優勝された関 朋岳さんにさっそくお話を伺いました!

 
 アルメニアのエレバンで開催された、「第20回ハチャトゥリアン国際コンクール ヴァイオリン部門」で、スズキ・メソード出身のヴァイオリニスト、関 朋岳(せき ともたか)さんが第1位を受賞しました。

 
 ファイナルでの関さんの演奏が公開されていますので、まずは、ご覧ください。演奏曲であるモーツァルトとハチャトゥリアンの協奏曲を明確に弾き分けていらっしゃる巧みさに驚きました。モーツァルトでは弾き振りで、小編成のオーケストラを見事にリード。ハチャトゥリアンでは巨大な編成のオーケストラを味方に、繊細にそして大胆に演奏を披露されています。パソコンの画面越しですが、心から堪能することができました。特にハチャトゥリアンでは、冒頭のsulGから惹き込まれました。
 →モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番 ト長調 K. 216
 →ハチャトゥリアン:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調
 
 「第20回ハチャトゥリアン国際コンクール」は、2003年に創設されたコンクールで、「剣の舞」や「仮面舞踏会」の作曲で知られるアラム・ハチャトゥリアンの誕生日である6月6日に開幕するのが恒例です。特色としては、毎年、対象となる部門が異なり、今年はヴァイオリン部門でした。
 
 関 朋岳さんは、守田マヤ先生のもとでヴァイオリンを始め、小学3年の時に、スズキ・メソードのテン・チルドレンに選ばれ、ピアノ三重奏を披露。10歳でオーケストラと共演。2018年の東京音楽コンクールでも弦楽部門第1位を受賞。一方で、弦楽四重奏やピアノ三重奏など室内楽にも積極的です。アニメ「青のオーケストラ」にも演奏者として参加されていました。2023年9月には、バルトーク国際コンクール・ヴァイオリン部門で第2位を受賞。その後も努力を惜しまず精進を積まれたことで、今回、2024年6月の「第20回ハチャトゥリアン国際コンクール」の栄誉につながりました。

 その関 朋岳さんに、マンスリースズキ編集部からインタビュー。1年間のフランス留学から帰国のフライトの時間を使っていただき、丁寧にお答えをいただきました。
 
今回のコンクールで演奏された曲目すべてを教えてください。
 次の曲になります。
1次
・バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ短調 BWV 1003
・パガニーニ:24のカプリース Op. 1, MS 25
・ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第6番 イ長調 Op. 30, No. 1
ハチャトゥリアン:ヴァイオリンとピアノのためのダンス 第1番 変ロ長調

セミファイナル
シューベルト:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ イ長調、D.574 op. 162「グランドデュオ」
ティグラン・マンスリアン:ヴァイオリン・ソロのための「ラメント」
・バルトーク:ヴァイオリンとピアノのための狂詩曲第1番 BB 94a
 
ファイナル
・モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番 ト長調 K. 216
・ハチャトゥリアン:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調
 
 
■ハチャトゥリアン国際コンクールに挑戦されたのは、どんなきっかけからですか?
 
 世界連盟のコンクールなので権威があること、日本人の入賞者が最近出てきていて注目度が高いこと、ハチャトリアンの協奏曲は素晴らしい作品でありながら日本で本格的に演奏できる人がいないこと、個人的に民族音楽を感じるような音楽に興味があること、以上の4つの理由から参加しない理由が見つかりませんでした。
 
■審査員の方々からは、コンクール後になにかお声をかけられましたでしょうか。 とくに、セルゲイ・カャトゥリアンさんやアナ・チュマチェンコさんらから。
 
 チュマチェンコさんとは挨拶を交わしただけですが、優しいオーラのある方です。私の師匠であるシゲティ先生も仰っていましたが、たくさんの音楽家たちからリスペクトされている存在で、ひと目見ればその理由がわかる雰囲気をまとっています。
 
