特別講師 ご挨拶

 
 この4月より、特別講師として着任された10名の先生方にもオンラインでの全国指導者研究会に参加いただきました。例年ですと、まつもと市民芸術館主ホールのステージでご挨拶をいただいた後に、各科ごとのワークショップで、研究を重ねる貴重なレッスンを受けたり、ご一緒にお食事をいただきながら、4日間、親しく交流をさせていただく特別講師の皆様ですが、今回はそれが叶いません。画面を通して、スズキ・メソードとの関わり、そして今の思いを皆様に語っていただきました。
 
◉東 誠三先生(特別講師長・ピアノ科特別講師)

 特別講師の体制が、今年の4月から新しくなりました。ともに音楽を研究する良い交流の場を、皆様と一緒に作っていきたいと思っております。
 
 ところで、先生方の中でオンラインレッスンをされている方、どのくらいいらっしゃいますか? 画面の中で手を振っていただき、ありがとうございます。実は私もオンラインレッスンをかなり実施しています。悪い点は、音の質が本物のようにいきません。弦楽器ですと、弓のアップダウンが逆に見えることがあると、音大の同僚から聞きました。良い点は、生徒さんの顔を見て話せますし、表情の変化が読み取れることです。カメラをじっと見つめてくださるので、互いに真剣になります。このオンラインでのレッスンはしばらく続くでしょう。先生方もお身体に気をつけて、お続けいただければと思います。
 
 それと、3年ほど前からスタートしました東京大学との共同研究の第2弾について、指導者サイトとマンスリースズキ6月号の中でわかりやすく紹介させていただきました。今年は、ピアノ科の前期高等科卒業の生徒さんを対象に考えており、大変貴重な体験となりますので、特に関東地区の先生方にお読みいただき、生徒さんにもお伝えいただければと思います。どうぞよろしくお願いします。
 


◉竹澤恭子先生(ヴァイオリン科特別講師)

  
今日は、この画面の中に、幼少の頃に大変お世話になった先生方のお顔が拝見でき、とても懐かしく思いますとともに、身の引き締まる思いです。3歳からスズキ・メソードでお稽古を続けてきました。たくさんのことを学びましたが、私が今日音楽家として生きていく上での大切な土台を、スズキからいただきました。鈴木先生の「音にいのち在り」という言葉があるわけですが、毎回のレッスンが生きた音とは何か、それを聴き分け、追求することを厳しく教えていただきました。このことが、私の音楽作りの中で、最も大切にしていることになります。今の私を支えていてくれると実感しています。
 
 私にとって、教えることは新しいチャレンジになります。先生方の教えを噛みしめ、紐解きながら、先生方とともに歩んでいけたらと思います。
 
 この時代で、通常のレッスンができない状態です。私自身も予定しておりましたコンサートは、ことごとく中止または延期になりました。この状況は続くと思いますので、この中で、いかにして質の高いレッスンができるか、解決すべき課題だと思います。試行錯誤しながら、私もオンラインレッスンをしております。コミュニケーションをする機会が増えた利点を通して、全国の生徒さんと触れ合いたいと思っています。難しい時代ですが、先生方と一緒に前に進んでいきたいと思います。
 


◉江口有香先生(ヴァイオリン科特別講師)

 ニュージーランド在住ですが、こうやって参加させていただけること、大変ありがたく思っています。お世話になった先生方のお元気な様子や、幼なじみが先生になっていらっしゃる姿を画面から見ることができ、ついニヤニヤしてしまいます。

 スズキを離れてから35年経っているのですが、いまだに成長しておりませんで、「教える」というよりは、子どもたちと一緒に遊んだり、弾いたりするのが得意ですので、そんな私ですが、先生方のお手伝いができれば嬉しく思っています。本当に微力ですが、どうぞよろしくお願いします。また、お会いできるのを楽しみにしております。
 


◉荻原尚子先生(ヴァイオリン科特別講師)

 高校を卒業するまでスズキ・メソードでヴァイオリンを
学びました。今、親になり、子どもがヴァイオリンを学ぶようになって、改めて鈴木先生の哲学を再認識するようになりました。私の母は、鈴木先生の教えを心の支えにしており、それが一度たりともぶれることがありませんでした。そういうわけで、子育て真っ只中にいる身ですが、スズキの先生方、そして特別講師の皆様の中で、たくさんのことを学びたいと思っています。
 
