないかと思います。
標高4000m、コロンビアのチンガサ国立公園でのピクニック