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 ヴァイオリン科出身で世界的に活躍される渡辺玲子さんの最近のご活躍は、驚かされることばかりです。今回は、9月と10月の3つの話題について、玲子さんご自身から、ご多忙の中、メッセージをお寄せいただきました。

 1番目の話題です。

サンクトペテルブルクで開催された第2回ユーラシア女性フォーラムで
「パブリック・リコグニション・2018アウォード」を受賞

 第2回ユーラシア女性フォーラムは、9月19日から21日までの3日間、ロシアのサンクトペテルブルクで開催され、私も参加いたしました。因みに第1回フォーラムは2015年に行なわれています。女性の社会的な地位向上や活躍の場の拡大、貧困などについて3日間に35のセミナーが行なわれ、ロシア連邦議会の議長、ヴァレンティ―ナ・マトヴィエンコ女史のホストのもと、プーチン大統領もスピーチを行なうなど、政府と民間の両サイドから6,000人のパワフルな女性たちが集う世界規模のフォーラムとなりました。

ホテルから数秒でエルミタージュという素晴らしい立地。撮影も玲子さんご自身です 私は、今年の初頭にロシア人マエストロと共演したご縁から参加のお話をいただき、マリインスキー劇場などでの演奏を2回行なう予定で、サンクトペテルブルクに入りました。私がこの街を訪れたのは建都300年で世界中の要人たちがペテルブルクに集結した2003年5月末、サンクトペテルブルク交響楽団とショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲を共演したのが前回でしたから、ちょうど15年ぶりです。その時に比べて、歴史ある街並みにはそれほど変化がないと思いましたが、雰囲気は大きく変わっていました。街には元気な若者たちが溢れ、広場ではスピーカ―を通した大音響でポップ調の音楽が演奏されていましたし、レストランやブティックも、ヨーロッパの他の国と変わらぬ雰囲気でサービスを提供していました。

公演ポスター。左はゲルギエフです 1日目、9月19日には有名なマリインスキー劇場でガラ・コンサートが行なわれ、前半はオペラのアリア、後半はヴィヴァルディの「四季」を使ってアレンジしたモダンなバレエが演じられましたが、私は特別ゲストとして、ワックスマン作曲の「カルメン幻想曲」を演奏しました。会場は2013年にオープンした新しい方のマリインスキー劇場2、設備も美しく整っていて、劇場専属のオペラ歌手やバレエダンサーの中で演奏できたこと、そして観客の皆さんからも盛大な拍手をいただいたことは、素晴らしい経験となりました。

 フォーラムはタヴリーダ宮殿で開催され、2日目には午前中に行なわれた会合の一つを観に行きました。日本からは生物物理学者の黒田玲子東大名誉教授もパネリストの一人としてお話しされ、安倍政権がアベノミクスならぬウーマノミクスという呼び名で、女性の活躍の場を広げる政策に力を入れていること、そして2019年3月には東京でW20(Women’s 20)が開催されることを知りました。そのほか、世界における女性の深刻な貧困などについても各国のパネリストから問題提起され、知らなかったことに少しずつ目を開かれた思いになりました。

 2日目は、日本とロシアの文化交流のランチに参加、無伴奏で宮城道雄「春の海」とパガニーニの「ネル・コル・ピュ・ノン・ミ・セント」の短縮版を演奏。今回のフォーラムに出席されていた林文子横浜市長、大川順子日本航空副会長ともお話しすることができました。

 午後には「パブリック・リコグニション・2018アウォ―ド」が各分野から選ばれた13人の女性に授与され、私はカルチャー部門で受賞しました。この賞は直前まで公表されない仕組みになっていて、私もペテルブルクに入ってから初めて受賞を知り、大変名誉に思うとともに、この思いがけないプレゼントに今でも驚いています。林文子横浜市長、そして世界最初の女性宇宙飛行士、V・テレシュコーヴァさんも受賞されました。授賞式では、マトヴィエンコ議長から、美しい翡翠のトロフィーと賞状を受け取り、短く感謝のスピーチもいたしました。世界中から集まったパワフルな女性たち、錚々たる方々にお会いできたことで、素晴らしい経験と刺激をいただいた3日間となりました。

2番目の話題です。

奥の深い真空管オーディオの権威、大橋さんとの対談が本になりました!
〜「大橋慎の真空管・オーディオ本当の話」(立東社)

