東京大学との共同研究第2弾を英国の老舗脳科学雑誌「Cerebral Cortex」で発表!
音楽の有効な習得方法を脳科学で実証
ー練習方法の違いにより左脳と右脳の活動が変化ー
2025年3月27日(金)、才能教育研究会東京事務所のある品川のオフィスビルで記者会見を実施。早野龍五理事長と東京大学の酒井邦嘉先生、さらには第2弾の調査の発案段階からご参加いただいている東 誠三会長にもご臨席いただき、音源の選定をはじめ、この研究の意義などについて、お話しいただきました。
その後、4月2日(水)の日本時間午前9時に英国で歴史のある脳科学の学術誌「Cerebral Cortex(大脳皮質)」に論文が正式に掲載されたことを受け、マンスリースズキでもその詳細を発表することができるようになりました。大変お待たせをいたしました。
東京大学からもプレスリリースが発表されました。下のPRESS RELEASESをクリックするとご覧いただけます。
そして、論文そのものは、下記のサイトからオープンアクセスしてお読みいただくことができます。全編英語ですが、がんばってトライしてみてください。
この共同研究そのものは、2016年後半からスタートしました。足掛け10年に及ばんとする月日の間、マンスリースズキでは折に触れて、研究の動きや周辺の話題を紹介してきました。コロナ禍も途中にあり、思いの外、時間が経過していますが、着実に成果を挙げていることが、それぞれの記事からわかるでしょう。
その意味で、今回も大きな成果を得て、発表にこぎつけたことを嬉しく思います。
→2017/1/1 共同研究、狙いと意義
→2017/2/1 共同研究スタート記者会見&毎日メディアカフェで対談
→2017/3/1 共同研究音源作り
→2017/10/1 共同研究、続報
→2017/10/12 毎日メディアカフェ鼎談記事
→2018/7/1 脳科学の専門誌に相次いで登場
→2019/6/1 酒井邦嘉先生の新刊書
→2020/6/1 東大との共同研究、第2段階へ
→2022/1/1 東大との共同研究、第1弾論文を発表
→2023/11/1 酒井邦嘉先生のWEB記事〜君たちはAI時代をどう生きるか
→2024/11/1 酒井邦嘉先生の新刊書
→2025/1/1 東大との共同研究、第3段階へ
→2025/4/1 東大との共同研究、第2弾論文を発表
発見のポイント
・中級者が新しくピアノの曲を始める短期的な(1週間程度の)練習において、スズキ・メソードの特徴的な方法である音源を聴くことから入るほうが、楽譜を読むことから入るよりも、その曲が正確に把握できること、そして楽譜を使って練習することで生まれる負荷については、右脳が活動を補助することを発見しました。
・ピアノ以外の楽器も長期的に(少なくとも1年以上)練習した経験があるほうが、ピアノだけを練習している場合よりもその曲が把握しやすくなり、言語野を含む左脳が有効に活用されるようになることが、今回初めて実証されました。
・文字ではなく音から入る自然な母語習得のプロセスを楽器演奏習得に応用した「スズキ・メソード」の有効性が、脳科学によってさらに明らかとなりました。2021年12月に発表した第1弾の結果とともに、さらにスズキ・メソードの有効性の証明を前進させるものになったと言えます。
以下の群を対象に
中級程度のピアノ経験のある中高生・大学生・社会人の計38人を対象にしました。
①Multi群 ピアノ以外の楽器習得経験が1年以上ある19人(スズキ・メソードの生徒は11人)
②Mono群 ピアノのみの経験者19人(スズキ・メソードの生徒は12人)
このうち、①と②の中のスズキ・メソードの生徒23人をSuzuki群と命名しました。
これらの群には長期的な楽器習得経験の違いがあります。なお、それぞれの年齢、楽器習得の開始年齢、経験年数およびピアノ練習の積算時間は、群間で統計的な差がありませんでした。
音源として用いたのは、ピアノ独奏による録音データ
→いずれも参加者が初めて聴く楽曲を用意し、学んだ楽曲に対して不自然なところがあったかどうかをfMRIで定量的に測定します。
①J. S. バッハ:メヌエット(イ短調)
②J. クラーク:マルシア(ニ長調)
③G. ベーム:メヌエット(ト長調)
④L. モーツァルト(異説あり):アントレ(イ短調)
の4曲です。いずれも参加者が初めて聴く曲。
・調査開始の1週間前からトレーニングを行ない、最初の5日間は、2曲についてそれぞれ毎日5回ずつ繰り返して音源CDを聴く(Listen条件)。
