品川ストリングオーケストラ海外演奏旅行記念コンサート Vol.7
~第28回 国際音楽祭ヤング・プラハ参加&ドイツ・ニュルンベルクコンサート~
今夏、スズキ・メソード 品川ストリングオーケストラが、7回目となるヨーロッパツアーを行なうこととなり、その渡航を記念するコンサートと壮行会が7月14日(日)に大田区民プラザにて行なわれました。
品川ストリングオーケストラ海外演奏旅行記念コンサート Vol.7
2019年7月14日(日)13:00開演
入場料:2,000円(全席自由)
曲目
・バッハ:ブランデンブルグ協奏曲 第3番 ト長調 BWV1048
・モーツァルト: ヴァイオリン協奏曲 第3番 ト長調 K.216
・日本古謡(林きらら編曲):「さくらさくら」弦楽合奏版
・横山真男:「草津節」の主題による弦楽合奏のための狂詩曲
・ドヴォルザーク:弦楽セレナーデ ホ長調 Op.22
この日の品川ストリングオーケストラのコンサートは、ヨーロッパに出発する生徒さんたちを応援する聴衆の温かな雰囲気の中で、開催されました。冒頭のブランデンブルグ協奏曲は、しっかりした練習の成果が随所に見られ、律動感とともに爽やかさも感じられました。
続くモーツァルトの協奏曲第3番は、初期の頃からツアーに参加されて来られたヴァイオリニストの印田千裕さんの安定した独奏に、オーケストラメンバーも安心して身を任せるという好循環が感じられました。互いが聴き合い、協奏曲を奏でることの喜びがそこにあるのです。実際のツアーでは、現地のソリストとの共演が予定されているとのことで、また作り込みの作業が変化するでしょうが、そのこともオーケストラのフレキシビリティを高める効果があるはずです。アンコール曲は、パガニーニの超絶技巧曲として知られる「24のカプリース Op. 1 - No. 10 in G Minor: Vivace」を演奏。見事でした。
一転して、日本を感じさせる「さくらさくら」。日本音楽を特徴付ける陰旋法が使われ、私たち日本人にとって、とても大切な曲です。ドイツで、チェコでどのように届けられるか、とても楽しみです。
続く「草津節」の主題による弦楽合奏のための狂詩曲は、明星大学情報学部情報学科の横山真男准教授の編曲による作品。ミラノ工科大学客員研究員としてクレモナのヴァイオリン博物館の研究員もされ、ヴァイオリンの音色などに関するユニークな研究を重ね、チェロも弾かれる異色の経歴の持ち主です。この「草津節」では、ヴィオラにソロの大役を与え、雅楽と浪曲を重ね合わせたような独特の世界観を与えていました。オーケストラメンバーにとって、とても演奏しがいのあった作品だったのではないかと思わせました。
ラストはドヴォルザークの弦セレ。冒頭からの人懐こい、抒情的なメロディに、ボヘミア地方の大草原を思い浮かべてしまいました。印田礼二先生の端正なタクトは、この曲の持つ奥行きと深みを見事に生徒たちに表現させていました。プラハ市中心部にある市民会館のあの素敵なスメタナホールでの演奏で、必ずやチェコのみなさんを魅了するでしょう。
大きな拍手の後に演奏されたアンコールは、グリーグの「ホルベルク組曲」。そして短く編集されたスメタナの「モルダウ」。9月1日のスメタナホールでの演奏会で、最後の最後に演奏されるとのことです。思い入れたっぷりの、少しゆっくりめなテンポの「モルダウ」は、メンバーたちの今度のツアーにかける意気込みを感じさせるものでした。
