私のスカイプレッスン
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、スズキ・メソードの各教室ではいろいろなアイデアでレッスンが続けられています。その一例として、遠隔地に引っ越しされた生徒さんへのスカイプレッスンを3年前から実践されておられる、東海地区ヴァイオリン科指導者、末廣悦子先生に事例を紹介していただきます。合わせて、ご利用されている生徒さんの親御さんにもお話を伺いました。
スカイプレッスンという方法
私はここ何年間か、ご事情がある2家族4人の生徒をスカイプでレッスンをしています。もちろん2〜3か月に1回は会ってレッスンをしますが、毎週の基本のレッスンはスカイプです。音に時差が生じるので、生徒と一緒に弾くことはできませんが、生徒と交互に弾くことはできます。お互いの姿も確認できます。
写真で紹介している樋口さんのご家族は3歳から始めた双子の姉妹で、実希さんと佳純さんです。もう3年になります。今、指導曲集第3巻のバッハの「ブーレ」まで来ました。この家族は父親の晴一さんが私の元生徒で、メンデルスゾーンのコンチェルトまで弾いた人なので、彼がきっちりとサポートをしていますので、順調に育っています。また双子なので合奏レッスンの形態もとれます。
もう一家族はとても熱心なご家族と良く練習をする姉弟です。私がスカイプでレッスンを始めて1年少しになりますが、二人とも楽しく、とても意欲的に取り組んでいます。小学6年の姉は指導曲集第9巻を、小学4年の弟は第5巻を練習していますが、各曲をきちんと仕上げています。
私は、かつて遠隔地に引っ越した生徒を指導曲集第1巻後半から第10巻までビデオのやり取りで教えた経験があり、スカイプでも可能だと思い、この方法を取り入れてみました。
私がこのような方法を取り入れることに違和感がないのは、鈴木鎮一先生に負うところが大きいと思います。
私は小さいときに、母が先生にお願いをして今の「私とおけいこ」のもとになる私用の「私とおけいこ」のテープ(オープンリールのもの)を作っていただき、それを毎日聴いて、4巻から10巻まで育ちました(もちろん毎週の先生はいらっしゃいましたが)。
鈴木先生は「常識の中に眠らず」とおっしゃってどんどんと「新しい文明の利器」を取り入れられる方でした。もし今、ご存命ならば、きっと世界中の子どもたちに毎日スカイプレッスンをしておられたのではないかと私は想像します。
今私たちは、一人ひとりと会ってレッスンをするのが非常に困難な時に直面しています。
こんな時です。レッスンができないと絶望をするのではなく、一度スカイプレッスンをお試しになってみては如何でしょうか?
(ただし、まだ姿勢も決まっていないような初歩の方には、ご父兄が経験者でない限りは、ちょっと無理かなとは思います)
では、実際に遠隔地でスカイプレッスンを受けておられる姉妹のお父様にお話を伺ってみましょう。
・お父様からご覧になられて、遠隔レッスンとしての試みの一つとしてのスカイプレッスンについて、どんなご感想をお持ちでしょうか。
スカイプレッスンの良い点としては、外出することなく、また遠方でもご指導いただける点に尽きると思います。私は仕事の都合で県外に住んでいますが、私同様、子どもたちも(四日市にお住まいの)末廣先生に教えていただきたいとの強い希望があり、スカイプでのレッスンをお願いいたしました。
毎週のレッスンで進捗を確認、ご指導いただく分には大きな問題はないと考えますが、やはり対面でレッスンいただく時の方が、子どもの気合いや集中力が違うと感じています。先生は口頭でしかご指摘できませんので、実際に子どもの姿勢や構え方などを直すのは私の役目になります。実際に身体を動かすため、指導内容がより理解できているように思います。
通信特有の、音のズレなどはまったく問題ありません。親が先生の手となって動くことが秘訣かと思います。
・お嬢さんたちは、いかがでしょうか?
子どもにもスカイプレッスンについて聞きましたが、彼女たちにとっては当たり前のことなので、特に違和感なく受け入れているようです。ただ対面のレッスンの方が好きとのことでした。
・仮にですが、ヴァイオリンのご経験のない親御さんの場合、遠隔レッスンですと、かなり大変なのではないかと思います。そうした親御さんにどんなアドバイスをされますでしょうか。
ご経験のない親御さんですと、まずは先生の仰ることを理解することが大変だと思います。先生の手元をアップにしたりして、時間がかかっても目で確認することが重要と考えます。小さい子どもは、先生に口頭で言われても理解できないので、親が先生の手となって、実際に動かすことになると思います。そのため、まだ小さいお子さんの場合は、先生の口頭でのご指示と親の手が組み合わさって、レッスンが成り立つと思います。そのため、レッスン時、私は常に隣にいます。
・録画などはされるのでしょうか。
スカイプのレッスンでは録画はしていませんが、逆に対面レッスン時は録画して、後からも確認しています。
いかがでしたでしょうか。アイデアをお互いにいろいろと出し合いながら、この難局を切り抜けたいものですね。