・ほかの2曲は、音源を聴かずに毎日同様の時間だけ楽譜を読む(Read条件)(図1A)。
これが短期的な音楽練習の違いです。これら2曲のセットは、参加者の半数で条件を入れ替えてあります。トレーニング最後の2日間(6日目と7日目)は、4曲とも楽譜を見ながら実際にピアノで弾いてみることで、楽譜を見ながら音を出す練習を行ないました。これにより、最初の5日間に頭の中に入った楽曲を確認する作業になります。
トレーニング終了の翌日に、fMRI装置内で音楽判断課題を実施しました。各試行では参加者に曲の一節の音源(半分はトレーニングの音源と異なる奏者によるもの)を18秒間提示して(図1B)、不自然な箇所(曲中の1‐2小節を入れ替えたもの、図1C)があったかどうかを判断させ、ボタン押しで回答させました。
不自然な箇所の前後では音楽の流れ自体は自然に聴こえますが、楽曲の文脈(Context)の中で自然な構造になっているかを判断させました。これがContext条件。また、同一曲で音源定位(Direction)の変化(左右の強弱が入れ替わる変化)があったかどうかを判断させ(Direction条件)、これを対照条件として対比しました。
したがって条件の差になるものは、音源だけを聴いたのか、楽譜だけを読んだのかになり、fMRIの装置の中で、不自然か自然かをボタン押しで答える形になります。
調査の結果
その結果、課題の正答率を応答時間で割った指標は、ピアノのみの経験があるMono群よりも複数楽器の習得経験があるMulti群のほうが大きく、またどちらの群でもListen条件のほうがRead条件より大きくなり、その曲が把握しやすくなることが分かりました(図2左)。
それにより、複数の楽器を経験するという質的な違いがこのような違いとして長期的効果を産んだと解釈できます。つまり長く音楽に接するという時間だけで、この長期的効果が生まれたのではなく、楽器を複数経験するということが実はメリットがあるということを証明したことになります。
すなわち、Multi群とMono群の群間差は、複数の楽器について合算した総練習時間という単純な量的指標では説明できず、長期的な(少なくとも1年以上の)音楽経験という質的な効果だと考えられます。
後者の結果は、短期的な(1週間程度の)音楽経験の効果です。このListen条件の優位性は、Suzuki群で顕著でした(図2右)。Suzuki群以外の参加者ではこの優位性が見られなかったので、単に課題で音声を用いたことが、Listen条件で有利に働いたわけではありません。
Listen条件で言語野の活動上昇。Read条件で右脳の活動上昇
Suzuki群はRead条件でも言語野を活用
脳活動が示す群間の違いを表した図です。
音楽判断課題のContext条件で高い活動が見られた脳領域(赤)を示します。各図は左右の脳の外側面です(L: 左)。Listen条件(A図)とRead条件(B図)のそれぞれで、対照条件(Direction)と比較した結果を、Multi群とMono群に分けて示しました。また、Listen条件よりもRead条件のトレーニング効果が顕著に表れたのは、両群で右脳の前頭葉と側頭葉の一部ですが(C図)、Suzuki群に限ると左脳の言語野も含まれることが分かります(D図)。
成績が高い人ほど、右聴覚野の活動を節約
社会的な意義
音楽などの情操教育が注目を集める中、短期的な音楽練習や長期的な楽器習得経験の違いが初めて脳科学で明らかになりました。
中級者にとって音源をよく聴くほうが楽譜を読むことよりも効果的であるという今回の結果は、文字ではなく音から入る母語の獲得とよく類似しています。
すると語学においても、実は母語話者の音声を聴くほうが文章を読むよりも効果的だと考えられます。たとえば英語の習得について今回と同様に調査を行なえば、同様の結果が得られると予想されます。
また、複数の楽器を経験することが効果的であり、音源を聴くこととの相乗効果(Multi群のListen条件)が左脳の言語野に現れたという新たな知見は、多言語を音声で経験することの重要性と整合します。
実際、昨年の成果発表「多言語話者になるための脳科学的条件―新たな言語の文法習得を司る脳部位を特定」で得られた着想が今回の分析に貢献しました。