終演後、ホワイエで開かれた壮行会には、メンバーを始め、ツアー関係者が多く集まり、激励の言葉がたくさん聞かれました。1964年の東京オリンピック以来、女子体操選手、そして親日家として活躍されて来られたチャスラフスカさんとのエピソードや、ドヴォルザークのお孫さんの前で演奏された「ユーモレスク」の思い出などが紹介されました。「1997年に開催された第1回ツアー以来、22年が経て感無量であること。体調を整えて、元気に帰国されるよう願っています」という激励の言葉もありました。「草津節」を編曲された横山真男さんもお祝いの言葉の中で、「この曲はプロの音楽家のために書いた曲でしたので、今日は若いみなさんが演奏してくださったことに感謝しています。演奏のポイントは、音色です。綺麗に弾くよりも、ガギグゲゴのように真逆に弾いてくださるイメージを抱いて欲しいです。それとノリがもっとあってもいいかな。あとはバランス。立体的な音楽を目指してくださると嬉しいです」とアドバイスをいただきました。ソリストの印田千裕さんからは、「第1回と第2回に参加していて、懐かしいです。今回のツアーに行かないのは私だけで、寂しいですが、チェコのヴァイオリニストは、きっと私とテンポも違うし、音楽性も違うと思います。でもそこで音楽性を感じて、本番を楽しんでいただければと思います」。息子さんが4回目の参加となる母親からは、「品弦は、ただうまく演奏する団体ではありません。品弦の精神が脈々と受け継がれています。今回も高校生や大学生がその力を発揮してくださいました。ツアー後には、きっと宝物の引き出しがたくさんあるはず。22年間継続されて来られた先生方、お母様方の応援に感謝します。本番はあっという間に終わるでしょうが、出発に向けて励んでください」。そして、保護者会からは生徒たちに記念ステッカーと写真が進呈されました。その後、生徒代表による決意表明。「初めて行ったウィーンでたくさんの経験をしました。演奏後の観客席の光景を見て泣いた思い出とか、大学生の皆さんにお世話になったこととか、泣きながら練習したこととか、今回のツアーも記憶に残るツアーにしたいと思います。残り1ヵ月をどう過ごすか、これは自分たちの問題です。がんばっていきましょう」。最後に印田礼二団長から「音楽は、人間にとってなくてはならないもの。音楽は一生のものです。お母様、お父様に感謝しています。みんなが音楽を楽しめ、これからも一生音楽を続けていきたいなと思えるツアーになればと思っています」と締めくくられました。
■出演した生徒たちからのメッセージ
私はオーストリア、チェコの2回のツアーにヴァイオリンで参加しました。しかし今回はヴィオラトップとしてツアーに参加することになり、過去のツアーとは違う感覚でした。ヴィオラはメロディを弾くことはあまりなく、リズムを刻むなど目立たないかもしれません。しかし、その刻みが他のパートを支えるなど、影でサポートしています。また、ヴィオラは他のパートのを聴きやすいので楽しく感じます。このようにヴァイオリンでは感じられなかった楽しさを今回感じることができました。
今回、「草津節」の主題による弦楽合奏のための狂詩曲のソロを弾かせていただくことになりましたが、弾き方が難しく、悩むことがたくさんありました。尺八をイメージした音や、和楽器ならではの奏法などを弦楽器で再現することがとても難しかったです。
本番では作曲者の横山真男先生が聴きに来てくださり、ご助言をいただくことができました。そのご助言を参考にして、もっと上達するよう努力したいと思います。
ツアーでは、今までで一番の演奏ができるようにがんばりたいと思います。そして、ヨーロッパの音楽の文化にたくさん触れたいと思います。
(大1)
メンバーの皆様、日本公演お疲れさまでした。そして僕らの演奏を聴きに来てくださった皆様、本当にありがとうございました。
僕は今回のツアーで3回目になります。海外は、日本だとすごく些細なことでも海外だとずっと記憶に残る特別な場所で、僕が初めてツアーに参加したのは6年前ですが、ツアー最後のコンサートが終わった後の客席の様子は今でも鮮明に覚えています。何年経った後でも記憶に残る場所でコンサートをやるからこそ、悔いの残らない演奏をドイツ、チェコでしていきたいと思います。
日本公演の演奏は素晴らしかったですが、公演後にいただいたメッセージや課題の指摘などを踏まえ、自分たちはもっと成長できます。そのためには先生方、そして保護者の皆様のお力も不可欠なので、残り1ヵ月よろしくお願いします。
(高3)