 身体いっぱいにヴァイオリンの喜びを教えてくださった吉野淳子先生、豊田耕兒先生への橋渡しをしてくださった長谷部直子先生、そして音楽家としてのあり方、どのように作曲家に向き合うかを教えてくださった豊田先生に、大変お世話になりました。この場でお礼を申し上げさせていただきます。
 
 スズキ・メソードの発展のために、少しでもお力になれたらと思っています。どうぞよろしくお願いします。
 


◉倉田澄子先生(チェロ科特別講師)

 私は、スズキ・メソードの出身ではないのですが、
不思議なご縁がたくさんあります。私の父(倉田高)の大親友だった鈴木喜久雄さん(鈴木裕子先生のお父様)が作ってくださった4分の3のチェロを最初に使っていたのです。小学校4年か5年の頃です。とても嬉しかったのを覚えています。

 そして、鈴木先生のお父様の政吉さんのチェロを持っていますので、そのチェロを使って、松本の夏期学校や鈴木鎮一記念館でコンサートをさせていただいたこともありました。
 
 10年くらい前の夏期学校で、小学生の優秀な生徒さんたちと出会いました。その皆さんが、昨年からハンガリー、ドイツ、スイスに留学していますが、今は自粛生活をしながら基礎練習に励んでいます、とお知らせいただいたりしていて、スズキ・メソードとはとてもご縁があります。
 
 50年くらい前になりますが、私の先生でもあるトルトゥリエ先生が初来日された時に、ごちゃごちゃした日本をご覧になられて「サーカスみたい」と感じられたのです。そして「3Sが大切」ともおっしゃいました。Space、Silence、Solitude。空間、静けさ、そして孤独です。「それが必ず人類に必要になるよ」とおっしゃいました。今、世界中が大変な時ですが、今になってトルトゥリエ先生のお話がわかります。
 
 これからの世界、子どもさんたちには勇気を持って飛び込んでいって欲しいと思います。私たち大人もがんばりましょう。ありがとうございました。
 


◉山本裕康先生(チェロ科特別講師)

 小学2年の終わり頃から高校生まで、中島顕先生のもとでチェロを学びました。中学はバスケットボール、高校では硬式テニスに熱中していましたので、先生には、この場を借りて、ご心配をかけましたこと、謝りたいと思います。

 昨年亡くなられました名古屋の大沢美木先生のもとで、弦楽合奏団に参加させていただいておりました。高校2年の時に参加した東ドイツへの演奏旅行では、バッハの眠る聖トーマス教会などが、強く印象に残っています。その時の指揮者でいらした堤俊作先生やソりストとして参加されていた林峰男先生から、チェロの道に進むならと井上頼豊先生を紹介いただいたのが、今に至る大きなきっかけとなりました。
 
 今がここにあるのも、スズキ・メソードで教わったことが大きいですし、多くの先生方にお世話になりました。こういう形で恩返しができますこと、大変嬉しく思っております。
 
 夏期学校に何度も参加させていただきましたし、ここ何年もサイトウ・キネン・オーケストラ(セイジ・オザワ・松本フェスティバル)でお世話になっていますので、松本は第2の故郷でもあります。今回、スズキでも松本に縁が再び生まれましたことを、とても嬉しく思っています。
 
 今、誰とも会えない状況ですが、余計に人と向き合って話をすることが本当に大切なんだなと改めて知りました。先生方と直接にお会えできる日を楽しみにしております。どうぞよろしくお願いします。
 


◉菊地知也先生(チェロ科特別講師)

 6歳から12歳まで佐藤良雄先生にチェロを習いました。先ほど、1971年の全国指導者研究会の鈴木先生のビデオを拝見しましたが、その年にチェロを始めたことになります。あのビデオを見て、「どの子も育つ」「音にいのち在り 姿なく生きて」という鈴木先生のお言葉を6年間聞いていたことが思い出されました。鈴木先生のエネルギッシュな楽しいお人柄が感じられます。短い6年間でしたが、この時に得られたことが、今の私につながっています。

 その6年の最後くらいに、参加していたジュニアフィルオーケストラのメンバーとしてアメリカに演奏旅行をしたことがありました。演奏曲が何十曲もあり、大変だったのですが、その機会をスズキの先生方がくださったことに感謝しています。
 
 私もオンラインレッスンをしています。今の回線の状況では、レッスンがやりにくい状況ですが、質の高いレッスンを維持して、生徒さんが音楽を自分の人生の中に取り込めるまでしていくことが、スズキ・メソードの役割であり、私の仕事でもあるかなと思っています。微力ではありますが、お役に立てればと思っております。どうぞよろしくお願いします。
 