日本の義務教育では音楽が必修科目となっていますが、言語能力との関連はほとんど考慮されていません。また、音楽における創造的な力についても、学習指導要領には「創意工夫を生かした音楽表現をするために必要な技能とは、創意工夫の過程でもった音楽表現に対する思いや意図に応じて、その思いや意図を音楽で表現する際に自ら活用できる技能のことである」(文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 音楽編」p.14)という抽象的な説明にとどまっています。
言語野や聴覚野が音楽における高次の判断に関わるという本研究の成果は、国語や英語と同時に音楽を習得すること、ひいては語学教育と情操教育の相乗効果を一層明確に示しており、現在の学校教育に一石を投じるものです。
これからも、東京大学の酒井研究室では人間の脳から言語や芸術における創造性のメカニズムを解明し、才能教育研究会は音楽教育の実践的な活動を通して、世界の人たちとの豊かな交流の実現に貢献していきます。
東 誠三会長からのメッセージ
今回は、ピアノ曲の学習過程が調査対象に選ばれました。楽曲には、音に意味が与えられています。右手は旋律(メロディ)を担当し、左はそれを補うリズムやハーモニーを担当することが多いですが、今回はそういう曲はあえて選ばず、右のパートも左のパートも同等の意味を持った、音の動きをしている曲を選んでいます。私自身、奏者としても長い年月を過ごしていますが、一つの曲を習得していくプロセスそのものは、ピアニストとしても学生に指導する立場からも、長年にわたり大変興味のあるテーマです。私自身、「感覚的に捉えた実感」というものがこれまでに集積されている中で、このようなことが法則として、理論として可能ではないかというのがありましたが、今回の調査により、その中の一部が明らかになったことになります。
音楽には音の高低があります。言語で言えばイントネーションです。生来、どの民族でもそのイントネーションでコミュニケーションを行なってきています。この部分と音楽のピッチ(高低)を聴き分ける能力は、言語を使うことで育っている、そして育っていくのではないか。それに気づかれたスズキ・メソードの創立者、鈴木鎮一が音楽の習得に役立つよう体系化し、発展させたのがスズキ・メソードの一部分です。
長年疑問に思っていたことが、こういう形で証明され、確かなものになってきたことを感じています。私は、音楽の専門家ではありますが、サイエンスは専門ではありません。この3年ほど関わらせていただき、今回の研究に関しては、企画立案の段階から、酒井邦嘉先生のお力を借りて関わってきました。ようやく理解が深まってきたところです。
続いて、オンラインで参加の科学部系の新聞記者の皆様から質問があり、それに答える形で進行されました。
記者会見での質問
記者からの質問①:音楽の不自然さについて、どのくらい気づかれるかを今回調査されていますが、この課題を選んだ理由についてお尋ねします。音楽の文脈を理解する能力と、実際に演奏する能力とは別なのか、あるいはどのくらい相関があるものなのでしょうか。
酒井邦嘉先生:今回は、どのくらい演奏できるようになったのかまでは見ていません。間違えずに弾いたとか、抑揚はどうか、音楽的かどうかなど複雑な要素について、1週間の調査だけで上手くなるかどうかというのは馴染みません。今回はその曲を頭の中でどのくらい正確に再現できるか、小節が入れ替わった時に「あれ?」と違和感を持つかどうか、最低限の入口のところを1週間のトレーニングの直後に調べる、という課題設定をしました。そして、単なる記憶課題でもなく、曲の流れを文脈として正しいかどうかをチェックしたわけです。実際の結果を見ますと、みんな満点をとっているわけではありません。Listen条件とRead条件で明らかな差が出るくらいの難易度の調査課題になっています。
記者からの質問②:今回の成果を利用して、英語などの語学教育に活用していくといった予定はありますか。
酒井邦嘉先生:実は今までもやっていまして、1年前に発表した多言語の調査では音声だけカザフ語で聞かせて、完全にその文法的な項目まで習得できる、しかも大人でもできるという報告をしております。我々酒井研究室がやっていますので、そういう音からという問題意識を受けて今回の調査があり、直接的な対比は今後様々な形で、多言語などの研究でも生かせると考えております。
記者からの質問③:今回はピアノの中級者ということで、ある程度ピアノに触れている人を対象にされましたが、初学者や逆に上級者の場合などでは、そうした違いは現れるのでしょうか?
