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マーティン・ビーヴァー先生とスズキの仲間たち! 東京・愛知・松本

鈴木先生から深い信頼を寄せられていたプリムローズ先生は、1972年〜78年まで毎年来日され、コンサートと指導を行なわれました。当時、録音されたテープがCD化されています。ヴィオラで弾かれるフィオッコのアレグロの速いこと! 世界的に有名な東京クヮルテットの第1ヴァイオリン奏者として活躍されたマーティン・ビーヴァー先生は、奥様が、世界的なヴィオラ奏者で鈴木先生とも大変親しくされたウィリアム・プリムローズ先生のお嬢様。そのご縁から、義母のヒロコ・プリムローズ先生が、マーティン先生をスズキの先生方に引きあわせるために、一緒に来日されたことがありました。それが1997年のことでした。すでにプリムローズ先生は亡くなられていましたが、奥様のヒロコ先生は、ご自身がガンのため、長くは生きられないことをご存知の覚悟の旅でした。それで、どうしても娘婿のマーティン先生に、日本のスズキの指導者たちを紹介したかったのです。松本・名古屋・東京の3ヵ所で、今回と同じようにリサイタルやマスタークラスを開講しました。鈴木先生の奥様のワルトラウト夫人にも会われたそうです。

 その時、リサイタルの伴奏を務められたのが石川咲子先生で、マスタークラスを受講されたのが、当時11歳だった堀 脩史さんでした。「20年前に来日された時、指導者としても人間的にもとても魅力のあるヒロコ・プリムローズ先生のすっかりファンになり、これからもスズキを通じて関わりが続くものと信じていました」という石川先生は、ご病気のことは知らされていませんでした。のちに、マーティン先生から「あの日本ツアーは、最初で最後のヒロコ先生との親子2人旅。ハワイとニューヨークに離れて暮らしていたので、最期に会ったのがあの日本の旅でした」と打ち明けられたそうです。「それ以来、ずっと温めていた企画」(石川先生)が20年ぶりに、5月26日(金)渋谷のラトリエで実現しました。「世界が必要なのは、いい音です」と話すマーティンさんの音は、繊細で美しく、心に響く色がありました。

 演奏曲は、以下の通りです。この日の演奏は、2部に別れ、18時からの第1部では、下記の曲の中から子どもたちにも聴きやすい曲が選ばれて、演奏されました。なお、本会出身のヴァイオリニスト、荻原尚子さんもお嬢さんと一緒に、聴かれていました。

ルクレール:2つヴァイオリンのためのソナタ Op.3より ホ短調
・ブラームス:ヴァイオリンソナタ第1番Op.78ト長調「雨の歌」
・ブラームス:スケルツォ WoO2 ハ短調
・バッハ:パルティータ第2番BWV1004より「シャコンヌ」
・ボッケリーニ(山本祐之介編曲):メヌエット
・サラサーテ:マラゲーニャ Op.21
・ラフマニノフ:ヴォカリーズ Op.34 No.14
・マスネ(玉木宏樹編曲):タイスの瞑想曲
・ショスタコーヴィチ:2つのヴァイオリンとピアノのための3つの小品 

堀さんは、この時11歳。その後15歳で米国ミシガン州のインターローケンアーツアカデミーに留学。マンハッタン音楽院、ニューヨーク大学大学院を経て、マネス音楽院でアーロン・ロザンドに師事。ニューヨーク州でオーケストラ・ナウ創設メンバーの一人として活躍 堀 脩史さんは、関東地区ヴァイオリン科指導者の武井玲子先生のもとで3歳よりヴァイオリンを始め、10歳の時に夏期学校でモーツァルトの協奏曲を演奏。縁あって、20年前のマーティン先生のマスタークラスに参加されました。その時、レッスンで見ていただいたのが、クライスラーの「中国の太鼓」。「とにかく、マーティン先生の優しさに魅了されました」が当時の感想でした。この日、会場に駆けつけられた武井先生からは、「マーティン先生の優しさは、子どもでも理解できる、わかりやすいレッスンに特徴がありました。しかも、わかりやすいので、音や表現の仕方が、その場で変わる。そのことを子どもたちが実感できる、見事なレッスンでした」とのこと。それに呼応されるかのように、インタビューでマーティン先生が話されたことは、日本の子どもたちの練習に向かう準備の早さ、理解度の高さ、そして学ぶ姿勢の謙虚なところが、とても素晴らしいとご指摘。また、スズキの哲学は、プロの演奏家を育てるわけではないが、十分に他の分野でも大いに働きかける力があるとのこと。「スズキは、本当に必要なメソードです」ともおっしゃいました。

