2010年代

若い指導者も増え、さらに活動の充実を目指す

 

第24回チェロ全国大会の様子を伝えた
季刊誌181号

  2010年代になって、若い指導者が次々に全国の教室に着任するようになりました。2011年春に札幌に着任したばかりの山田慶一先生にエールを送る形で開催されたのが、第24回チェロ全国大会(2012年7月28日・札幌市民ホール)でした。北海道では初の開催ということで、チェロ科の生徒も指導者も飛行機で、フェリーと車で、そして鉄道で全国から集まりました。前日の交流会、そして大会翌日の「体験会」と新たな教室のPRにも大きく貢献した大会となりました。

「サイトウ・キネン・フェスティバル松本20周年
記念スペシャル・コンサート」でフォーレの
「エレジー」を弾く生徒たち

  北の大地でのホットなコンサートイベント直後の2012年9月、松本のキッセイ文化ホール大ホールで開催された「サイトウ・キネン・フェスティバル(SKF)松本20周年記念スペシャル・コンサート」にヴァイオリン科の生徒とともに、チェロ科の生徒たちも出演しました。SKF総監督を務める小澤征爾さんが「松本がスズキ・メソード発祥の地であり、音楽を愛する土壌があったからこそ、私たちの音楽祭もすんなりこの地に受け入れられたのではないでしょうか」とプログラムに書かれ、20周年記念のコンサートへのスズキの子どもたちの出演を希望されたことから、実現したのです。

第24回チェロ全国大会翌日の体験会で、初めて
楽器に触るお子さんへのレッスンをされていた
久保田先生。この半年後に亡くなられました

  一方で、2012年の年の瀬には悲しいニュースが流れました。上記のどちらのイベントでも元気なお姿を見せていただいた久保田顕先生が、亡くなられました。名古屋工業大学出身ながらも、チェロの指導者になりたいとの一念で才能教育音楽学校に入学。旧東ドイツ(DDR)への演奏旅行など、チェロ科の発展、ひいては才能教育全体の運動に尽力された久保田先生は、チェロ科の中心的な存在でした。

 

チェロ科創設60周年記念〜第25回チェロ全国大会を開催

 

当日のプログラム

 2015年3月27日(金)、第25回を数えるスズキ・メソード  チェロ全国大会が文京シビックホールで開催されました。同会場は、バッハをこよなく愛したカザルスが1961年に来日し、400人のスズキの子どもたちの演奏に心を震わせた文京公会堂が前身だけに、実行委員会では創設60周年記念となる今回をバッハとカザルスに捧げるコンサートと位置づけました。

バッハの「G線上のアリア」でスタート

 実行委員長の佐藤満先生は、「258名のチェロ科生徒と113名のヴァイオリン科生徒が、ステージ一杯埋め尽くし、会場が震えるほど力一杯の演奏を披露いたしました。また、堤 剛先生ならびに29名のOB・OG諸氏が、胸の熱くなる素晴らしいお祝いの演奏をお聴かせくださいました」と大きな花を添えてくださったことに、心からの感謝を表明されました。さらに「60年の歴史を振り返り、チェロ科のルーツであるカザルスとバッハへのオマージュを込めたこのコンサートを終えた今、改めて先人たちの教えと価値観を捉え直し、子どもたちの幸せと、この教育法のさらなる発展のために努力を続けてまいります」と決意を述べられています。

 人間で言えば、還暦を迎えたことになるチェロ科。鈴木鎮一先生をはじめ、チェロ科を創設した佐藤良雄先生や先人たちの敷かれた道筋をさらに研究し、次の世代に確実につなげてゆくことが、これからの大きな課題です。

カザルスが愛したカタロニア民謡「鳥の歌」を独奏された堤 剛さん。平和を希求したカザルスの願いが、会場に響きわたりました(ピアノ:石川咲子先生)

「グループレッスンが大好きでした」という森田啓佑さんは、バッハの無伴奏チェロ組曲第6番の1曲目を演奏

スズキ時代から大好きだった思い出の曲というショパンの「序奏と華麗なポロネーズ」を演奏した加藤文枝さん

大好きなシューマンの「幻想小曲集」を演奏した黒川実咲さん。この先もずっとチェロとともに歩まれるとのこと

29名のOB・OGが出演したチェロアンサンブル版のバッハ「シャコンヌ」。チェロ科第1号の生徒、斎田 出さんがコンサートマスターを務められました


 

思い出に残る第54回グランドコンサート!