臼井先生の下で、3歳からチェロを習い始めましたが、小2でシカゴに引っ越しました。英語はできなくても音楽用語は通じたので、アメリカ人のチェロの先生と意思疎通はできました。また、地元の交響楽団にも入り、友だちもすぐにできました。小学校の授業でトランペットを習い、中学ではアルトサックス、高校では授業でマーチングバンドをとり、テナーサックスを吹きました。ラビニア音楽祭でイツァーク・パールマンのヴァイオリンやシカゴ・フィルなどの演奏を家族や友だちとピクニックをしながら楽しみました。アメリカでは気軽に、身近に音楽があったように感じます。
一昨年帰国し、臼井先生クラスに戻り、とてもタイミングよく このツアーに参加できました。今回ドイツ、チェコといった歴史ある土地、すばらしい施設で演奏することを楽しむだけでなく、いらした方々にも楽しんでいただけるように、残りの1ヵ月練習に励みます。横山真男先生がおっしゃっていたように、日本の音楽性を出し、聴いた方に感じてもらえるように「チャンチキ」を工夫したいです。アメリカでは言葉が通じなくても音楽でコミュニケーションがとれたので、ツアーの滞在期間は短いけれど、演奏を通して多くの人と出会いたいです。そして、ドイツとチェコでもアメリカのように音楽が身近なものなのか、感じて来たいです。
(高2)
今回のツアーは、私にとって2回目です。一年半前からみんなで一生懸命練習してきました。前回のツァーの時、小学6年生でした。ドヴォルザークホールで演奏した後の、息がまともに吸えないくらいの興奮と、ドキドキで胸がいっぱいになった気持ちは、中学3年生になった今も、昨日のことのように思い出します。
今年の夏はドイツとチェコに行きます。ドイツは初めて行く国です。ベルリン・フィルを聴いてから、ドイツは憧れの国です。私の使っている楽器もドイツ生まれです。一番楽しみにしているのは、ドイツの方たちとの交流です。前回は、チェコで手作りのお料理のおもてなしを受けたり、共演した合唱団とのレセプションに参加させていただきました。たくさん話しかけてくれて、言葉が分からなくても、身振り手振りで話せたのが楽しかったです。ドイツのすべてを私の中のアンテナをたくさん立てて、見て話して感じてきたいと思います。
二度目のチェコでは、大好きな作曲家、ドヴォルザークの弦楽セレナードをメイン曲として、プラハで一番大きなホールで弾きます。チェロのソリもあります。緊張しますが、ドヴォルザークの故郷のチェコの人たちの心に残るように、精一杯演奏します!
(中2)
日本公演では、草津節のsoliの部分を弾くことになり、最初は不安でしたが、本番では全力を出せたと思います。soliを日本公演で弾かせていただけたのも、とても良い経験となりました。
初めてのツアーで、1週間以上海外に滞在することに不安もありますが、とても貴重な経験をさせていただけるので目と耳と心、すべてでドイツやチェコを感じてきたいと思います。また演奏では、今までの練習のことを思い出し、本番でその成果を発揮できるよう、ツアーまでの時間を有効に活用していきたいと思います。
(中2)
私は、8年間、品川弦楽団で演奏させていただきました。2013年のウィーンへの演奏旅行に参加させていただきましたが、演奏旅行に限らず、演奏家の方々とのジョイントコンサートなど、たくさんの経験が自分の成長の場となりました。今回のコンサートで私は卒業することとなりましたが、本番だけでなく、日々の練習や合宿で得た、自信や忍耐力、仲間は、私にとって大きな財産となりました。中学生から大学生まで、幅広い年代が所属するオーケストラだからこそ、様々な立場を経験することができました。入団当初は不安と緊張でいっぱいだった私ですが、今ではたくさんの後輩を持つ立場となって、それぞれの年代の気持ちが分かるようになり、気がつけば、どうしたら皆を支えられるのだろうか、と考えるようになっていました。10代という時期に、貴重な経験をさせていただけて光栄です。最後のコンサートで、たくさんの拍手をいただけて幸せでした。ここで得たものを自信に変えて、これからもがんばっていきたいと思っています。
(大4)