平和を願った鈴木鎮一先生とカザルスの思いを込めた「鳥の歌」!
心に響きます!

 
 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、世界を震撼させました。ここで紹介するのは、音楽による連帯、そして心のつながりを得ようと、いち早く動いたシドニーのスズキの皆さんの活動です。
 


 

 2月27日(日)、ウクライナスズキコミュニティに向けて、オーストラリア・シドニーでスズキ・メソードを学ぶ子どもたちと指導者による「鳥の歌」の演奏動画が収録され、その日のうちにでき上がった作品がYouTube動画としてアップされ、ウクライナにプレゼントされました。そのできたてほやほやの動画には、人々の心を繋ぐ音楽の力強さと想いが込められています。
 
 シドニーの後藤晴生先生(ヴァイオリン科)から「親愛なるウクライナのスズキコミュニティの皆様、ここシドニーで集まってPablo Casalsの『Song of the Birds』を演奏しました。皆さんのことを想い、平和が一刻も早く訪れることを祈り、愛を込めて送ります」とのメッセージとともにYouTube動画をご覧いただいたウクライナスズキ協会のNataliia Koptienkova(ナターリャ・コプティンコヴァ)会長は、感激の涙とともに感謝の意を述べられたとのことです。
 
 ナターリャ先生は、ご自身のFacebookで、この心温まる演奏動画への感謝を記し、一方で、毎日のようにキエフの現状を赤裸々に綴っていらっしゃいます。
 
 シドニーから15,000kmの距離があるキエフに送られた動画をご覧ください。指揮をされているのが後藤晴生先生です。そしてこの動画とメッセージをマンスリースズキ編集部に送ってくださったのは、シドニー・チェロ科のブラクストン・ニート先生(前列左端)です。素晴らしい動画をありがとうございました!
 

シドニーのスズキを学ぶ子どもたちから
ウクライナ・スズキコミュニティの皆さんへ

 

 
 
 世界平和を訴え続けた20世紀最大の音楽家のひとり、パブロ・カザルスが1961年11月13日、ケネディ大統領に招かれ、ホワイトハウスで披露した歴史的なコンサートでのアンコールとして演奏されたのが、このカタルーニャ民謡の「鳥の歌」でした。人類の平和を願う象徴ともいえる作品です。
 
 また、ウクライナ出身の音楽家は数多くいます。作曲家のセルゲイ・プロコフィエフ、ピアニストのウラディミール・ホロヴィッツ、鈴木鎮一先生とも交流のあったヴァイオリニストのミッシャ・エルマン、ダヴィッド・オイストラフ、レオニード・コーガン、アイザック・スターンなどなど。1日も早い停戦、そして関係修復の再構築を願います。


最後に、シドニーからこの動画とともに届いたメッセージを紹介します。今回の働きかけには、水島隆郎先生(チェロ科)と奥様の真美さん、松山璃利先生(ヴァイオリン科)のお力添えもありました。
 

  
 オーストラリア、ニューサウスウェールズ州のスズキコミュニティは、ウクライナ国立スズキ協会の同僚や友人たちに連帯と祈りを捧げます。
 今日、先生と生徒の小さなグループがシドニーに集まり、「鳥の歌」の演奏を録音しました。皆さんが直面している深刻な状況を考えると、たいしたことができなくて申し訳ありません。しかし、皆さんの母国で起きている侵略を知り、すぐにでも何かしなければならないと思いました。想像を絶する状況の中で、少しでも皆様の心の支えになればと思います。
 私たちスズキワールドは、美は暴力の醜さに対抗する強力な力であることを知っています。また、私たちは皆、一つの人類の兄弟姉妹であることも知っています。かつてマエストロ・パブロ・カザルスが言ったように、「我々は、この世界を 子どもたちがより美しい心に育つように日々努力しなければならない」のです。
 真理と美を知り、隣人のために尽くすことのできる崇高な心を育むために、スズキの指導者として、また親として、私たちは日々励んでいます。
 私たちは、より良い世界、平和な世界、そしていつの日かまた皆で遊べる世界を実現するために、絶え間なく自らを捧げ続けていきます。
 その日まで、私たちは心をこめてあなた方のために祈り、演奏し続けます。
 
2022年2月27日 オーストラリア・ニューサウスウェールズ州スズキ・会長
後藤晴生