今年は大阪で開催された「楽器を持って集まろう会」!
快晴に恵まれた3連休の中日の11月24
日(土)、大阪心斎橋の国際楽器社4階ホールで、スズキ・メソードOB・OG会主催の「楽器を持って集まろう会 in 大阪」が開催されました。子どもの頃に慣れ親しんだ合奏練習の形式で、ヴァイオリン科指導曲集を中心に遊びましょう、という企画です。マンスリースズキ編集部も今回はチェロで参加しました。
折しも、この日の未明にパリから「2025年に大阪万博開催決定!」のニュースが報道されたばかり。心斎橋には前夜からの興奮が満ち溢れていました。それに翌25日の大阪マラソンも控えて、大阪中がなんだかウキウキしていました。会場近くの有名な洋食店「明治軒」の名物オムライスもなんと美味しかったこと!
これまで東京で2回、松本、名古屋、そして昨年は京都でそれぞれ開催され、今回は、初めての大阪開催。19名の皆さん(ヴァイオリン13名、ヴィオラ4名、チェロ2名)の参加がありました。
後でわかったことですが、会場の国際楽器社は、その昔、鈴木鎮一先生が大阪にいらした時には、この地でグループレッスンをされていらしたとのこと。しかも、1946年9月に創業の国際楽器社とスズキ・メソードは、同い年の関係でもあります。松永歓社長からその事実を伺い、感慨を新たにしました。OB・OG会として、図らずも鈴木先生の足跡の一端を、生誕120周年のこの歳にたどることができたことは、嬉しいことです。
進行役を担ってくださった関西地区ヴァイオリン科指導者の宮原正治先生を中心に、初対面のメンバーたちは、思い思いの場所に着席。今回も「キラキラ星変奏曲」からスタートしました。第一ヴァイオリンの4人以外は、ヴィオラもチェロもセカンドパートを演奏。これでちょうどバランスがいいのですから不思議です。「ちょうちょう」「こぎつね」「むすんでひらいて」「クリスマスの歌」「かすみか雲か」「ロングロングアゴー」「アレグロ」「むきゅうどう」「楽しい朝」と続き、バッハの「メヌエット第2番」になると、宮原先生から「子どもは、この曲、キライやねん、言いますよ」とのエピソードも。チェロ科にとっては、前期初等科の卒業録音曲なので、録音前に1000回練習を言われたことを伝えると、ヴァイオリンの皆さんからも「そうそう! うちもそう!」の声。みなさん、思い出がよみがえるようです。
少し遅れて到着された
木村眞一OB・OG会長からご挨拶がありました。
「最新号の才能教育通信に、鈴木先生の”人間性創造”という文章が掲載されていました。1953年に書かれたこの文章に私は感激しております。さて、私たちOB・OGは、スズキ・メソードに出会えた幸せ者です。今日は初対面の方も多くいらっしゃるでしょうが、お互いに知り合っていただき、スズキ・メソードで学んだ者同士、仲良くしましょう、という趣旨で始めています。この楽器を持って集まろう会では、押し入れに入っている楽器を久しぶりに持ち出した方も、今もバリバリ弾いていらっしゃる方も、一緒になってみんなで1日楽しみたいと思います」
続いて、「楽しき農夫」とゴセックの「ガヴォット」を演奏。これで指導曲集第1巻を完全制覇したことになります。
a-mollに挑戦
ここからは、あらかじめ参加のみなさんにお知らせしておいた課題曲をこなしてゆくことに。まずは、スズキといえばこの曲、ヴィヴァルディの協奏曲イ短調。通称a-moll(アーモール)です。宮原先生が「どなたかソロを?」と言われると、すぐに大阪の青山悦夫さん、名古屋の中村優友さんが名乗りを上げました。青山さん曰く「伴奏より、ソロの方が簡単ちゃう?」。すんなり演奏が通り、拍手です。続いて、四日市の清水優さんと木村会長のソロで、もう一度第1楽章を。いい感じです。昔取った杵柄は、色褪せません。そして、宮原先生から「初見になりますが、続いて第2楽章、第3楽章はどうしましょ?」。譜面がありますので、やることにしました。もちろん大初見大会です。宮原先生がソロを弾いてくださり、トライ。いい曲です。曽田先生から「第2楽章は、第4ポジションが出てくるので、指導曲集第5巻に入っています」とお知らせ。みなさん、記憶の片隅から思い出していらっしゃいました。続く第3楽章は、東京の清水緋菜子さん、大阪の木幡栄世さんがソロ演奏。快調なテンポで終わってから「ブラボー!」の声も上がりました。青山さんと木幡さんから「うちの高瀬クラスでは、夏期学校の夜などに、いつもは1楽章なのにたまに3楽章をやったりして、”爆弾”て呼んでましたね」とのエピソード披露も。宮原先生からも「関西には”爆弾”を落とす先生、多いですよ。ある先生は、本番前にドッペルのセカンド奏者を探していたこともありました」。でもそうした急な事態にもすぐに対応できてしまうのが、スズキ育ち。体に音楽が身についているので、臨機応変にできてしまいます。
