夏期学校に、プロのピアニストがヴァイオリンで参加!
夏期学校には、さまざまな背景を持った方々がたくさん参加されます。ここで紹介する長島佑季さんもその一人。本業はジャズやポップスを演奏するピアニストで、ビッグバンドの経験も豊富。宇都宮でジャズオーケストラの講師もされている長島さんが、幼少の頃に習っていたヴァイオリンを40年ぶりに再スタート。夏期学校期間中、毎日楽しそうに、そして真剣に学ぶ姿が見られました。さっそくプログラムの合間の時間に、長島さんと恩師の阿久津雅志先生にお話を伺いました。
阿久津先生 佑季さんは、宇都宮の教室で3歳から5歳までヴァイオリンを習っていました。お母さんがスズキのピアノ科の長島美津子先生でしたので、ピアノも習っていました。ただ、血液の難病にかかられて、体調を悪くされて、ヴァイオリンを諦めたんですね。
長島さん ピアノとヴァイオリンのどちらかを選ぼうということになって、ヴァイオリンをやめました。家で学べるピアノの方が体には楽だったからです。高校からは地元の音楽科へ。基本はクラシック。ジャズ好きの父の影響を受けて、ジャズ・ポップスなんでも弾きます。
母親の美津子先生と鈴木先生(1989年5月3日)
昨年9月に高校の頃からお世話になったビッグバンドのマネージャーが亡くなられました。あの頃のステージに立ちたいと思い、そのビッグバンドに戻った時に思ったことは、ずっと思っていた「ヴァイオリンをやりたい」という強い気持ちでした。それで阿久津先生、どうされているかなと思ってネットで検索してみたら、やってる! しかもその日は宇都宮の教室で教えていらっしゃる、とわかって、すぐに訪問したんです。前の生徒さんが出てきたところに、「先生! こんにちは」。なんと5歳以来、40年ぶりの再会でした。驚いたことに先生もすぐに思い出してくださったんです。
阿久津先生 びっくりしましたよ。けれどとても嬉しかった。3歳で「ブーレ」を弾いていた子だから、専門家の道を進んでもおかしくなかったんです。でも体調を悪くされて。
長島さん 当時の発表会の写真があります。3歳の時ですから初めての発表会です。ロングドレスを着ていました。先生も24歳くらい。集合写真では、しっかりと先生の隣の位置にいました。
阿久津先生 佑季さんは、ピアノ科の指導者にもなってみたいという希望をお持ちです。ですから、この場でいろいろと感じてほしいし、何よりもこの夏期学校は素敵な機会になっています。
長島さん スズキの「耳から覚える」システムって、やはりすごいと思います。小さい時に聴いたことがいまだに身についています。実は、スズキのCDを今、ずっと聴いているんです。
阿久津先生 彼女の車に乗せてもらうと、指導曲集の1巻からずっと聴けるんです(笑)。ある時、誘われて、ジャズの世界を少し覗き込んでみたのですが、譜面からはできませんね。感性を育てるスズキでの育ちを持っていないと、なかなかできないなと感じました。普通に音符をなぞってきただけではダメです。
長島さん やはり、ピアノでずっと聴いて弾いてきたことが大きいです。それが身についていますね。指導曲集の楽譜を改めて見直すと、すごいなと思います。他の教則本にはないラインナップですし、なぜこの曲が入っているのか、なるほどという理由がだんだんわかるようになりました。一つ前の曲の要素がきちんと次の曲に入っています。本当に素晴らしいです。それに、ベーシックなことが「型」になるように工夫されています。部分練習で「取り出し」することで、「型」を習得するのは、家庭教師をしてきた経験で言うと、語学などと同じだなと感じています。
それに、阿久津先生のレッスンはとても楽しいんです。ビッグバンドを経験していると、ビッグバンドを習いにきた生徒さんの個性に合わせて、この楽器が向いているとわかります。この子はヴァイオリンに向いていると思った子を阿久津先生に紹介しましたね。すでに4人ほどになります。
阿久津先生 性格を読み取っていますね。すごい観察力ですよ。
阿久津先生 大人だけで来た人は、パーティでもあるといいね(笑)。佑季さんはピアノをやっているし、絶対音感があるので、「ツィゴイネルワイゼン」でも弾いちゃう。まともにヴァイオリンを弾ければ、アンサンブルの要素はしっかりできているので、これからグンとのびるでしょう。
