10月22日、ヴァイオリン部門で大関万結さん(山澤敦子先生クラス出身)が第1位。
10月23日、チェロ部門で香月麗さん(故 久保田顕先生クラス出身)が第1位。
東京オペラシティで開催された、第86回日本音楽コンクール(主催=毎日新聞社・NHK、特別協賛=三井物産、協賛=岩谷産業)の本選会において、ヴァイオリン部門が大関万結(おおぜきまゆ)さん、チェロ部門が香月麗(かつきうらら)さん、と2日続けて第1位受賞! また、ヴァイオリン部門第3位には、岸本萌乃加さん(河井直人先生クラス)も。会場は、連日にわたりスズキ・メソード出身のみなさんが受賞するビッグニュースの喜びに包まれました。
→シベリウスのヴァイオリン協奏曲を見事な表現力で弾ききった大関万結さんの記事
→シューマンのチェロ協奏曲を豊かに、端正に弾ききった香月 麗さんの記事
マンスリースズキ編集部では、大関万結さんご本人へのインタビューに加え、万結さんを教えてこられた関東地区ヴァイオリン科指導者の山澤敦子先生に、教室に通われていた頃のお話を伺いました。そして香月麗さんからも喜びのメッセージを、そして、麗さんを支えてこられたお母様の香月千里さんにもお話を伺いました。お楽しみください。
・大関万結さんご本人へのインタビュー
・山澤敦子先生からのお話
・香月麗さんからのメッセージ
・香月千里さんからのお話
・NHKでの放送予定
大関万結さんにインタビュー
・どんなお気持ちで、今回のコンクールに臨まれましたか?
今回のコンクールは今後の私の道を左右するもので、すべてを注ぎ込み、相当な覚悟で臨みました。
・予選、本選と進むに連れて、気持ちの中での変化は、どんな感じでしたか?
特に変わりはありませんでした。ただ私は、シベリウスのヴァイオリン協奏曲をみなさんに聴いていただきたいという思いがものすごく強かったので、本選まで行けたら、あとはもうコンクールというよりも、自分がどれだけお客様に演奏を届けられるかだと思っておりました。ですので本選出場が決まってからの1ヵ月間は、演奏会を心待ちにしている感じで、とても楽しかったです。
小学2年生の時に出演したチルドレンコンサートのリハーサルにて・第1位受賞、聴衆賞、そして今回より新設された名器賞の受賞として、ストラディヴァリウスが貸与されることになり、今のお気持ちは、いかがですか?
第1位と聴衆賞をいただけて、審査員の先生方とお客様、どちらにも届いたのかなと思うととても嬉しい気持ちです。楽器に関しては、ストラドというよりも良い楽器を握れるということに嬉しさを感じております。楽器と会話をしながら自分の音にしていく過程がとても楽しみです。
2009年のグランドコンサートにてヴィヴァルディの四季の春を演奏・スズキ・メソードで教わっておられた当時の1番の思い出は、どんなことでしたか?
たくさんあるので絞るのが難しいですが、いつも楽しみにしていたのは、月に一度ある合奏の日のおやつの時間です。どんな内容を話していたのかはもちろん覚えていないですが、お兄さん・お姉さん方や同年代の子たちとたわいのない話をしながら、おやつを食べていたことは、幼かった私にとって、ささやかな楽しみだったことは確かです。思い返すと懐かしいことばかりで、思わず笑みがこぼれます。
松本のジュニアクラスに通っていたころ、松本城にて・「今後の道を左右するコンクールだった」とのことですが、第1位になられて、この先、どんな道を歩まれることになるのでしょうか。
素敵な出会いがあるであろうことをワクワク期待しながら、自分の理想とする音楽家となれるよう精進してまいりたいと思います。
・現在、スズキで学ぶ子どもたち、親の皆さん向けに、万結さんからのメッセージをお願いします。
音楽は必ず人生の助けになってくれます。音楽はいつでも心に寄り添ってくれます。大切なパートナーとなると思います。ですので、どの楽器であっても、音楽を続けていただきたいです。
山澤敦子先生にお教室での様子を伺いました。
大関万結ちゃんが私の教室に来たのは3歳前でした。
3歳になるのを待って、楽器を持つレッスンを始めました。始めるにあたって、ちょうど同じ年の男の子が少し前に始めていたのですが、万結ちゃんのお母様が「これから切磋琢磨していきましょうね」とおっしゃったことが鮮明に記憶に残っています(後に、彼もテン・チルドレンに選ばれました)。
2年生の時にヴィヴァルディのイ短調の卒業テープでテン・チルドレンに選んでいただいて、「ラ・フォリア」で名古屋、松本、東京で演奏させていただきました。豊田先生のレッスンを受けている時も、先生が一生懸命に子どもにもわかるようにと言葉を選んで説明してくださるのですが「わかるかな」に対して「意味不明」!もう冷や汗ものでした。
その後、曲が仕上がるたびに、豊田先生のジュニアクラスでレッスンを受けることになりました。八王子からあやとりをしたり、じゃがりこを食べながら 松本に通ったのは楽しい思い出です。
教室では弦楽合奏に入るのも弦楽の合宿に行くのも、最年少の記録を塗り替えていきました。でも特別感はまるでなく、ごく普通に上級生のお姉さん、お兄さんたちに可愛がられていました。
万結ちゃんのご両親はとても謙虚な方です。万結ちゃんが演奏の後などでちょっと得意げな時など「あ、得意げになってるな」とおっしゃって諌めておられました。そういう教育方針に加え、相手の良いところだけをどんどん吸収していく力が今の万結ちゃんの音に表れていると思います。
私の指導者歴25周年の時には、前出の男の子と弦楽伴奏でバッハのドッペル全楽章を弾いてくれたことも良い思い出です。
