「科学的」は武器になる〜世界を生き抜くための思考法
あらためて、目次を紐解いてみましょう。
はじめに 科学という羅針盤
第1章 世界への扉
第2章 「自分でやる」を叶える土台
第3章 人がやらないことを見つける
第4章 枠の外からエサを狙う生き方
第5章 社会のための科学者
第6章 科学者の「仕事」
おわりに ぶれない軸で世界を歩め
文庫化にあたって
この目次も、微妙に変化しています。「はじめに」で、著者の「科学者」としての姿勢を知ることができます。その語り口は、様々な場面で伺うことのできる早野会長のメッセージ同様に明解で、興味深い内容です。
・科学はすぐには役立たないけれど、誰かが役に立つ何かを生み出す基礎になるかもしれないこと。
・科学者として、アマチュアの心でプロの仕事をすることをモットーにしていること。
・スズキ・メソードも糸井重里さんの「ほぼ日」も、共通して創業者がカリスマ的存在感をもった組織であること。その中で、スズキ・メソードでは会長として、「ほぼ日」ではフェローとして、「科学者」からの視点で気になることをどんどん発言していること。
・いかなる場合も「楽しそうにやる」こと。
・「科学的に考えること」は、ものごとの基本に立ち返り、行くべき道を照らす羅針盤になること。
などが綴られています。
続く本編では、それぞれの土地での出来事がエピソード豊かに明らかにされます。どの時代も、どの地でもその場の状況をいち早く把握され、節目節目の才気あふれる人々との出会いを通して、ぶれない生き方の源泉を大切にされてこられた姿を垣間見ることができます。
「おわりに」で、「科学」を狭い意味ではなく、「あらゆる知の営み」ととらえ、誰かがバトンを受け取る限り、未来につながっていくものであることを伝えています。より良い未来のために、残りの人生を後へ続く人々にチャンスと刺激を与えるためにも、この一冊がその試みの一つであることもわかります。
新たに加筆された「文庫化にあたって」では、国際物理オリンピックの出題委員長として獅子奮迅のご活躍をされたことが書かれてあり、大変興味深い内容になっています。大学入試の問題よりもはるかに高い知見を必要とする国際物理オリンピックのレベルの一端を垣間見る思いがするでしょう。
260ページに及ぶ内容は、示唆に富み、未来への希望を感じさせるでしょう。年を重ねて来られた方には、自分の人生を振り返るチャンスにもなるでしょうし、若い読者は、自らを発奮させる力を得る思いで、読み終えることでしょう。子育て世代の保護者のアンテナ感度をさらに増すきっかけになるかもしれません。
→アマゾン
※アマゾンのサイトでは、サンプルページを読むことができます。