 マーティン先生は2013年の東京クヮルテットの解散とともに、ロサンゼルスのコルバーンスクールのヴァイオリン科教授として後進の指導に励まれています。この学校は、スズキとも深いつながりがある学校です。しかも、東京クヮルテットの最終公演で来日された2013年に、六本木のホテルで旧知の中島顕先生と偶然に再会されたことから、昨年、シアトルの夏期学校に中島先生の紹介でゲスト講師として参加。名古屋から中島先生とともに参加した日本の生徒たちとも顔なじみでした。

マーティン先生の指導を聞き漏らさないよう真剣な子どもたち そのシアトル以来の懐かしい再会となったのが、翌日です。5月27日(土)には愛知県長久手市公民館で、東海地区の子どもたちで組織されている弦楽団「もくりん」を中心とするメンバーが演奏するアンサンブル曲、モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」とグリーグの「ホルベルク組曲」、そして斉奏曲をレッスンしていただきました。外国人の先生にレッスンを受けることが初めての生徒もいて、緊張した面持ちでレッスンが始まりましたが、レッスンが進むにつれ「Great!」「Excellent!」とかけていただく言葉と、先生の弾かれる繊細な音を聴くたびに、子どもたちの表情も次第にほぐれ、温かい雰囲気に包まれ、時間があっという間に過ぎてしまいました。最後に、思いがけずのサプライズとして、バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番 ホ長調 BWV 1006から第2曲「Loure」 を目の前で弾いてくださって、素敵なプレゼントをいただきました。

 参加した皆さんから感想が寄せられましたので、紹介しましょう。 

・ザイツのメロディが変わるところの「雨や曇りのような雰囲気で」という表現が分かりやすかったし、音の強弱を教えてもらって大切に演奏することができました。弦楽を僕はひいてないけど、「ホルベルグ組曲」がどんどんカッコよく変わっていくのがすごいなと思いました。(2 男)

・いつもの先生とは違う表現だったけれど、どちらも素敵で、その違いの音楽が楽しかった。私も「ホルベルグ組曲」が弾きたくなりました。(小6 女)

・マーティン・ビーヴァー先生のレッスンは、僕にとって初めて海外の先生に本格的に教えて頂いたレッスンだったので、とても楽しかったです。最初はどんな先生なのか気になって、少し不安でしたが、強弱のつけ方や音の響かせ方などを、細かく、優しく、丁寧に教えて下さいました。曲を弾いている途中で、音がよく響いていない部分や、強弱がはっきりしていない部分があると、先生はすぐに指摘せず、まず ”Very good!” とおっしゃって、良かった点を話してから、良くない部分の修正に移っていきました。良かった点を褒めて頂くと、「次はここをもっとこうすればいいな」と、ポジティブに修正箇所を考えられたので、演奏に集中し、歌うように弾くことができました。その他にも、クレッシェンドとデクレッシェンドのことを「ヘアピン」とおっしゃっていたのを聞いて、日本と海外で教え方が少し違っているんだと感じたのも、レッスンが楽しかった理由の一つです。最後にお礼を言いに行った時、ビーヴァー先生が「また日本でレッスンしたいな」とおっしゃって下さったので、またぜひお目にかかりレッスンに参加したいと思いました。
Hello, Mr. Beaber. I enjoyed your lesson very much. You taught us very kindly. If there was a point that we need to fix, you said “Very good!” before you indicate. I could focus on the performance. We do not usually say as “crescendo / decrescendo” as “hairpin”. I could notice the teaching difference between Japan and United States. That was interesting. I go to Seattle this summer. It is too bad that I cannot meet you again. But, please come back to Japan. And teach us again. I am looking forward to it.Sincerely.(高1 男)

・とても分かりやすく、そして楽しく教えてくださってありがとうございました。今後に今回教えてもらったことを生かしていきたいです。(高2 男)