 

 鈴木鎮一生誕120周年記念「第54回 スズキ・メソード グランドコンサート」を2018年4月4日(水)、両国国技館(東京)で開催しました。前回の2011年の開催が東日本大震災で中止を余儀なくされたため、コンサートは実に9年ぶりの開催となりました。当日は快晴の天気のもと、国内から約2,000名が集まり、オーストラリア、台湾、韓国、キプロス、シンガポールからも約40名が参加されました。プログラム後半には天皇、皇后両陛下と高円宮妃久子殿下がご臨席され、フィナーレの約2,000名による「キラキラ星変奏曲」などをご覧になり、温かい拍手を送っていらっしゃいました。両陛下には、皇太子ご夫妻時代から何度もご覧いただいているグランドコンサートですが、いつもは大相撲を観戦されるお席での久しぶりのコンサートでの子どもたちが一生懸命に演奏する様子に、身を乗り出されてご覧になられる姿が、大変印象的でした。
 
 プログラムの後半では、 宮田大さんが、スポットライトを浴びる中、特別演奏として、チェロ奏者の大切なレパートリーでもあるブルッフの「コル・ニドライ」(ピアノ:石川咲子先生)を披露されました。大さんの織りなす音楽は、大きな感動をもたらす力にあふれたものでした。まるで、音符の一つひとつに練り上げられた職人の技を垣間見せるかのよう。前半の「祈り」のイメージ、後半の生命力にあふれた「生きる歓び」を体現された演奏は、宮田大さんの「今」を伝えていました。この先、未来にわたり、どこまでこの卓越した音楽性を私たちは楽しむことができるのだろうかと、同時代に生きている幸せを感じさせたほどです。

2011年4月1日 山田慶一先生が、指導者に認定され、北海道・東北地区に教室を開いた。
2012年7月28日 第24回チェロ全国大会を札幌市民ホールで開催。
2012年9月7日、9日 「サイトウ・キネン・フェスティバル(SKF)松本20周年記念スペシャル・コンサート」にヴァイオリン科の生徒とともにチェロ科の生徒たちが出演。
2012年12月13日 チェロ科の振興に力を注がれ、また才能教育研究会の理事・常務理事としても永年にわたって力を奮われた東海地区チェロ科指導者の久保田顕先生が亡くなられた。59歳だった。
2013年4月1日 山田(現在 塚尾)桃子先生が、指導者に認定され、関西地区に教室を開いた。
2013年8月1日 安田心裕先生が、指導者に認定され、関東地区に教室を開いた。
2014年4月1日 山田(現在 名越)菜々子先生が、指導者に認定され、関東地区に教室を開いた。
2014年 第68回全日本学生音楽コンクールチェロ部門高校の部で佐藤明先生クラス出身の森田啓佑さん(桐朋女子高等学校音楽科2年)が第1位を受賞。
2014年10月29日 第83回日本音楽コンクールチェロ部門で佐藤明先生クラス出身の森田啓佑さん(桐朋女子高等学校音楽科2年)が第1位と岩谷賞(聴衆賞)を受賞。
2014年11月25日 チェロ科創設60周年記念公式サイトがスタートした。
2015年3月27日 チェロ科創設60周年記念第25回チェロ全国大会を文京シビックホール大ホールで開催。
2015年8月30日 第13回東京音楽コンクール弦楽部門で河地正美先生クラス出身の水野優也さん(桐朋女子高等学校音楽科3年)が第1位および聴衆賞を受賞。
2015年9月1日 鈴木佳都紗先生が、准指導者に認定され、関東地区に教室を開いた。
2015年 第69回全日本学生音楽コンクールチェロ部門大学の部で故久保田顕先生クラス出身の香月麗さん(桐朋学園大学ソリスト・ディプロマ・コース1年)が第1位を受賞。
2016年12月6日 第70回全日本学生音楽コンクール全国大会・チェロ部門大学の部で、宮田豊先生クラス出身の佐山裕樹さん(桐朋学園大学2年)が第1位を受賞。
2016年12月15日 スズキ・メソード チェロ科公式サイトスタート
2017年10月24日 第86回日本音楽コンクールチェロ部門で故久保田顕先生クラス出身の香月麗さん(桐朋学園大学ソリスト・ディプロマ・コース3年)が第1位と徳永賞(聴衆賞)とE・ナカミチ賞を受賞。
2018年4月4日 9年ぶりに開催された第54回スズキ・メソードグランドコンサート。天皇・皇后両陛下(現上皇・上皇后両陛下)と高円宮久子妃殿下のご臨席を賜った両国国技館。チェロ科出身の宮田大さんのソロ演奏も披露された。
2019年11月28日〜29日 チェロ科研究会において、2020年4月からのチェロ科特別講師の布陣を決定。