ドッペルを経て、かっこう
そして、おなじみバッハのドッペル。このソロには、兵庫県川西市から参加の大谷詩絃さんと清水優さん、青山悦夫さん、曽田先生がソロ演奏。みなさん堂に行ったものです。難なくクリア。
続いての課題曲がダカン作曲の「かっこう」。ピアノ科の指導曲集第6巻に、かつて所蔵されていたこの曲は、18世紀にノートルダム大聖堂のオルガン奏者としても活躍したダカンの作品としてよく知られています。同じフレーズが何度も出てくるロンド形式は、ピアノ科の子どもたちも大好き。左手がカッコウの鳴き声を模しています。原曲はクラブサン(チェンバロ)のための曲ですが、ここでは鈴木先生がヴァイオリン2部用に編曲された楽譜を使用しましたので、ヴィオラもチェロもト音記号を読みながらの演奏参加。ノリのいい曲でした。ところどころa tempoに入る前にゆっくりする部分があり、お互いを聴きあいながらのアンサンブルとなり、意外と弦楽アンサンブルにも合うというのが実感でした。他にも違った楽器の組み合わせで、もっともっと演奏されていいように思います。例えば、フルートとチェロという組み合わせでも面白いでしょう。2009年の夏期学校ではヴィオラを弾かれる先生たちが、オープニングでこの曲を披露。服装をヴィオラ色(すみれ色)で揃え、とても印象深い演奏だったことを思い出しました。
恒例の自己紹介タイムです
お名前や経歴などを紹介し合う時間になりました。
「大阪第二支部の高瀬乙慈先生に小学3年から高校2年まで習い、モーツァルトの4番で卒業しました。10年前にまた先生に電話して習いたいと言いましたら、すぐ発表会があるから出て、と言われました。1970年の万博で大人数で弾いたこと、高校生の時に小林武史先生と亀田美佐子先生と一緒に弾いたことが思い出です」(富田林市・青山悦夫さん)
「私も高瀬先生に4歳から習いました。今回、参加することになったきっかけは、スズキ・メソードの機関誌最新号の特集記事”我が子が伸びるきっかけとその方法”で、我が家のチェロを習っている長女のことを取り上げてくださったからでした。長女は最初に杉山実先生にお世話になり、先生が亡くなられてからは、スズキのいろいろな先生にお世話になりました。今日は、感謝の気持ちで参加しました」(枚方市・木幡栄世さん)
「四日市から来ました。3歳から小学6年までの10年間のうち4人の先生に習いました。娘にもスズキでヴァイオリンを学ばせました。35年間のブランクがありましたが、6〜7年前からOB・OG会に参加しています。このような会が東京だけでなく、各地で開かれることを嬉しく思います」(四日市・清水優さん)
「3年前から大阪に単身赴任をしております。ヴァイオリンは末廣悦子先生に4歳から高校まで習いました。20年のブランクの後、会社でオーケストラができ、引っ張り出されるようになりました」(大阪市・佐野登喜男さん)
「長谷川敏子先生のクラスで高校までお世話になりました。OB・OG会には父の紹介でお世話になっています」(東京・清水緋菜子さん)
「小学1年から名古屋の国分康代先生の元でメンデルスゾーンまで習いました。2年前から伊藤達哉先生についてヴァイオリンとヴィオラを習っています。発表会ではバッハのホ長調の協奏曲を弾き、現在、ホ長調にハマっているところです」(名古屋・中村優友さん)
「宮原先生の奥様、千都先生に習っていました」(川西市・大谷詩絃さん)
「懐かしい先生のお名前が出てきて、嬉しくなりました。私は、名古屋支部の鈴木佳代子先生にお世話になりました。先生とは今も仲良しです。この15年くらいは関西にいて、実は今バンド活動をしておりまして、エレキヴァイオリンでかなり激しく弾いています。今日、すごいなと思ったのは、a-mollの3楽章を皆さん、バリバリ弾かれるのにびっくりしました。参加したきっかけは、宮原先生と飲み友だちというのが一番の理由です(笑)。クラシックのヴァイオリンを忘れないために、月に1回、スズキではない先生についていますが、最近、その先生が曽田先生とご学友だったと聞いて、世間は狭いなと思いました。ヴァイオリンをやっていたことで、いろいろな交流ができるのがとても嬉しいです」(大阪市・林佐和さん)
「小学1年から高校2年まで、京都の名倉民子先生についていました。大学オケで弾いたりしていましたが、この会があることを名倉先生から紹介していただきました」(高槻市・青木美彩代さん)
「昭和20年生まれで、横浜で育ちました。4歳の時に近所のヴァイオリン教室でお世話になりました。それが才能教育の船橋孝昌先生でした。やめたのは高校2年です。今、弁護士ですが、弁護士オーケストラなどで弾いています。ヴァイオリンを通じて、いろいろな付き合いができ、心から母親に感謝しております。レジェンドではありますが、体が動く限り、演奏したいと思います。OB・OG会が交流のツールとして使えればと思います。”かっこう”を今日は選曲してくださって嬉しいです。その昔、夏期学校でよく弾いた曲です」(横浜市・木村眞一さん)