◉宮前丈明先生(フルート科特別講師)

  アメリカ・ペンシルバニア州のピッツバーグから
参加しています。直接お会いできず、ワークショップができないことはとても残念です。実行委員会の先生方の無念なお気持ちを共有し、これからのポジティブな気持ちに切り替えたいと思います。

 新型コロナウイルス感染の問題は、必ず終わります。ですが終わり方が、かつてのSARS(サーズ)のように終息を迎えるか、それともインフルエンザのように人間と共生していくのか、はっきりしているのは、以前とは同じ生活スタイルには戻れないだろうということです。
 
 私たちにできることは2つです。1つは、オンラインレッスンの利点を可能な限り探し出し、研究することです。2つ目は、これまで以上にオンラインのメディアを使い、国内外へのスズキの発信力を高めることです。フルート科では、指導法や過去の指導者研究会のレクチャー内容の一部を一般公開用にアレンジして、スズキの知的財産を守りつつ、昨年から準備を進めていますので、早期に実現したいと思っています。
 
 生の演奏ができること、みんなでアンサンブルができること、生徒さんに対面でレッスンできることは最高のことです。それがわかっているだけに、オンラインでも研究を深めたいと思います。「ピンチはチャンス」です!
 


◉臼井文代先生(ピアノ科特別講師)

 これまでピアノ科の卒業録音を聴かせていただき、
ヴァイオリン科・チェロ科・フルート科の伴奏でお手伝いをさせていただいてまいりました。今後は、ピアノ科の先生方とご一緒させていただく機会が増えますことをとても楽しみにしています。

 1996年から20年ほど、国際スズキ・メソード音楽院の音校生の伴奏とピアノのレッスンをしてきました。学生の皆さんが、楽器の上達はもちろんのこと、人間的にも成長され、指導者になられる姿をとても頼もしく拝見してきました。
 
 私は、4歳からピアノとヴァイオリンを習いました。ヴァイオリンは途中でやめてしまいましたが、高校生の頃、音楽部室内楽班で演奏したことは楽しい思い出です。スズキ・メソードには4つの楽器がありますので、今後、ますますアンサンブルでの交流が増えれば、素晴らしいことだと思っています。
 
 「コロナ後の社会におけるスズキ」を考えていく時に、世界の子どもたちに、この音楽文化の裾野を豊かにするために果たすスズキの役割が大きいと感じます。このような時だからこそ、スズキを伝える先生方の日々のお仕事の尊さを思わずにはいられません。
 
 「音にいのち在り  姿なく生きて」の言葉が、とても好きです。子どもの頃から、スズキで1音を大切にするご指導を受けていながら、若い頃には、1音ばかり良い音が出せても世の中には数え切れないほどたくさんの曲があるのに、と思ったこともありました。が、今は、音が良くなくて何曲も弾けたところでどうする?との思いです。音の成長とともに子どもさん自身が成長されて行く姿を楽しみに、大変微力ですが、お手伝いをさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。
 


◉村尾忠廣先生(0〜3歳児コース特別講師)

 このたび「スズキsongs」というCDを作成しました。数ある唱歌や童歌からスズキの理念に添う曲を選択し、気品があり、日本の伝統文化や俳句唱和にマッチングするように、私自身で編曲しました。
 
 私は、東京藝術大学にチェロ科で入学したのですが、3年、4年は作曲科の学生として過ごしました。それで16世期の厳格対位法を集中的に学んだのです。その時に得られた感性が、今、童歌を編曲する際にとても役立っています。
 
 大学4年の時に、藝大の大学院に音楽教育学センターができることになり、その第1期生になりました。当時、レナード・マイヤー先生の音楽学が有名で、猛烈に勉強したのですが、私が他の学生と違っていたのは、マイヤー先生に直接手紙で質問をしたことです。すると、きちんと返事をくださり、いつの間にか無料の通信教育を受けていたのです。
 
 そのうちに、かねがね不思議に思っていた「キラキラ星変奏曲」のあの順番、変奏曲なのに主題から始まらない形について、ワルシャワでの国際研究会で論文として発表しました。これが私のデビュー論文です。その後、ペンシルバニア大学のマイヤー先生のもとに留学したわけです。帰国後は、教育学に応用することを実践しました。それらを踏まえて「スズキsongs」を作ったわけです。このことについて、6月発行の機関誌で連載することになりました。実際に音も聴いていただけるようにしましたので、お楽しみに。第1回は「メリーさんの羊」です。すごい音楽、すごい物語です。