装いも新たに、鈴木鎮一先生選の一茶俳句100句が、英訳されました!

 

ほおずき書籍(2,000円+税)

 大変ユニークな本が出版されました。ヴァイオリン科出身で、現在は本会顧問でもある医学博士の宮坂勝之先生が、鈴木先生が選ばれた小林一茶の俳句100句をもとに、奥様の宮坂シェリーさんによる英訳、信州の自然、いのち、平和をテーマにした独自の画風で知られる柳沢京子さんによる切り絵で構成された「英訳一茶俳句100句集」(ほおずき書籍)を出版されました。アマゾンでは、Kindle版の購入も可能です。

 →楽天ブックス 
 →Kindle版   
 
 さっそく、宮坂先生より、スズキ・メソードの皆様向けのメッセージを寄せていただきました。宮坂先生と関係者の皆様のご好意で、マンスリースズキでは今回から10句ずつを連載というスタイルで紹介させていただきます。
 
 また、スズキ・メソード公式サイトの会員ページからは、この100句の日本語を立川志の輔師匠、そして英語をパックンにお願いした音声データをリスニングすることもできます。鈴木先生が選ばれた一茶の俳句への特別な思いが込められていますので、ぜひお楽しみください。
 
→スズキ・メソード公式サイト会員ページ
 
 


 
スズキ・メソードの皆さん
 

宮坂勝之先生

 もう70年以上も前ですが、私は始まったばかりのスズキ・メソードでヴァイオリンを習っていました。戦争が終わって3年あまりの日本で、食べる物にも困っていた時代に、3歳にも満たない私に機会を与え人生の糧にしてくれた両親には本当に感謝しています。当然の流れで、私の二人の子どもたちにも習う機会を与え、彼等はそれぞれに人生に役立てています。

 この年齢になっても楽器を楽しめること自体、目に見える財産ですが、本物を聴き、本物を吸収することの素晴らしさを、無限に吸収できる可能性を持つ幼小児期に覚えたことは何物にも変えられない財産です。私は、本部のある松本ではなく、峠を越えた岡谷に住んでいましたので、鈴木先生とは年に2、3回、それも合奏レッスンや後年はじまった夏期学校の時にお会いすするだけでしたが、先生は決まって皆そろっての遊びをしました。その時にはいつも、一茶の俳句に出てくる、かえるやお馬を引き合いに「ひょうきん」な話で皆を引き込んでくれたものでした。一茶の俳句は、すっかり毎日の生活の中に入っていました。
 
 やがて一茶100句と呼ばれる俳句の暗誦としてレッスンにも取り入れられるようになり、息子たちはすっかり覚えてしまったものです。一茶の素晴らしさは、誰にも理解しやすい身の回りの自然が主題であることです。信州育ちの私たちには、何の違和感もなく飛び込んで来ました。たった15文字の俳句は、作者よりも読み手の解釈の幅が広いのも音楽と同じです。表された文言以上に、作者の心に寄り添いながら、生活する環境や文化、時代の影響も受けながら、行間に個人の思いを重ねる、日本特有の生きた文学です。
 
 一茶の俳句の英訳を通じて、素晴らしい日本の文化とスズキ・メソードを世界にひろげたいと思いました。鈴木先生の教えに基づき、英語も本物、日本語も本物という精神を貫き、まず親御さんが理解し、意味を伝えてあげられるように配慮しました。これから、このマンスリースズキに10回にわたり連載されますが、読み上げを一茶の時代からの伝統文化である落語の名人の立川志の輔さん、英語は同じく落語を勉強したパックンにお願いしましたが、実に素晴らしいです。
 
 電子版や書籍版を購入いただければ、無料で全文の音源にアクセスできます。またスズキの会員の方は、スズキ・メソード公式サイトの会員ページにアクセスすることで、音源入手が可能です。そちらをお聞きになりながら、様々な思いで一茶100句をお楽しみください。
 

宮坂勝之 
スズキ・メソード顧問、医学博士 
和洋女子大学 学長補佐 
聖路加国際大学 名誉教授 
 

 
A Message to Readers of Monthly Suzuki 
By Katsuyuki Miyasaka, MD
 
  It’s been over 70 years since I started learning violin by the Suzuki Method. The war had ended only 3 years earlier and it was still hard to get enough to eat. I am deeply grateful to my parents who gave me, a stubborn 3 year old, this opportunity. It has provided food for my soul throughout my life. I wanted to give my children this opportunity as well and it has served them well.
 