「大人になって曽田先生の元でヴァイオリンを始め、3年前からヴィオラを習うようになりました。夏期学校に参加して、東京の服部さんたちからこの会のことを聞いて、昨年の京都の会から参加しています」(吹田市・芝美奈子さん)
「ヴァイオリンを広瀬先生に5歳から習いました。妻が習っている松井直樹先生に時々習い、3年前の夏期学校で曽田先生にお世話になりました」(東京・服部眞一郎さん)
「40歳を超えてからヴィオラを松井先生に習うようになり、一人で演奏するということがなかったので本当にびっくりしています。それでも3年前に芝さんたちと知り合うことができ、今の夢は、たくさんのヴィオラの皆さんと合奏することです。みなさん、ヴィオラを弾きましょう!」(東京・服部宏美さん)
「私も青山さんと同じで、10年くらい前にヴァイオリンを引っ張り出してきました。その後、OB・OG会が始まりましたので、事務局長の仕事をしています。小学4年の頃は、四日市で若林先生に、その後、東京で松井宏中先生に習いました。この会は、初めて顔を合わせて合奏をするのですが、楽しみたいと思います」(東京・川野俊彦さん)
「昨日、研究科Cの録音が終わったところで、ホッとしているところです(拍手!)今朝、楽譜を見て、やばいと思いました。現在、京都支部の森田健二先生にお世話になっています。現在高一で、これから部活や勉強も忙しくなると思いますが、チェロの勉強を続けたいと思います」(枚方市・木幡真理子さん)
「関西地区のヴァイオリンとヴィオラの指導者です。父の曽田国義が研究生の時に結婚し、鈴木先生から『君は大阪に行って、指導しなさい』と言われ、1960年に大阪に来て、翌年に生まれたのが私です。小学6年くらいまでに10巻を終え、その後、父の元を離れ、別の先生について、高校も京都の堀川高校に行きました。ところが高2の時に父が亡くなったため、代教の先生に教室をお願いし、特例として松本の鈴木先生の元で1年3ヵ月研究生として過ごしました。その後、教室を継いだわけです」(吹田市・曽田義嗣先生)
「今日は、いい感じで会が進み、嬉しいです。ここが狭いと感じられるくらい、次回、大阪で開催されるようになることを期待しています」(豊中市・宮原正治先生)
など、短いお話の時間でしたが、興味深いひと時でした。
後半は、鈴木先生作曲の「弦楽アンサンブルのためのワルツ」
今回の目玉企画の一つが、鈴木先生のワルツです。作曲されたのが1928年ということで、鈴木先生の8年間に及んだベルリン留学の最後の年の作品です。ワルトラウト夫人と結婚されたばかりで、幸せの絶頂期。それでも実母の危篤の知らせを受けて、急遽シベリア鉄道で帰国された年でもありました。
10月に松本の才能教育会館で開催された「鈴木先生生誕120周年記念コンサート」でも演奏されたこの曲を、今回、どうしても演奏してみたいねということになった次第です。曽田先生の指揮で、短い時間ですが、ご指導をいただきました。「ウィンナワルツを意識して、鈴木先生は作曲されている」とか「ト短調という調性がいいね」とか「ヴィオラの唯一のメロディがそこですよ」など和気藹々の中、演奏が続きました。この曲の世界に没入していると、1920年代の欧州の舞踏会のシーンが走馬灯のように頭に描かれるのですから、面白いですね。
時間が足りなくなりました。それでもあと1曲用意していた鈴木先生の「子供の幸を」にトライしました。時間がないので1回限りの演奏ですが、すごくいい曲であることを再認識。「卒業式を思い出しました」の声や、「5月のコンサートでも弾きたいね」などの声がありました。
さぁ、いよいよ最後は、ドッペルでシメです。ソリストが林立する中、賑やかに終えることができました。「アグレッシブに行きましょう」「ドッペルはヴィオラが美味しい」などの掛け声もあって、大阪らしく(?)終えることができました。
「二度漬け禁止の串カツ」へ
懇親会は、宮原先生ご推薦の心斎橋の串カツ「しろたや」で今日の成果を肴に打ち上げました。子どもたちのコンサートと違って、OB・OG会の大切な活動に懇親会があります。合奏練習で知り合った者同士で、話も盛り上がりますし、いろいろな思い出話も披露されます。二度漬け禁止、スズキ・メソード、OB・OG会、そして万博をキーワードに、てんこ盛りとなった大阪での「楽器を持って集まろう会」は、
大変充実した1日となりました。さらに二次会へとメンバーは流れて行きました。
参加の皆様、ご協力をいただきました先生方、心から御礼申し上げます。OB・OG会は、今後も「楽器を持って集まろう会」、そして5月のコンサートを企画していきます。全国の皆様の参加をお待ちしています。