音楽が結ぶ平和の輪
日米のスズキの子どもたちが神戸・広島・松本で交流
この夏、アメリカと日本のスズキ・メソードの子どもたちが、音楽を通じた特別な交流の旅を実現します。アメリカ東海岸の若い演奏家たちによる「パインランド・クレッシェンド・スズキ・ツアーグループ」が、8月に12日間の日程で来日し、神戸、広島、松本を舞台に日本の子どもたちと友情を育みます。
このグループは、アメリカ東海岸のメイン州オーガスタのパインランド・スズキ・スクールを中心に、メイン州、ニューハンプシャー州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州の指導者たちが2022年に立ち上げた共同プロジェクトです。今回のジャパンツアーには、26人のヴァイオリン、チェロの生徒と5人の指導者が参加します。グループ名の「パインランド・クレッシェンド」には、メイン州と松本市を象徴する“松”のイメージと、子どもたちが音楽と人間性の両面で成長していく願いが込められているそうです。
今回の旅の大きなテーマは、「平和」と「友情」です。広島では、平和記念公園や原爆養護ホーム「むつみ園」を訪れ、日本のスズキの子どもたちとともに平和コンサートを開催します。音楽を通して戦争の記憶に触れ、平和への願いを共有する機会となるでしょう。
神戸では、日米の指導者と生徒たちによる2日間のワークショップとコンサートが予定されています。言葉や文化の違いを超え、同じ曲をともに学び、演奏することで生まれる交流は、子どもたちにとって何ものにも代えがたい経験となります。
そして旅の終着点の一つが、スズキ・メソード発祥の地・松本です。才能教育研究会の会館ホールでのコンサートでは、戦後の混乱の中で「音楽には平和と美と癒やしの力がある」と信じた鈴木鎮一先生の精神に触れることになります。世界中に広がったスズキ・メソードの原点を訪ねることは、アメリカの子どもたちにとってまさに「スズキ巡礼」の旅となります。
国境を越えて集う子どもたちを結ぶのは、共通のレパートリーと、「どの子も育つ」というスズキ・メソードの理念です。神戸、広島、松本で響き合う音楽は、交流演奏会にとどまらず、そこには、次の世代へ平和と友情の種を蒔こうとする、日米の子どもたちの小さくも力強いメッセージが込められています。
マンスリースズキは、9月号でこの交流の様子を紹介する予定です。
広島で交流される寺本由理先生からメッセージをいただきましたので、紹介しましょう。
被爆から81年を迎えるにあたり、私たちはアメリカの The Pineland Crescendo Tour Group の皆様とともに、平和記念公園、そして広島原爆養護ホーム「舟入むつみ園」にて演奏会を行ないます。
広島で暮らす私たちにとって、原爆ドームは特別な存在であると同時に、日々の暮らしの中に静かに息づく風景でもあります。子どもたちも学校教育を通して平和や戦争について学ぶ機会が多く、このテーマは特別なものというよりも、日常の中に自然と根付いているものだと感じています。
そのような環境の中で、今回の演奏会は、「音楽を通して何ができるのか」「平和と音楽をどのようにつなぐことができるのか」を、生徒たちとともに改めて考える大切な機会になると感じております。広島教室の子どもたちは感受性豊かで思いやりにあふれており、アメリカから来られる皆様と同じ舞台で音楽を奏でる経験や、お客様との交流を通して得られる学びは、日々のレッスンでは得難い貴重なものになると確信しています。
また、私自身は学生時代をアメリカで過ごした経験からアメリカに特別な思い入れを持っており、同じスズキ・メソードの仲間として活動される皆様と音楽を通して交流できることにも、大きな喜びを感じています。
中国・四国地区ではこれまで会の行事がほとんど開催されてこなかった中、「いつかこの地域でも何かできたら」という思いを長く抱いておりました。そのような中で、関西地区ヴァイオリン科の松本尚三先生より「ぜひ広島教室も参加してみてはどうか」とお声がけをいただき、このような貴重な機会をいただきましたことに、心より感謝申し上げます。
国や言語、文化が異なっていても、音楽には人と人の心を結び、互いを理解しようとする気持ちを育む力があると信じています。だからこそ、広島で育つ子どもたちと、海を越えて訪れてくださる仲間たちがともに音楽を奏でることは、平和への願いを未来へつなぐ小さな一歩になるのではないかと思います。
一つひとつの音に平和への思いを込めてこの舞台に立ち、この演奏が、聴いてくださる皆様にとって、平和について静かに思いを巡らせるひとときとなれば幸いです。
中国・四国地区 ヴァイオリン科 寺本由理
松本でお迎えされる島野ロンダ先生からもメッセージをいただきました。
パインランド・クレッシェンド・ツアーグループの最後の訪問地は、松本市です。松本到着後は、まず鈴木鎮一先生のお墓を訪れ、天候に恵まれれば、お墓の前で演奏を行ないたいと考えています。
その後は、1日自由行動の時間を設け、松本城をはじめとする市内の名所を自由に散策・観光していただく予定です。
最終日は、午前中に鈴木鎮一記念館を見学し、午後は才能教育会館ホールにて、このツアーのために練習を重ねてきたアンサンブル曲を数曲演奏する予定です。その後、日本の生徒の皆さんとともに、スズキ・レパートリーによる合同演奏を行ないます。
そして最後に、日本とアメリカの子どもたちがともに《ドナ・ノービス・パーチェム(Dona Nobis Pacem)》を演奏します。この曲は、人々の調和と平和への願いが込められた、世界中で親しまれている作品です。
鈴木鎮一先生が創設された学校で、日本とアメリカの子どもたちが心を一つにしてこの曲を演奏することは、鈴木先生が生涯願い続けられた「世界平和」への思いを、音楽を通して伝える、象徴的で意義深い演奏となることでしょう。
甲信地区 ヴァイオリン科 島野ロンダ