2013年の世界大会開催に合わせて、スズキ・メソードの機関誌でも1年間の連載をされたことのある絵本作家のいせひでこさんが、最新作「見えない蝶をさがして」を上梓されました。小林一茶のことにも造詣の深い宮坂静生さんが主宰される月刊俳句誌「岳(たけ)」に、2009年〜18年にかけて表紙絵として掲載された、いせさんの絵に呼応する形で、いせさん自身の掌編・エッセイ・言葉を添えられたのがこの絵本です。スズキ・メソードの機関誌182号に寄稿いただいた、いせさんの文章もこの絵本に掲載されています。特に、2011年の「3.11」以降の作品には、自然やいのちに対する、より深い慈しみやまなざしが感じられます。
 ぜひ手にとってご覧ください。
→平凡社のサイト

 いせひでこさんから、マンスリースズキのために特別にメッセージをいただきました。

平凡社 定価:本体1,600円(税別)ひとつの旅の終わりは、一冊の絵本か 一枚のタブローになる。
ひとつ描き終えるとまた次の旅に出る。
旅も絵本も、スケッチしたモチーフでつながっていく。
そして、俳句ともつながっていった。

旅する絵描きは、「ルリユールおじさん」「チェロの木」
「大きな木のような人」など絵本制作をしながら、
この10年間、俳句誌の表紙も描いていた。

自ら詠む素養はなかったが、
「絵本のような表紙絵でいいのですよ」という、
俳句結社「岳」の宮坂静生主宰の言葉に励まされ、
10年つづけて来られた。
宮坂静生氏は松本在住だから、スズキ・メソードの
方々はよくご存知だと思う。
2011年の才能教育の機関誌の「一茶を語る」インタビュー
記事を、記憶されているかもしれない。
2013年の世界大会の時は、キッセイホールで、
氏の「一茶の俳句」の講座を、私も聴講した。

その「岳」の19枚の表紙絵を眺め直して見た。
切り株の上の見えない木にも、むき出しの根っこにも、
乳母車のなかの赤ん坊にも、蝶の越冬の旅にも、物語は満ちていた。
3.11以降の被災地やフランスで描いたスケッチも加え、
季節やモチーフをつなげ、20の短文を添えていくと、
どの絵にも、ピアニッシモの音楽と、
ちいさな いのちが讃えられているように思えた。

詩画集でもない、絵本でもない、けれど不思議とあたたかい時間が
流れている本が生まれた。
親子で手に取っていただけたら、うれしいです。

「見えない蝶をさがしてーいせひでこと森のおうちの20年 絵本原画展」
2018年7月6日(金)〜10月2日(火)
長野県安曇野市穂高有明2215-9

 今夏、安曇野の「絵本美術館 森のおうち」で、原画展が3ヵ月にわたって開かれます。「見えない蝶をさがして」に掲載された作品の原画は、キャンバス・透明水彩から紙、鉛筆まで、またサイズも多様です。本とは、一味もふた味も異なる、原画の世界を楽しんでいただけることでしょう。いせさんは、原画展に向け、新作も創作中です。同時に「絵描き」の原画も展示されます。夏期学校で松本にいらした時に、安曇野まで足を運んでみませんか?
→絵本美術館 森のおうち