 カチャトゥリアンさんは、以前参加したロン・ティボー国際コンクールでも審査員をされていたので私のことは覚えてくださっていて話が弾みました。カチャトゥリアンさんのみならず、審査員の方たちからは今後のアドバイスもいくつかいただきました。基本的にはどの方も温かい言葉をたくさんくださって、とても良い方たちでした。
 
■「キラキラ星変奏曲にかつては1年間かかったことがあった」とのお話を読んだことがあります。そうした初歩の時代に、どのようなきっかけでいわゆる「スイッチが入った状態」になられたのでしょうか。
 
 理由は分かりませんが、最初は私ではなく、母のスイッチが入ったのだと思います。基本的に毎週のレッスンでは1曲ずつ、多くても2曲のみ合格をもらいますが、それに構わず、常に先回りして数曲先まで練習させられていました。
 
 それにより今考えると驚異的なスピードで教本を終えていて、たしか9歳の時にはメンコンを弾いていたと思います。
 
 私としてはとにかく守田マヤ先生の演奏の真似をしようと、レッスンではあらゆる部分をしっかり観察するようにしていたので、今となってはその時ついた観察力もスイッチを加速させたことの一つです。自分のレッスンのあとは次の生徒さんの見学もしていました。「どの子も育つ、育て方ひとつ」の典型的な例だと思います。
 
 私自身の気持ちにスイッチが入ったのは、高校生くらいだったと思います。上手くなるには当然のことながら厳しい練習をしなくてはならないので苦しかったですが、同時に音楽をすることの楽しさが見い出せた時期だったので、自分から意欲的に練習しようという気持ちが自然と芽生えました。これはアンサンブルの喜びなどを教えてくれた音楽高校の友人たちのおかげだと思います。

 
 守田マヤ先生(関東地区ヴァイオリン科指導者)からもお祝いのメッセージをいただきました。
 
 去年の「バルトーク国際コンクール」第2位から引き続き、今年「ハチャトゥリアン国際コンクール」にて、関君が優勝したことをリアルタイムでは知らず、同僚の先生から知らせていただき知りました。このところ海外コンクールに積極的に挑戦していることは知っており、陰ながら応援はしておりましたので、念願の海外コンクールでの優勝をとても嬉しく思います。
 
 関君は3歳から中3まで私のクラスに在籍していて、割と早い段階からお稽古に目覚めて意欲的に練習をたくさんしてくる生徒でした。
 

2008年の夏期学校「協奏曲の夕べ」に出演した
関さん(右端)。左端にはヴァイオリニストとして
活躍する小川響子さんの姿も

 本当に一生懸命で、夏期学校を含めスズキのイベントにはすべて参加していました。夏期学校オーケストラでモーツァルトを共演させていただいたり、スズキチルドレンコンサートツアーに参加させていただいたり、私としても彼とお母様との楽しい思い出がたくさんあります。

 彼は小さな頃からとても素直で「はい」とお返事も良く、私が言ったことは割とすぐにできるタイプの生徒でした。が、ある程度大きくなってから(10代になってから?)は、私の提案した弾き方で自分の納得のいかない弾き方は絶対にやらないところがありました。とにかく美しく弾くことにこだわりがあり、例えば...ステレオタイプに演奏効果を上げる目的だけではやりたくないことが多々あったようです(返事はいいのですが、笑)。
 
 今思えば、子どもの頃から彼なりの音楽的なこだわりがあったからこそ、今に繋がっているのでしょう。
 
 そんな一面もありましたが、彼は本当に努力家で、「こんなに一生懸命やる生徒なら私も一生懸命教えなくては」と自然と思わせるひたむきさを持っており、だからこそ、私の元を離れてからも良き師との出会いに恵まれたのだと思います。
 
 今でもたまに彼の演奏会を聴かせていただいています。この夏1年間のパリ留学を終え、またどのように音楽が変化しているのか、非常に楽しみにしています。

守田マヤ
 

 母校の東京音楽大学のサイトでも今回の快挙が報じられています。
 →東京音楽大学の記事
 THE VIOLIN CHANNELのサイトでも報道されています。
 →THE VIOLIN CHANNELの記事