8月1日、エル・システマジャパンの菊川穣代表を夏期学校開催中の才能教育本部にお招きし、早野龍五会長と菊川代表による才能教育研究会とエル・システマジャパンの事業協力協定の調印式を行ないました。エル・システマジャパンの活動を展開される上で、「ぜひスズキ・メソードの力を貸して欲しい」という菊川代表の熱い思いに、早野会長が呼応して実現しました。

 本会とエル・システマジャパンとの関係は早野会長と菊川代表の公開対談や、公開外部評価委員会への菊川代表の参加などでのご縁から、今年4月には福島県相馬市と岩手県大槌町からエル・システマの子どもオーケストラが、国技館で行なわれた第54回グランドコンサートの演奏に参加するまでに発展してきました。   

 今回の事業協定では、2017年からスタートしている長野県駒ケ根市でのエル・システマ子どもオーケストラの練習への本会指導者の継続派遣や分数楽器の寄贈協力などを皮切りに、さらに様々な協力をしていくことをめざしています。また、本会とエル・システマジャパンの関わりは、すでにエル・システマの積極的な広報活動を通じて広く紹介されていますが、今後さらにそれを強化していただき、本会の活動が本会会員以外の多くの方に知っていただけるようになることも期待されます。

 エル・システマは1975年に、音楽家であり、経済学者であるホセ・アントニオ・アヴレウ博士が貧困に直面し、教育機会の少ないベネズエラの子どもたちのために始めた公的活動です。「音楽を通じた集団活動ですべての子どもの成長を実現する」という理念は、当会創始者の鈴木鎮一先生の「どの子も育つ 育て方ひとつ」という指導理念と共鳴しています。1969年〜1970年にかけて松本に14ヵ月間、滞在したウィリアム・スター先生が、アメリカに帰国後、ベネズエラにスズキを紹介したのが同じく1970年でした。また、アブレウ博士の右腕のディ・ポロ氏もエル・システマ創設以前に米国で鈴木鎮一先生から教えを受けていました。さらに、1979年に鈴木先生の直弟子であったヴァイオリニストの小林武史氏が招聘されてスズキ・メソードに基づき指導したことが、ベネズエラでのエル・システマの基礎を作りました。現在は世界60ヵ国で多くのオーケストラが結成されるまでに発展し、この活動を通じて世界的に活躍する音楽家やオーケストラが各地で育っています。

 日本ではエル・システマジャパンとして、東日本大震災への復興支援をきっかけに、2012年に福島県相馬市で始まりました。この相馬市の子どもオーケストラは2016年にはベルリン・フィルの招待を受け、ベルリン他のドイツ主要都市で演奏するほどに成長しています。相馬市に続き、岩手県大槌町でも同様の活動が始まり、どちらもスズキ出身の指導者たちが大きく関わっています。2017年からは長野県駒ケ根市で3つめの子どもオーケストラがスタートしました。このように、スズキ・メソードを受け継いだエル・システマ活動が地球の裏側から大きく成長し「一緒にやりましょう」と昔の母屋に戻ってきてくれた、ともいえます。会員の皆さんのご理解ご協力でこの事業協力を大きく発展させていけたら素晴らしいですね。