ヴィオラを愛する先生たちが集い、研鑽を深める場、
それがヴィオラ研究会です。
毎年2月頃と9月頃、そして6月の全国指導者研究会の期間中に開催されているヴィオラ研究会。今年は、鈴木鎮一先生生誕120年記念演奏会へのご準備などでお忙しい日々を過ごされておられた豊田耕兒先生のスケジュールを勘案し、10月29日(月)に松本の才能教育会館ホールで開催されました。それでも、ニューヨークで開かれた国際スズキ協会(ISA)のボードミーティングからお帰りになられて1週間後の開催でしたので、豊田先生はお疲れではないかと思いましたが、とてもお元気なお姿で登場されました。会館近くのレストランでのランチミーティングで、お互いの近況を報告しあう中、豊田先生は「みなさんがヴィオラを好きでいらっしゃることがとても嬉しい」とご挨拶。笑みがお顔に溢れていました。
ヴィオラ研究会は、ヴィオラを演奏することが大好きなヴァイオリン科の先生たちによる自主的な集いで、35名ほどの先生方が登録されています。今回、初めてお邪魔してみて、一緒に演奏にも参加させていただきましたが、その居心地の良さとともに、真摯にヴィオラの奏法について、研究を重ねておられる先生方の姿勢と豊田先生を心から慕う姿に、かつて鈴木先生からたくさんの宝物を学び取られていた先生たちの様子がオーバーラップしました。
この日のテーマ曲は、ヴィオラの指導曲集第5巻から2曲が選ばれていました。ちなみにヴィオラ指導曲集は、アメリカのアルフレッドから出版されているインターナショナル版が日本でもアマゾンなどで入手可能です。
・マルチェロ:ソナタト長調(独奏:井上悠子先生)
・ルービンシュテイン:Spinning Wheel(独奏:伊藤達哉先生)
いずれも参加者が見守る中で、独奏役の両先生がそれぞれ演奏を披露。十分な準備をされて来られたことがよくわかる演奏を披露されました。井上先生のマルチェロは、歌心いっぱい。全身でLargoやAllegroを弾き分けていらっしゃいました。伊藤先生のSpinning Wheelは、目にも耳にも鮮やか。1分ちょっとの曲ですが、その小気味いいドライブ感に拍手です。
それぞれの演奏に対して、豊田先生のレッスンが始まります。アーティキュレーションだったり、シフティングだったり、さまざまな豊田先生の音楽が開陳され、それを受講生である先生たちはメモを取り、自分の演奏をブラッシュアップしていきます。一通りのレッスンが終わると、全員でその曲を斉奏。模範となる演奏を聴き、豊田先生のレッスンを受け、すぐに音に出してみる作業は、とても流れがスムーズ。自分で感じていたその楽曲へのアプローチに、1枚も2枚も新しい視点と豊かな分析が加わったことで、面白い体験でした。きっとそれが、その楽曲の世界に一歩近づいたことの証かもしれません。参加の先生方からの質問に豊田先生が応えながら、一緒になって曲の世界を深掘りしていく、まさに「研究会」の面目躍如がありました。
この日は、スウェーデンのスズキ協会代表のPäivikki Wirkkala-Malmqvist先生も参加され、豊田先生のヴィオラをお借りしながら、斉奏されたり、お国の曲を披露される場面もありました。
2時間ほどのレッスンが終了すると、お菓子タイムです。まさに鈴木先生がいらした頃の雰囲気がいっぱいで、レッスンはもちろんですが、このお菓子を食べながらのおしゃべり時間をこよなく愛しておられることが伝わってきました。
また、この日は、ヴィオラ委員長の野田豊子先生のご自宅にあった小林健次先生が演奏されたソノシートを再生していただくサプライズもありました。それが朝日ソノラマから出版された「バイオリン小品名曲集」という本で、昔懐かしいソノシートが何枚も入っている書籍でした。豊田先生によれば、健次先生がジュリアード音楽大学への留学から帰国された頃の録音とのことで、その馥郁たる音色、テンポ感などとても新鮮。古い時代の録音にも関わらず、色あせることのない演奏に聴き惚れてしまった次第です。豊田先生からは、「こういう録音を今の子どもたちに聴かせたい。全音さんにお願いできないだろうか」との提案もいただいたほどです。
お菓子タイムの最後に、参加された皆さんから本日の感想をお話しいただきました。
・こういう会ができて良かったし、たくさんの方が集まって良かった。これからも続けたいですね。
・今日、初めて参加させていただきました。すごく和やかな雰囲気で、こういう場を経験してこなかったものですから、楽しく参加させていただきました。もっとさらってくると良かったなと思いました。
・10月7日の演奏をお聴きして、夏前から練習が始まっているというお話を甲信地区の先生方から伺っていて、自分はなんて怠けていたのだろうと思っていました。それでもあっという間に日常に流されてしまい、今日を迎え、いかに自分ができていないかを実感しました。できるところから一歩一歩進めたいと思います。この研究会の雰囲気が、思ったことをそれぞれが口に出して、提案し合える雰囲気というのがとても大好きで、これからも楽しみにしています。
・今日は聴講させてくださって、ありがとうございます。すごくアットホームな雰囲気で良かったです。スカンジナビアにこの雰囲気を持ち帰りたいくらいです。
・こういう機会がないとヴィオラを練習する必要がないので、すごくいい機会になりました。
・いつも指導して、子育てをしていて、同じ生活を繰り返していますが、この場で仲間たちが演奏し、そして私自身も吸収するものがたくさんあることがとても嬉しいです。毎日のサイクルから抜け出すこともいいし、このティーパーティもすごくいいです。来て良かったと思います。
・自分の雑多な生活を浄化するような気持ちで、今日はヴィオラを弾かせていただきました。豊田先生を慕うみんなの気持ちが、この雰囲気を作っているのだと改めて思いました。
・初めて松本に来た20代の頃、音高生のレッスンの後にお茶を飲む場があったのですが、まさにこの雰囲気なんですね。ヴィオラの会は、本当にいいですね。この雰囲気を大事にしてもらいたいですね。
・スズキの世界が、こうやって繰り返す形で伝承されていく姿を体験でき、うれしく思います。
・この研究会の準備から携わって来て、本当にワクワクする気持ちで今日を迎えました。この雰囲気を生徒たちに伝えたいなと思い、充電が満タンになりました。
・自分の音がいいというわけではないのですが、ヴィオラの音が好きで、ここに来るのが楽しみです。年齢も様々で素敵です。
・豊田先生の音を大切にされるレッスンを受けられ、この幸せな時間がずっと続くことを願っています。
・こうして学べる場があることが、本当に嬉しいです。
・音楽の高いところを常に目指さなければならないんだなと改めて思いました。
次回のヴィオラ研究会は2019年2月。曲目も決まり、豊田先生からのリクエストで以下の2曲になりました。この2曲も第5巻に収録されています。
・ボーム:無窮動
・マレ:古いフレンチダンス
ヴィオラの指導曲集の購入を希望される方は、アマゾンのサイトが便利です。
→Suzuki VIOLA SCHOOL Volume 5