東 誠三会長:初学者それから上級者においては、この働きはおそらく差が出ると思います。ですが、音楽の世界では聴覚で何を捉えるかということを先行させるべきだと私は思っています。音には、いろいろな情報が含まれています。人間は無意識に音楽の流れに応じたそのメロディラインや和音など、いろいろな情報を受け取っています。初学者のうちから聴くことで自然に発達させることができます。一方、上級者になれば、聴くことで演奏者が何を表現したいのか推測することができます。
酒井邦嘉先生:科学的な側面から補足しますと、もしこれがご質問のように、本当に初心者だったらどうなるかというと、まず数回聴いたり楽譜を見たりして練習を1週間しても頭に入りません。上級者で音楽のプロがこの課題をやったとすると1週間の練習なしでいきなり図1のBとCを聴いてもBの方が音楽的であり、Cは構成上の違和感を感じて練習しなくてもできるようになってしまいます。ということで、1週間の練習が生きるような、この調査のデザインから見ると、中級者をターゲットにするのがベストと判断しました。
記者からの質問④:課題に参加している方々は、1週間後に正しいか間違ってるかを判断する課題を行なうということを理解されて臨まれているのでしょうか。
酒井邦嘉先生:そこまで詳しい情報は与えていません。聴いてるときにはただ聴くだけですし、無理をして何かその記憶させるとか、間違い探しをするのでしっかり頭に焼き付けなければいけないなど、不自然な課題設定はしていません。中級のピアノの生徒さんに、通常のレッスンや練習の向き合い方と同じような方法で入ってもらい、いきなりあの先ほどのような課題を受けていただく形です。最初から暗記中心の追い込んだ調査ではなく、できるだけ自然なレッスンや練習の状況を再現したとご理解いただければと思います。
記者からの質問⑤:複数の楽器をされることでより高い結果が出るとのことでしたが、言語の習得でも、他の言語を並行して学ぶ場合、音から入っていくことは効果があるとお考えですか。
酒井邦嘉先生:まさにそれがその1年前に発表した多言語の研究でした。英語に専念すべきだという意見に対して、英語やスペイン語、ロシア語、韓国語なども同時に入れることによって相乗効果があるということをすでに証明しています。そうした複数の言語を同時に習得することのメリットが私の頭にありましたので、今回その複数の楽器を習得するMulti群を作るアイデアに繋がりました。
早野龍五理事長:実は、酒井先生もマルチに楽器を演奏されますね?
酒井邦嘉先生:はい、ヴァイオリン、ヴィオラを弾いてきて、12年前からフルートを、先月からクラリネットを始めたところです。自分の脳を使って、研究しているところです(笑)。
早野龍五理事長:今日は会見にご参加いただき、ありがとうございました。
酒井邦嘉先生にインタビュー
マンスリースズキ編集部では、4月1日(火)夜に改めて酒井邦嘉先生からお話を伺うことができました。この日は、英国での論文発表における報道制限時間が、日本時間で4月2日の17時から前倒しになり、朝9時からに変更になったとの情報をいただいた直後でした。
■今回、東誠三会長にも参加していただきましたね。
はい、そうなんです。実は、第1弾の調査についての論文が発表された直後の全国指導者研究会で講演をした際に、聞いていてくださった東先生から、舞台袖で「次の調査について提案があります」とお話をいただいたくらいでした。ですので、アイデア段階から、とても有効なヒントをいただきました。
記者会見でも東先生にお話にありましたように、先生ご自身の日頃の直感とか長年の経験値からいろいろなアイデアが生まれました。たとえば、1週間という期間の設定です。2週間でもなく1ヵ月でもなく、1週間が適切だろうと。それで見事に検証されたことで、我々もびっくりしたのですが、共同研究でなければできなかった結果だったと思います。
■調査の目的を参加された皆様には事前にお話しされるのですか?
