品川ストリングオーケストラ海外演奏旅行記念コンサート Vol.7
~第28回 国際音楽祭ヤング・プラハ参加&ドイツ・ニュルンベルクコンサート~
今夏、スズキ・メソード 品川ストリングオーケストラが、7回目となるヨーロッパツアーを行なうこととなり、その記念コンサートが7月14日(日)に大田区民プラザにて行なわれます(13時開演)。「一人でも多くの方に演奏を聴いていただき、生徒たちに声をかけていただきたいと、準備に熱が入っているところです」と、品川ストリングオーケストラを引率される指導者のお一人、野口美緒先生が、以下のようにこれまでの海外演奏旅行の経緯と今回の練習風景、記念コンサートのソリストとして登場されるスズキ・メソード出身のヴァイオリニスト、印田千裕さんへのインタビューなど、詳しくレポートしてくださいました。
品川ストリングオーケストラ海外演奏旅行記念コンサート Vol.7
2019年7月14日(日)13:00開演
入場料:2,000円(全席自由)
曲目
・バッハ:ブランデンブルグ協奏曲 第3番 ト長調 BWV1048
・モーツァルト: ヴァイオリン協奏曲 第3番 ト長調 K.216
・日本古謡(林きらら編曲):「さくらさくら」弦楽合奏版
・横山真男:「草津節」の主題による弦楽合奏のための狂詩曲
・ドヴォルザーク:弦楽セレナーデ ホ長調 Op.22
お問い合わせ スズキ・メソード トゥインクル音楽院 tel.03-3983-5740 →メール
■品川ストリングオーケストラについて
品川ストリングオーケストラは、トゥインクル音楽院の品川弦楽団と品川ジュニア弦楽団メンバーからなり、海外ツアーのために結成されています。
これまでに1997年、2001年、2007年、2010年、2013年、2016年の6回にわたり、才能教育研究会に外務省、文化庁、大使館の後援をいただき、音楽子ども親善大使としてオランダ、ドイツ、オーストリア(ウィーン)、チェコを訪れ、コンセルトヘボウ小ホール、ウィーン楽友協会小ホール、ドヴォルザークホールなどの世界的ホールをはじめとする計20回以上のコンサートを行ない、好評を博してきました。コンサートでは、邦人作曲家の曲や日本古謡も積極的に取り上げてきました。
浜離宮朝日ホールでのヤングプラハ創立25周年記念演奏会の終演後 前回、2016年のコンサートツアーでは、第25回国際音楽祭ヤング プラハに招聘され、チェコのKOS少年少女合唱団との合同演奏会(2018年にはKOSの来日公演で再共演が実現)や、チェリストのトマーシュ・ヤムニーク氏との共演も行ないました。帰国後、チェコ共和国大使館での演奏会と浜離宮朝日ホールでのヤング プラハ創立25周年記念演奏会にも参加し、太田弦氏の指揮でヴァイオリニストの周防亮介氏とも共演。これらの演奏会が好評を博し、今回再度の招聘をいただくことになったのです。その時の様子は、マンスリースズキでも紹介させていただきました。
→マンスリースズキ2016年12月号
→品川ストリングオーケストラ公式ツイッター
■第7回演奏旅行について
第28回国際音楽祭ヤングプラハからの招待状 本年は、8月25日(日)〜9月3日(火)まで10日間のドイツ・チェココンサートツアーを行ないます。コンサートは、ハイリッヒゲイシュトジュピタール・音楽ホール(ニュルンベルク)、ヨハネス教会(バードシャンダウ)、スメタナホール(プラハ)の3ヵ所で行なう予定です。第28回国際音楽祭ヤング プラハに参加、ニュルンベルク市からは恵まれない子どもたちへのチャリティコンサートを依頼されており、市庁舎訪問のお話もいただいています。
練習にも拍車がかかっています 音楽を通して人間を育てるというのはスズキ・メソードの理念でもあります。今回のコンサートツアーを通して、子どもたちが海外での演奏や文化交流も体験し、その経験を生かして立派な社会人へと成長していく礎となればと考えています。
■ソリストについて
チェコでは Jan Mráček (ヤン・ムラーチェク)氏とモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番を共演します。7月14日の記念公演では、スズキ出身のヴァイオリニスト、印田千裕さんをソリストに迎えます。子どもたちの可能性がソリストたちとの共演を通して広がり、ツアーでどのように花開くかも楽しみの一つです。
5月26日(日)のソロ合わせに来てくださった印田千裕さんに、
ツアーやコンサートについて伺いました。
-演奏者としてツアーに参加した頃のことを教えてください。
1997年、第1回ツアーにコンサートマスターとして参加した時には、東京藝術大学音楽部附属音楽高等学校(芸高)1年生でした。それまでスズキのイベントには常に参加して、その延長にいながら、「ヴァイオリンを弾いていたい」という思いだけで音楽高校に入学し、プロの世界を知り、地方出身生徒の熱意にびっくりし、自分のキャリアとしての音楽活動はまだ実施していない段階でした。海外に行ったことはあっても、音楽に関わる形で訪問したのは初めてで、とても印象的で、はっきり記憶に残っています。そのあとスズキを離れてからも、1回目のツアーに一緒に参加したメンバーとは連絡を取り合ったりしていて、人生の中で大きな出来事だったとも感じています。
-具体的にはどのようなことが印象に残っていますか?
