才能教育五訓について
シンポジウムのトップバッターは、鎌倉藤沢教室長の三谷紀子先生の「才能教育五訓」と0〜3歳児コースの関わりについてのお話でした。
村尾忠廣先生の基調講演
0〜3歳児コース特別講師の村尾忠廣先生は、来年の国際TT会議で議論されるであろう問題についての重要な指摘がありました。それは、国際スズキ協会(ISA)が進める乳幼児教育プログラム(SECE)のフレームワークと日本の0〜3歳児コースのプログラムが大きく異なることの整合性についてでした。両者の違いにどう対応していくのか、この問題を深めあう活動が今後急務になるとのことです。対応策の一例として、日本のわらべ歌から下降三度の音型に繋ぐ「お早ようオッハー」という新曲。これは欧米で馴染みのあるカール・オルフやコダーイシステムに見られる下降三度(ソ〜ミ)を取り入れつつも、導入部分に日本のわらべ歌を入れ込んだ作品にできないか、と村尾先生は模索されています。
各教室からの報告
0〜3歳児コースの説明会の様子について、各教室から順番に発表が続きました。スズキの0〜3歳児コースの大きな特徴である生演奏やペアレンツクラスがあることが他の教室とは大きく違うこと、プログラムにも日本のわらべ唄や童謡が数多く取り入れられ、小林一茶の俳句暗唱もあること、また、静と動の時間を上手に組み合わせ、身体表現を重視したものから心を落ち着かせる時間の設定まで、さまざまなプログラムを予定していることなど、それぞれの教室での事例が紹介されました。
中には、体験プログラムの実際例の動画報告もありました。
また、コースやプログラムの説明よりも、次のような問いかけをまずしている、という教室があり、目を引きました。
「私たちの教室では、まず日本語を習得するのに苦労した方は、いらっしゃいますかと問いかけます。そして、どのように日本語を習得されましたか? 日本語に関する環境はいかがでしたか? と問いかけます。さらに、日本語を聞かない日はありましたか? 日本語を練習しましたか?」
こうしたことを、鈴木鎮一先生は各地の講演会場でよく問いかけされました。そこで、聴衆は日本語をいつの間にか覚えていたこと、意識せず、自然に身につける環境づくりが大切であることに気づくわけです。この母語教育の真髄こそ、スズキ・メソードの根幹であり、0〜3歳児コースではそれを実践する場であることがわかります。上手い説明だなと感じました。
ブレイクアウトルームを2回設定
今回のシンポジウムでも、Zoomのブレイクアウトルーム機能を使って、少人数ずつによる意見交換の時間が設定されていました。しかも、今回は、2回のセッションが組まれていました。
最初のブレイクアウトルームでは、「なぜ指導者になったのか、なぜ0〜3歳児コースの指導者になったのか」がテーマになり、次のブレイクアウトルームでは、「スズキで学ぶメリットは何か、他の音楽教室との違いは何か」がテーマになりました。
実際に0〜3歳児コースの認定指導者と、傍聴参加の指導者も交えてのクロストークは、とても興味深いもので、短い時間でしたが、それぞれの思いや日頃考えていることの発表の場にもなりました。
例えば、次のようなお話はとても心に響きました。
「0〜3歳児コースと他の乳幼児向けの教室との大きな違いは、0〜3歳児コースのほうが、子どもの成長プロセスに大きく寄りそっていること。胎児からの教育です。自ずと育つ、知らないうちに育つ。子どもの生命に沿ったところが、他の教育とは違うと思います。”どの子も育つ”という言葉に世界中に普遍性がある。0〜3歳は人生の最初の部分ですが、土台を大切にすることに気づける最後のチャンスのような気がします」
早野会長からも
早野会長からは、乳幼児プログラムについて、「今後は各国の文化を取り入れた形で、楽器科とは違う取り組みが必要になるであろうし、今後再定義が必要でしょう」とのメッセージがありました。そして、国際交渉力の重要性も指摘されるとともに、「日本の0〜3歳児コースを世界にどう発信するか、こうしたシンポジウムを今後も重ねてほしい」との注文もいただきました。