調査はやはりバイアスがかかるといけないと思っています。ですので意図的な部分や誘導的な部分は、まったくありません。スズキ・メソードだからと気にされた方も一人もありませんでした。そして、論文にも書きましたが、音源を聴く時間と楽譜を見る時間は等しく同じ時間にするよう、参加の皆さんにお願いしました。ですので、調査の条件間に偏りがありません。
■選曲のラインナップが、ユニークでした。
記者会見ではお話ししませんでしたが、スズキの生徒さん4人にまったくトレーニングなしでこの調査をしてもらったこともありました。6割が正解という結果でした。聴いた時に、その不自然さが不自然だとわからないというくらい、なかなかいい課題になっていたことを意味していますし、たとえ1週間でも学習効果が十分にある、ということもわかりました。
■酒井先生ご自身が、最近はクラリネットも始めたとのことで、複数楽器をこなされていますが、今回の調査項目に複数楽器についても研究されたことが印象的です。
多言語の研究をずっとやってきていたことが大きなヒントになりましたね。多言語の人たちの方が日本語や英語しか話さない人よりもパフォーマンスが非常に高いんです。新しい言葉に対して耳で聞いてその特徴を捉える部分も優れています。今回は、このMulti群を設定するというアイデアがあって、明快な結果を得ることができたように思います。
複数の楽器を演奏する人は、頭の中で鳴らした時に曲の構造の把握がしやすいということもあります。このあたり、それぞれの関係性を見たりすることで、さらに深掘りすることもできるかもしれません。
■そういえば、鈴木鎮一先生は、バッハのドッペルの第1楽章の公開レッスンで、手を叩かれると子どもたちが第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンを見事にチェンジするというパフォーマンスを好んでされていました。しばらくして、また手を叩かれると、子どもたちはもとのパートに戻ります。スコアを見ているわけではなく、暗譜の状態で、そのパフォーマンスは驚き以外の何ものでもありませんでした。
すごいですね。暗譜の状態で、それができるのはすごい。頭の中でポリフォニーが完全にならせているということでしょう。ぜひその映像を今度見せてください。
今、我々がやっている新しい調査が実はそれとよく似ていて、モンゴル語を含めた実験を始めたところです。
先日も高校生に話を聞いていたら、メキシコ留学に10ヵ月行っている間に、まったく英語を使うことがなく、しかもスペイン語を一から始めたにも関わらず、帰国したら、自分でも驚くほど英語が喋れるようになっていたというのです。きっと、スペイン語を話せるように努力していた間に、英語も臆せず話せるようになったのでしょう。細かい単語の一つひとつよりも、より大きな文脈(フレージング)の理解を得られたことで、他の言語にも良い効果が波及したのだと思います。
おそらく、言語も楽器演奏も同じで、このフレージングという一番核心にある形を成してる部分はまったく変わらないので、二つ三つの言語でちゃんと把握できると、自分が喋るときに、それが音楽で表現できるように、言葉でもちゃんと形を成して喋れるようになるのだと思います。それができると、不思議なくらいスルスルと繋がってきます。
グレン・グールドが演奏した録音を聴くと、ときどきバッハの旋律とはまったく異なる旋律を同時に鼻歌で歌っていました。ジャズの即興性に通じる部分ですが、それがクラシックの世界でもできるところがグールドのすごいところです。
■これからの予定をお願いします。
マンスリースズキの1月号でも取り上げていただきました第3弾の研究がスタートしていますし、6月の全国指導者研究会では、東先生との対談時間を設けてくださると、先ほど東先生からご連絡をいただいたところです。いろいろな形で、これからも共同研究の成果を積み重ねてゆきたいと考えております。どうぞよろしくお願いします。