第54回グランドコンサートでは、エル・システマの子どもたちとスズキの子どもたちが共演します。そこで、エル・システマジャパンの菊川穣代表理事と早野龍五会長からメッセージをいただき、これまでの両者の経緯、現在の関係、そして子どもたちの共演が意味するところを語っていただきました。
ともに育んできた歴史を大切に、手を取り合えたら、素晴らしいことです。
エル・システマジャパン代表理事 菊川 穣
クリックすると、エル・システマのサイトにリンクします 家庭の経済的事情に関わらず誰もが参加できるオーケストラやコーラス。そうした共創の音楽によって子どもたちの生きる力を育むことをミッションに始まった日本でのエル・システマの取り組み。
エル・システマは、ベネズエラで1975年に音楽家であり経済学者であるアブレウ博士によって創設されましたが、それより遥か前に、彼の右腕であるディ・ポロ氏たちが、米国で鈴木鎮一先生から教えを受けていました。また創設期には、小林武史先生が弦楽器指導プログラムの基礎づくりに関わられたことはよく知られています。
エル・システマのカリキュラムは、スズキ・メソード以外の音楽教育も取り込まれており、また、合唱、民族楽器でのアンサンブルを生み出すなど、その後、独自に発展してきています。しかし現在も、米国、アイルランド、ケニア、アンゴラなど、ベネズエラ以外で展開するエル・システマ式プログラムの中心的人物が、スズキ・メソード指導者である国も少なくはありません。また、被災地の相馬(福島県)、大槌(岩手県)の現場で弦楽器指導を担当している先生方も、スズキ・メソードのご出身です。指導補佐として関わってくれているボランティア希望者を、東海地区ヴァイオリン科の末廣悦子先生にご紹介いただいた特別なご縁もございます。
鈴木先生が唱えられた「どの子も育つ」という理念。ここから始まったのが、希望する誰もが参加できるオーケストラやコーラス、障害のある子どもとの音楽活動です。グランドコンサートに、エル・システマジャパンで学ぶ相馬、大槌の子どもたちが参加させていただく背景には、こうした様々な方々が、築き、繋いできた歴史があります。今後日本の、そして世界の子どもたちの音楽をとおして成長を後押ししていくことに尽力したく、手を取り合えたら素晴らしいと思っています。
次の時代に歩を進めるためにも。
才能教育研究会会長 早野 龍五
早野会長(左)と菊川代表理事(右) 2011年3月11日に発生した東日本大震災と福島第一原子力発電所事故によって、各地に甚大な被害と混乱がもたらされたため、本会は、同年3月29日に日本武道館で開催予定だった「第53回グランドコンサート」の中止を決定いたしました。それから6年あまりが経過し、原発周辺地域に出されていた避難指示の解除が進むなど、徐々にではありますが、復興の兆しが見えつつあります。
この間、本会の内外から、グランドコンサートの復活を切望する声が、数多く寄せられておりましたが、創立70周年記念事業の柱の一つとして、昨年来行なってきました才能教育会館の耐震改修工事が完了するなど、次の時代に歩を進める体制が整ってまいりました。
折しも2018年は、鈴木鎮一先生がお生まれになってから120年目にあたります。そこで、今回は「『鈴木鎮一生誕120周年記念』第54回スズキ・メソード グランドコンサート」と銘打ち、2018年4月4日(水)に、両国の国技館にて開催いたします。
新しい試みとして、震災被災地の福島県相馬市と岩手県大槌町で、音楽を通じて立派に育ったエル・システマジャパンの子どもオーケストラの皆さんとの共演もあります。なお、スズキ・メソードとエル・システマとの歴史的なつながりについては、エル・システマジャパンの菊川代表理事からのメッセージをご参照ください。
9年ぶりの開催となるグランドコンサートの感動を、ぜひとも多くのお子さんに味わっていただきたいと思います。
第54回グランドコンサートのチラシも完成。夏期学校参加の皆さんにも配布されました!