・昨日は、ビーヴァー先生のわかりやすく、楽しいレッスンでとても充実していました。ビーヴァー先生が指導されると時間がどんどん過ぎていって、曲の終わりまで余すことなく、ちょうど終わるので、すごいと感じました。また日本にいらっしゃる機会があるのなら、ぜひ「もくりん」の練習を指導していただきたいです。そして、ホルベルグがこんなにも楽しく演奏できることが知ることができ、良かったです。ただし、曲の構成を考えたことがなかったり、どこのパートが曲をリードするのか決めていない箇所があり、これから改善すべきだと思いました。(高1 男)

・このたびは、ビーヴァー先生のレッスンの通訳という機会をいただき、とても感謝しています。「私がずっと笑っていた」とクラスの生徒さんからご指摘があったので、とても楽しい時間であったことは、みなさまご周知かと存じます。ビーヴァー先生の身ぶり、手ぶり、何より楽器の表現力が素晴らしく、特に通訳が必要な箇所はわずかであったと思います。また、生徒さんたちの「すべて聴き逃さないぞ!」という意気込みと集中力が素晴らしく、楽しいだけでなく、緊張感溢れる充実した時間でした。何より印象に残っているのは、いつもはポーカーフェイスの1列目の上級生たちの笑顔です。いつものお稽古では見られないみなさんの様子を、役得で目の当たりにすることができ、何よりのご褒美でした。素敵な時間をありがとうございました。(保護者 通訳)

・私はビーヴァー先生のレッスンに参加して良かったなと、今、思っています。ビーヴァー先生の音楽の表現の仕方がおもろしくて分かりやすかったため、すごく良かったです。今日レッスンしてもらった曲のポイントは、ずっと忘れないで演奏に生かして、上手にヴァイオリンを弾きたいです。(中1 女)

・レッスンでは、細かい感情の入れ方、弾き方を教えていただき、ありがとうございました。とても、きれいな演奏で感激しました。これからもがんばっていきたいです。(中2 男)

・アイネ・クライネ・ナハトムジークのフォルテやピアノが、わかりやすかったです。ザイツの、4の指のビブラートが難しかったです。(小5 男)

・私たちが弾くたびに「great !」と褒めてくださり、気持ちよく弾くことができました。レッスンがあっという間に終わってしまった感じで、もっと長くレッスンをしていただきたいと思いました。音楽の勉強はもちろんですが、英語の勉強も一緒にできて嬉しかったです(笑)。シアトルでのマスタークラスのレッスンを覚えていてくださったことに感動しました!(高1 女)

・細かいところも教えていただけて、上手になりました。(小6 男)

・たくさん指導していただいて、これから練習する時の参考になりました。表現の仕方などもわかりやすく教えていただけて、すごく楽しかったです。ありがとうございました。(中2 女)

・シアトル以来、再びレッスンを受けることができて嬉しかったです。東京クヮルテットの1st Vn をしていらっしゃった先生のレッスンを受けて、コンサートマスターとしての役割が、より深く分かりました。今後もハーモニーを感じながら、みんなと気持ちを一つにして、ガンバっていこうと思います。(高2 男)

・ビーヴァー先生のレッスンで印象的なのは、アイネ・クライネの始めのところのアクセントです。強すぎるから抑える。「響きを大事に」と教えてくださいました。録音曲の第1楽章の始めに活かしたいです。(高1 男)

・ビーヴァー先生の音がものすごく綺麗で、驚きました。ビーヴァー先生に言われたことをやるのは難しかったけど、がんばってやったら、曲の雰囲気が少し変わったと感じました。I enjoyed it very much.こんな機会を作ってくださって、本当にありがとうございました。心から感謝しています。(小5 女)

・ビーヴァー先生は、まず「Verry good!」と褒め、その後、リズム感やダイナミクスなどについて、どうしてそうなるのかを一つひとつ丁寧に説明してくださいました。その誠実なお人柄に、子どもたちも真剣に応えようとしていました。すぐには反応できない時もありましたが、だんだんビーヴァー先生と子どもたちの間に信頼が生まれ、いい時間が流れているのを感じました。心からお礼申し上げます。(指導者)

 さらに翌日には、松本の鈴木鎮一記念館でコンサート。以下の曲が、演奏されました。ピアノは、石川咲子先生です。
・ブラームス:ヴァイオリンソナタ第1番Op.78ト長調「雨の歌」
・ラフマニノフ:ヴォカリーズ
・マスネ:タイスの瞑想曲
・サラサーテ:マラゲーニャ

駆け足の3日間でしたが、大きなお土産をスズキの皆さんにプレゼントされました。