アマゾンで購入可能です。立東社、2,160円。玲子さんはPart3の「真空管アンプをめぐる対話」に登場され、渡辺玲子さんが選ぶナンバーワン真空管アンプなどについて、思いを語っておられます 4月から高音質の衛星ラジオ放送、ミュージック・バードで「渡辺玲子の弓語り」という番組のパーソナリティを務めています。このマンスリースズキ5月号でもご紹介していただきました。その番組のご縁から同じくミュージック・バードの人気番組、大橋慎さんの「真空管・オーディオ大放談」にも8月にゲスト出演しました。その時の放送内容を文字に起こした対談が、1017日に立東社から出版される「大橋慎の真空管・オーディオ本当の話」の中に掲載されています。大橋さんはオーディオ界のカリスマで、サンバレー・オーディオの店主でもあり、今回の本もアマゾンなどの予約で、すでに1位になっています。

 私自身はオーディオの世界にはこれまであまりご縁がなかったのですが、今回の対談で、オーディオの世界が大変奥の深い世界であるということがわかりました。演奏家が美しい音、理想の音を絶えず求めているように、オーディオの世界でも自分の求める音をいろいろな真空管の組み合わせで手造りしているのです。

 107日(日)&8日(月・祝)に第24回真空管オーディオ・フェアが開催されますが、実は私も7日の17時から18時半、秋葉原の損保会館3階のサンバレーブースにて行なわれる大橋慎さんのラジオ公開収録に再度出演いたします。オーディオに興味のある方は是非見にいらしてください。そうでない方も、この機会に奥の深い真空管オーディオの世界を実際の音で体験していただけると思います。

→真空管オーディオフェア

3番目の話題です。

渡辺玲子 プロデュース
レクチャーコンサート vol.4 知る、聴く、喜び ~時代を彩る名曲とともに~

クリックで拡大クリックで拡大 Hakuji Hallのレクチャーシリーズもvol.4になりました。これまでベートーヴェンやブラームスなどの、ドイツ系の大作曲家たちのヴァイオリン・ソナタを中心にプログラムを組んできましたが、今回は「世界大戦の世紀」と題して20世紀の作品を3曲聴いていただきます。亡命していたパリからスターリンの支配するソビエトに帰国したプロコフィエフ(1891~1953)が書いた大作のヴァイオリン・ソナタ第1番(1946年)、祖国チェコの音楽的発展に心を砕いたヤナーチェク(1854~1928)がハプスブルク帝国からの祖国解放の思いを音楽に反映させたヴァイオリン・ソナタ(1914年、改作1922年)、そしてブラームスやリヒャルト・シュトラウスなどのドイツの作曲家の系譜を受け継ぎながらも、祖国ハンガリーの農民の音楽を採取、自身の芸術の中に見事に融合させ、独自の音楽世界を創ったバルトーク(1881~1945)によるラプソディ第2番(1928年)を取り上げます。

 これらの作品が書かれた20世紀の前半は、2つの世界大戦を経験した苦難と激動の時代であり、そんな中で作曲家たちが何を考え、音楽を通してどんな想いを伝えようとしたのかを探っていこうと思います。加えて言えば、20世紀の作品は難しい、音が複雑などの印象をお持ちの方も多いかもしれませんが、実は、これらの作品における音楽的な感情表現は、私たちの時代にとても近く、古典の作品群と比べても、共感と感動をより身近で具体的なものとして感じていただけると思います。20世紀の音楽の魅力を、是非体験していただきたいと思っています。

 今回もパートナーには、ニューヨークのジュリアード時代からの仲間であり、作曲家としての側面も持つ、国際的に活躍するピアニストの江口玲さんを迎え、演奏家から見た作品の魅力や、作曲家が音に込めたメッセージを一つひとつ具体的に紐解いていきます。と同時に、Hakuji Hallのサロン的な雰囲気と美しい響きの中、演奏も本格的に楽しんでいただけるコンサートとして、音楽の持つエネルギーを多面的に味わっていただく機会になればと思います。スズキ・メソードでおけいこをしている皆さんにも、是非聴いていただけたらと思います。ご来場をお待ちしています。

2018年10月17日(水)19:00開演
Hakuji Hall
入場料:4,000円
出演:渡辺玲子(ヴァイオリン)、江口玲(ピアノ)
曲目
・プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ヘ短調 op.80
・ヤナーチェク:ヴァイオリン・ソナタ
・バルトーク:ラプソディ 第2番
【問】Hakuji Hallチケットセンター tel.03-5478-8700