250120-3.jpg 250120-6.jpg 250120-7.jpg 250120-4.jpg 250120-5.jpg  
 

 スズキ・メソードと「バイオリンによるまちづくり推進の連携協定」を結ぶ大府市のおおぶ文化交流の杜図書館で、1月20日(月)、ユニークなイベントが開催されました。その名も「ナイトライブラリー 宮沢賢治と音楽」。図書館の休館日の静かな空間で、宮沢賢治が愛した弦楽四重奏の音色に合わせての朗読会というイベント。映画の「ナイトミュージアム」を想起させるナイトライブラリーというネーミングに、まず惹かれました。このナイトライブラリーは、1月25日(土)〜5月18日(日)に、大府市歴史民俗資料館で開催中の「宮沢賢治と音楽」のオープニングイベント的なプレコンサート、ということになります。
 
 その「宮沢賢治と音楽」のチラシによれば、「セロ弾きのゴーシュ」「銀河鉄道の夜」などで知られる宮沢賢治は、クラシック音楽好きで知られ、自らもチェロを弾いたり、教え子や農民らのためにヴァイオリンやヴィオラを購入し、羅須地人協会で演奏を楽しんだりしていました。 
 
 その宮沢賢治愛用のチェロやゆかりの楽器が鈴木バイオリン社製であるご縁から、鈴木バイオリン製造株式会社が現在本社工房を構える大府市で、「宮沢賢治と音楽」展が開催されることになったわけです。

 
出演の皆様から、当日の様子をお知らせしていただきました。
 
小野田祐真さん(鈴木バイオリン社長、第2ヴァイオリン)
 大府のホールに併設されている図書館の企画で始まりました。宮沢賢治が鈴木のヴァイオリンを愛用されていたということがきっかけで、大府歴史民俗資料館で1月25日、明日ですね、「宮沢賢治と音楽」という企画展が始まります。今、宮沢賢治のご親族の方が大府に来ていらっしゃるところです。それで、月曜日休館の図書館の夜間の時間を使って、大人向けに弦楽四重奏+朗読会をやったわけですが、満席どころか、座席の追加を何度もするほどの盛況ぶりでした。貸出数が日本一と言われる図書館だけに、

大府にお越しの際は、歴史民俗資料館に足を
運ばれてみては?

宮沢賢治の図書も随分と用意されていて、関心の高さがうかがえました。宮沢賢治はチェロを弾いていたわけですが、楽器編成としての弦楽四重奏にすごく憧れていました。それで自宅に誰か来た時のために、鈴木のヴァイオリンやヴィオラを複数購入し、8〜9本所有していました。全部鈴木バイオリン製作のものでした。それで、今回、チェロは門外不出でしたが、所有されていたヴァイオリン1台とヴィオラ2台が大府にやってきたわけです。「楽器の里帰り」として話題になりました。ヴァイオリンは、状態がとても良く、今回のナイトライブラリーで、第一ヴァイオリンの平松優公子さんに演奏していただきました。

 宮沢賢治の物語は、動物が出てくることも多いので、生演奏との親和性も高いように思いました。例えば、カッコウが出てくる場面など。「セロ弾きのゴーシュ」の朗読に合わせて、物語に出てくるベートーヴェンの交響曲第6番「田園」に合わせて、カルテットで第1楽章を全部演奏しました。朗読との合わせが当日しかなかったので、かなり入れ込んでやりました。もう一つの作品「やまなし」は、東海地区だけかもしれませんが、道徳の教科書に載っている短い作品です。その語りに合わせて「トロイメロイ」を弾いたり。
 今回の朗読+コンサートは、大変皆様に喜んでいただきました。朗読の松浦さんのお話に思わず引き込まれるほどで、「また、やってほしい」というメールを何通もいただきました。夜に開催したことも、評判を呼んだようです。
 
伊藤達哉先生(東海地区ヴァイオリン科指導者、ヴァイオリン)
 朗読はアナウンサーの松浦このみさん、演奏は大府のSuzukiカルテットが務めました。演奏には宮沢賢治が実際に所有していたヴァイオリン(鈴木バイオリン製80年前くらいのもの)を第1ヴァイオリンの平松優公子先生が使用されました。状態の良い素直な楽器で、楽器の紹介で平松先生が「芯のある深い音色が特徴」とおっしゃっていたのが印象的でした。朗読に合わせて効果音や音楽をタイミングよく入れるのはなかなか緊張しましたが、ライブ感がとても心地よく、なにより目の前で朗読される宮沢賢治の作品と朗読の素晴らしさに引き込まれ、幸せな時間でした(危うく聞き惚れて落ちそうになりました…)。会場にお越しになられたお客様が目を閉じて聴き入る姿が印象的で、いつか子どもたちにも聞かせられる機会があれば良いなぁと思いました。
 
廣岡直城先生(東海地区チェロ科指導者、チェロ)
 鈴木バイオリンの小野田社長のお誘いで、「ナイトライブラリー」という楽しい企画に参加させていただきました。「朗読」という言葉を通した表現のせいか、なかなか普段のコンサートでは味わえないような、聴衆の皆さんとのとても近い距離感を感じました。どのようにすればより伝えられるか、を考えるのは普段の演奏でも大切なことですが、よりダイレクトに反応を感じながらの演奏は貴重な経験でした。普段の指導と直接はつながりのないイベントでしたが、また一つ勉強させていただいたと思っています。


 ということで、次につながる企画がまた生まれそうです。
 マンスリースズキ編集部は、プライベートで、宮沢賢治が作詞・作曲した「星めぐりの歌」を弦楽四重奏で演奏したことがあるので、今後の展開が楽しみです。