長島さん 宇都宮で、FMコミュニティ「ミヤラジ」で「音楽の時間」のパーソナリティを担当しています。放送時間は、月に一度、第2日曜日の午後8時〜10時までです。実は毎回、ヴァイオリンを1曲弾くコーナーがあって、「メヌエット」を先生と私がそれぞれ弾いて、弾き比べをしたことがありました。ピアノで仕事をしていますが、ヴァイオリンは超初心者ですから、そこがリスナーには面白いのだと思います。最近は「音が良くなってきたね」という固定ファンがでてきたほどです。
阿久津先生 そこまでヴァイオリンのことを案内をし、実際に演奏するとなると、彼女もヴァイオリンをやらざるを得ないわけです。そこまで追い込んでやっている。彼女でなければできないことです。
夢は膨らむんですね。二人の企画として、幼稚園の課外授業から始めて、大学までの一貫教育にスズキ・メソードの要素を入れられないかと考えています。小学校で弦楽器のアンサンブルをやって、中学校でオーケストラをやる。鹿沼市の中学校には2校にオーケストラがあります。ところが県の中心である宇都宮になぜないのか、二人で考えているところです。
長島さん ヴァイオリンを弾きたい、やりたいという人が多いのに、必ず聞かれるのが「楽器が高いでしょう」という質問。「そんなことないよ」と答えています。
阿久津先生 やはり目的は、スズキ・メソードを次の世代につなげていきたいんですね。不登校の生徒さんにヴァイオリンを教えることも考えています。
長島さん 私のインスタでもヴァイオリンを弾いてみたいという思いで繋がる子がいます。ヴァイオリンの輪を広げたいですね。障害児の方もヴァイオリンを続けている子がいます。
阿久津先生 おそらく鈴木先生がそうだったっと思うんです。テクニックではないところ、です。人間を育てる部分。鈴木先生の理念を忘れてほしくないですからね。僕が実際にレッスンを受けた最後くらいの年代。なんとか打開したいなと。
長島さん いろいろな方が私の存在を知って、音楽っていいなぁと思ってほしいです。
阿久津先生 血液の難病にかかっていて、医療施設にもよく訪問している。音楽の力がすごいことを身をもって知っています。彼女は思いだけではなく、実際のところをよく見ている。
長島さん 調弦をやってくださっている先生と私の写真を今度撮りたいなぁと思っているんですよ。
阿久津先生 指導者は、生徒を送り出すだけでなく、どれだけの生徒さんがまた戻ってくるか、ですね。そのことをつくづく思います。
長島さん 私は阿久津先生だったら、自信を持って紹介したい。心を掴むのが上手。相手がお子さんでも男同士のつながりをもっているみたいですし。
阿久津先生 子どもは、安心か危険か、すぐわかします。それが鈴木先生のオーラでもありました。それを後世につたえなければいけませんね。スズキが広がれば。音楽が地につくことで文化になる。それが宇都宮市から広がっていけば、と思います。
長島さん ヴァイオリンは楽しいですね。演奏するのが楽しい。上手くなくても褒めてもらえるので、やりたいと実感できるし。ストリートピアノは各地にあるけど、どこでも弾くことができるのがヴァイオリンの魅力です。それに合同レッスンも魅力があふれています。
今回の夏期学校には、いろいろなことで本当に感動しました。8月13日(日)の夜のミヤラジ「音楽の時間」で、いろいろとお話しする予定です。お楽しみになさってください。
プロフィール
長島佑季 Yuki Nagashima
宇都宮生まれ、宇都宮在住。2歳より、スズキ・メソードのピアノ科指導者の母からピアノを習う。ヴァイオリンを3歳~5歳の時、スズキ・メソードの阿久津雅志氏に師事。幼少期より、全日本ピアノ指導者協会のコンクールにて予選通過多数、東日本本選会にて入賞、栃木県学生音楽コンクール出場全て金賞受賞。他にも多数受賞歴がある。宇都宮短期大学附属高校音楽科、宇都宮短期大学音楽科にて、ピアノ専攻でクラシックを本格的に勉強しながら、16歳より7年間、社会人ビッグバンド、スウィンギングハードオーケストラにてピアニストを務める。卒業後は、イベント、レストラン、披露宴などで、ソロやコンボなどのスタイルで演奏。また、ジャンルもクラシック、ジャズ、ポップスなど幅広い。2019年11月より、とちぎ未来大使音楽部笑顔広報官を委嘱され、栃木県のPRにも力を入れている。うつのみやジュニアジャズオーケストラの講師などをしながら、全国各地で演奏活動をして、多くの方に「私だけの音」を楽しんでいただいている。
ミヤラジを聞く方法は、以下をご参照ください。アプリ経由が簡単です。