身体は細くて小さかったけれど、丈夫だったのか、お母さんの体調管理が良かったのか、レッスンも合奏レッスンもほとんど休んだことがなかったです。これも物事をやっていく上で大切なことだと思いました。夏期学校でモーツアルトを弾いた時もテン・チルドレンでの演奏でもステージを常に楽しんでいる姿は今でも変わらないなと思います。
これからも応援していきたいと思います。
香月麗さんからのメッセージ
私が名古屋を離れて、東京でチェロを勉強し始めてから早6年が経ちました。音楽史や理論、ソルフェージュなど勉強し、友だちからたくさんの刺激を受けましたが、一番チェロを弾くときに大切にしているのは鈴木先生のお言葉の「音に命あり」です。美しく深いお言葉だと思います。現在、師事しております倉田澄子先生の教えにも通じるところと感じています。
音に込められた思いをくみ取り、命を吹き込んでお客様に伝えることができたらと、いつかそんな演奏ができることを信じて日々精進しています。
そして今回のコンクールでも、その思いを目一杯込めて歌いました。
天国にいらっしゃる久保田顕先生にも聴いていただけたと思っています。きっとこれからも、どんな本番にも聴きにみえると思うので、先生に届くように、喜んでいただけるように心を込めて弾きたいです。
お母様の香月千里さんにも伺いました。
このたびの受賞に際し、スズキ・メソードでお世話になりました多くの方々から、お祝いのお言葉を頂戴し、この受賞の重みを感じております。
久保田クラスのクリスマス会で、兄妹で「狩人の合唱」を演奏 4歳年上の兄がキラキラ星を弾けるようになった頃、娘はお腹に宿りました。胎児の頃からスズキ・メソードの環境で育っていたことを娘が10歳の時のクラスコンサートに聴きにみえていたお客様から「君はお腹の中からチェロを弾いていたんじゃないか?」と娘に言われ、ハッと気づかされました。
当時の娘はチェロを弾くことは好きでも嫌いでもなく、おそらく月1回の合奏でチェロのお友だちに会うために、またヴァイオリンを習う兄と一緒に夏期学校や関東地区で学ぶ従兄弟たちと参加できるグランドコンサートへ旅行気分で出掛けることが楽しくて、弾いていたように思います。
久保田クラス岐阜教室のクラスコンサートに飛び入り参加のピッコリーナトリオ 転機となったのは娘が5年生の時、東海地区のアンサンブルコンサートでピアノトリオを初めて経験させていただき、さらに翌年テン・チルドレンに選出され、その時もピアノトリオを組ませていただき、様々な場面で演奏の機会を与えていただいたことからかと思います。
一番の思い出は、鈴木先生のぬくもりを感じる鈴木鎮一記念館で演奏させていただいたことでしょうか。豊田耕兒先生に「ブラボー」をいただき、子どもたち以上に久保田先生がお喜びになっていらっしゃったことが懐かしいです。
また、2005年から毎年1回、林 峰男先生のマスタークラスに参加させていただきましたことも、娘のチェロの世界が広がるきっかけとなりました。
振り返ってみて、娘が一番苦労したことはチェロ椅子に座ることではなかったかと思います。リズムさんの頃、何度となく久保田先生に「お椅子に座れない子はチェロは来ませんよ」とお叱りを受けておりました。それはそれは長い期間、リズムさんをやっておりました。リズムさんが長い分、聴く勉強はたっぷりできたので、それはそれで良かったのかと今は思います。忍耐強く待っていてくださった久保田先生に感謝です。
今回の本選会、娘が楽屋から舞台に出る5分前に届いた廣岡クラスの皆さんから届いた応援メッセージ!どれだけ励みになったか分かりません 今師事している倉田澄子先生との出会いは、夏期学校のマスタークラスに倉田先生がいらっしゃっり、受講したことがご縁です。5年前、病床につかれた久保田先生を見舞う娘に、倉田先生は「久保田先生、麗ちゃんはちゃんと育てますから安心してください」というメッセージカードを託してくださいました。今回の結果を天国の久保田先生に報告できることが何より嬉しい私たちです。
息子が入会してから今日まで、スズキのお母様方や諸先輩方、一緒に学んだ仲間たち、かわいい後輩たちに、私も子どもたちも励まされ、支えていただきました。久保田先生ご逝去後も楽器や支部の垣根を越え、娘を見守ってくださいました先生方に深く深く感謝いたします。この場をお借りしてお礼申し上げます。ありがとうございました。
ラジオ放送「NHK-FM」 いずれも19:30~21:10 |
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ピアノ部門 | 11月 8日(水) | |||
バイオリン部門 | 11月 9日(木) | |||
チェロ部門 | 11月10日(金) | |||
声楽部門 | 11月14日(火) | |||
ホルン部門 | 11月15日(水) | |||
作曲部門 | 11月16日(木) |
テレビ放送「クラシック倶楽部」(NHK-BSプレミアム) いずれも5:00~5:55 |
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ピアノ部門 | 12月11日(月) | |||
バイオリン部門 | 12月12日(火) | |||
チェロ部門 | 12月13日(水) | |||
声楽部門 | 12月14日(木) | |||
ホルン部門 | 12月15日(金) | |||
作曲部門 | 12月18日(月) |
■ドキュメンタリー放送
「第86回日本音楽コンクールドキュメント」(NHK Eテレ)
12月9日(土) 15:00~