まず、コンセルトヘボウで弾けたことがいかにすごいことだったと今になって思います。お客様のスタンディングオベーションも、日本ではまず体験することがありません。そういうホールで弾いて、拍手喝采を受けたことは、その時が初めてでした。
教会での演奏については、過去にも先生から「バッハを弾く時は教会で弾く気持ちで」と言われたりしていましたが、実体験したことでその意味がわかりました。自分の音を聴くということを感じられるのです。それまでも聴いているつもりで、余韻の最後まで聴こえているということがありませんでした。余韻を最後まで聴きながら弾く体験は、その後、どんな部屋で弾く場合でも、響きを聴いて音を作ろうという気持ちにつながっていきました。
2001年の第2回は大学生で、お手伝い的な参加の仕方でしたが、夜中のミサなど、別の意味で印象的な体験でした。
-今回共演する、モーツァルトの協奏曲第3番の思い出はいかがですか?
5月26日の練習は、印田千裕さんとのソロ合わせでした。指揮はお父様の印田礼二先生です 第3番はロンドンに留学している頃、第1楽章をオーディションで弾いたことがあります。でも、試験のために弾くのと、今こうしてオーケストラと弾くために作るのとは違います。特にモーツァルトに関してはそう感じます。学生の時に誰もが勉強する曲ですが、お客様にどう聴かせるか考えることを今、楽しんでいます。オーケストラのメンバーの皆さんにも、楽しんで弾いてもらえるのが一番いいと思います。今はまだ一生懸命弾いているでしょうが、練習含めあと2回、一緒に楽しく弾いてもらえたらいいですね。溢れ出る喜びをお客様にも共有していただけるような演奏ができたら、最高だと思います。
-スズキ・メソードが故郷ですね?
はい、そうです。一番重要なのは、スズキ・メソードが母語の教育法というところです。弾けるようになるだけでなく、言葉の一つとして成り立っていて、体にそれが染み付いている感じです。東京に出てきた人が故郷に帰って、方言に戻れるみたいな。私にとっても、スズキでやってきた演奏が言葉の一つになっていて、そこで得たものを自分のルーツとして持っています。
-日本の曲を演奏される機会が多いですね?
イギリスで勉強中は、イギリス人が作った曲を弾く機会が多かったですね。世界では知られていないたくさんの作曲家がいて、曲を授業の中で弾いたり、彼らの名前を冠したコンクールもありました。帰国後もイギリスの曲を弾いていた時期がありましたが、その後、日本の曲も知っておきたいと思いました。弾き始めてみると、元から日本人としての感性が合致する部分があって、弾ける気がしました。無理をしないで弾けるわけです。それからは、リサイタルにも毎回取り入れるようにしています。
-海外公演では、日本人作曲家の曲や、日本古来の曲を毎回入れるようになりました。
海外の人が知ってくれるよう、発信して聴いてもらうのが一番と考えています。節回しやリズムに日本独特のものがありますから、きっと興味を持ってくださるでしょう。
-オーケストラメンバーへのメッセージをお願いします。
音楽の道に進んでも進まなくても、人生に音楽があることが、自分にもあるって感じられることは大きな強みになります。聴くにしても弾くにしても、それがある人とない人では違います。今後、どういう人生になるかわかりませんが、楽器を習っていただけでなく、海外へ演奏旅行という素晴らしい経験ができるのは、とてもラッキーなことです。単に海外に行くだけでなく、演奏に参加して、弾く側の体験をすることにはプラスしかありません。心から参加して、「自分がやる」ことを心から楽しんでほしいと思います。
品川弦楽団 YouTubeチャンネルについて
品川ケーブルテレビ取材時の様子 母体である品川弦楽団では、これまでに大学生メンバーがコンサートチラシを作成したり、パート練習をしたり、Twitterで発信したり、コンサートの告知方法を考えたりと運営にも力を発揮してくれています。トゥインクル音楽院サマースクールなどでも培われてきた人間関係、人としての成長の結果と頼もしく感じます。
今回のツアーを前に、大学生が品川弦楽団の YouTubeチャンネルを作成しました。今後、過去やこれからの動画を少しずつ追加していく予定です。併せて応援をお願いできれば幸いです。
→YouTubeチャンネル