  Being able to play the violin, even at my age, is a benefit that is easy to see, but the true value of my music education was to listen to real music and absorb its essence during my early childhood when I was open to all possibilities. I lived in Okaya, on the other side of the mountain from Matsumoto, so I only had Dr. Suzuki as a teacher two or three times a year at group lessons or later, summer school. Dr. Suzuki always entertained us, in particular with Issa’s haiku. He’d enthrall us with humorous stories of frogs, horses and the like. Issa’s haiku were a part of everyday life for me.
 
  Recitation of 100 haiku by Issa was incorporated into lessons and my sons memorized them all. One of the good things about Issa’s haiku is that they are easily understood by all, especially as they relate to the natural environment. I was raised in Shinshu, in the same kind of natural environment as Issa. In just 15 syllables, haiku are open to a wide range of interpretations by individuals, just like music. Readers and the author are brought together not merely by words, but by the feelings they share about the environment in which they live and the culture and time they are in. It may be a unique feature of Japanese haiku that people are able to read their own experience between the lines.
 
  I wanted to tell people from other backgrounds about Japan and the Suzuki Method through the English translation of Issa’s haiku. In keeping with Dr. Suzuki’s teachings, the English and Japanese are true to their subject. We trust that through our interpretation of Issa’s haiku parents and their children will understand the spirit of Issa, his haiku, and Dr. Suzuki’s mission.
 
  We will introduce 10 haiku at a time over 10 issues of “Monthly Suzuki.” The audio version too holds true to Issa through the recitations by the rakugo master Shinosuke Tatekawa and the native English speaker Patrick Harlan, also a student of rakugo in Japanese.
 
  The audio version is available to people who purchase the book, either the Kindle version or the paper version. Members of the Suzuki Method may obtain the audio version from its membership HP. We hope you will enjoy listening to the haiku and imagining Issa’s world through your very own mind.
 

Katsuyuki Miyasaka, M.D., Ph.D.
Consultant to the Suzuki Method
Advisor to the Dean, Wayo Women’s University
Professor Emeritus, St. Luke’s International University, Tokyo

 下のそれぞれの俳句をクリックすると、中身をご覧いただけます。

著者・演者の紹介
 
宮坂勝之
長野県生まれ。小児科医、麻酔科医。スズキ・メソード初期の生徒で、1947年(3歳)からヴァイオリン、一茶の俳句を習う。カナダ、アメリカ留学後、国立成育医療センター、長野県立こども病院、聖路加国際病院などに勤務。在宅医療児支援、日野原いのちと平和の森活動などに参加。和洋女子大学長補佐。スズキ・メソード顧問。聖路加国際大学名誉教授。
 
宮坂シェリー
米国ニューヨーク生まれ。ペンシルバニア大学で心理学専攻。トロント大学日本語学科を経て、文部省奨学金にて東京学芸大学へ留学。1977年より日本在住。スズキ・メソードの生徒の母親として息子たちと俳句暗唱に参加。日本語能力試験N1、華道池坊華監。外国人知的障害児教育、医学英語論文編集などに関わる。
 
柳沢京子
長野県生まれ。信州大学教育学部美術科卒業。信州の自然、いのち、平和をテーマにした独自の切り絵の作風が注目され、国内、欧米各地で個展開催。公共施設での展示、長野冬季五輪(1998年)企画に参画。1977年「柳沢京子一茶かるた」(奥野かるた店)、2017年「一茶365+1きりえ」(ほおずき書籍)など一茶関連作品出版。
 
立川志の輔
富山県生まれの落語家。明治大学卒業。サラリーマンを経て立川談志に入門。1990年真打昇進。古典から新作まで幅広い芸域で知られる。北海道から沖縄まで全国各地のほか、定期的に海外公演も行なっている。2015年紫綬褒章受章。1995年より現在まで続くNHKの長寿番組「ガッテン!」の司会で知られる。2018年より富山国際大学客員教授。
 
パトリック・ハーラン(パックン)
アメリカ・コロラド州出身のお笑い芸人・コメンテーター。ハーバード大学卒業。1993年来日。英会話学校講師などを経てマックンと組んだ漫才コンビ「パックンマックン」で広く知られる。幅広い領域で活躍するタレントである。立川談志(志の輔の師匠)とも共演。東京工業大学リベラルアーツセンター非常勤講師。
 
日本語解説ナレーション/宮坂久美子 
長野県生まれ。信州大学大学院修士課程終了。元JICA海外協力隊員。
英語解説ナレーション/宮坂シェリー