第72回中信美術展「才能教育研究会賞」は、彫刻部門 作品名「叡知の像」
エクセラン高校3年生の宮田紗花さんが受賞しました。
「やや下を向き右手の指先を頬にわずかに当てたポースが美しい。半跏思惟像の代表作である広隆寺弥勒菩薩像を連想させる。指先の細かな動きまで粘り強く取り組み、注意と根気のいる石膏取りに挑戦した姿勢を高く評価します」
第72回中信美術展の「才能教育研究会賞」はエクセラン高校3年生、宮田紗花(すずか)さんの彫刻「叡知(えいち)の像」が受賞しました。エクセラン高校は毎年、夏期学校のお教室会場としてもお世話になっており、夏期学校に参加された方にはおなじみの学校ですね。今回の中信美術展では、同校の3年生西村茉亜細子さんの「スーべニール」も洋画部門で中信美術会賞を受賞しました。
新春1月5日に行なわれた受賞式の席上では、彫刻部門の審査委員長を務めた山崎亨先生から冒頭の最大限の賛辞が贈られました。本来、胸像制作はたいへん難しいそうで、「清楚な好感の持てる作品となった。引き続き真摯に対象に向き合う勉強を期待したい」というコメントは、まさに才能教育研究会の賞にふさわしいご講評でした。
信州松本平の美術文化を担う中信美術会と才能教育研究会(スズキ・メソード)の縁は深いものがあります。第二次大戦終戦直後の混乱の中で、東京美術学校(現東京藝術大学)を経てフランスで美術の修業をし、故郷に戻られた松本出身の宮坂勝先生(1895~1953)と、中央画壇で活躍するも戦時中の疎開先として松本郊外の浅間温泉に身を寄せ、終戦後も当地に留まり、信州美術会の戦後復興に尽力された石井柏亭画伯(1982~1958)が中心となり、1948年に中信美術会が誕生しました。この年は鈴木鎮一先生が終戦直後の松本で始めた「全国幼児教育同志会」を「才能教育研究会」と改称し、活動を本格化させた年にあたります。
また、当時の松本には、母の実家に疎開していた20代のいわさきちひろや、京都から自身の実家に戻り、絵画制作に没頭していた成人前の草間彌生など、後に絵本や現代美術で巨大な足跡を築いていく若き才能が熱い思いを抱いて生活していました。
今回受賞の宮田さんの作品(左の写真)は中信美術会、才能教育研究会が発足した 72 年前の当時の松本市民の熱き想いを静かに回想しているようでもあり、また今後も両団体が松本を拠点に堅く手をとりあって発展していく遠い将来に想いを馳せているようでもあります。
宮田 紗花 さん、素晴らしい作品をありがとうございました。受賞、誠におめでとうございます! また、今年も素晴らしい若者の作品に本会の賞を授けていただいた中信美術会の皆様にも深く感謝申し上げます。