5月4日(土・祝)14時開演
浜離宮朝日ホール音楽ホール

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 コンサート会場の浜離宮朝日ホールは、魚市場のあった築地にあり、今もインバウンドの方々が大勢訪れる東京の観光地の一角にあります。音楽ホールは、室内楽の繊細な音の響きを美しく生かすために設計されたとあって、プロの演奏家にも人気が高い会場です。前日の豊中の大きなステージと違った響きになりますので、午前中のリハーサルでは、受け持ちの先生や実行委員長の印田礼二先生を交えて、入念にそれぞれの響きのチェック、立ち位置の確認が続きました。

 この日、ゲストに招かれたヴァイオリニストの大谷康子さんを交えての「キラキラ星変奏曲」のリハーサルでは、大谷さんから「みんな、もっと笑みを浮かべて演奏しましょう!」との提案をいただき、全員で気持ちを高揚させていくプロセスは、プロ奏者の姿勢を感じさせ、学ぶところの多かった場面でした。

 

第1部 共通プログラム

 さぁ、開演です。6名の出演者による演奏は、前日にまして、さらに磨きがかかっていました。大阪から東京への移動があってのこの日の本番、なかなか大変だったはずです。かつてのテン・チルドレンツアーは、こうした移動を全米各地で、頻繁に行ない、それも1ヵ月にわたることもしばしば。時にはアメリカからヨーロッパへ移動していたのですから、その行動力は凄まじいエネルギーを感じさせます。それだけ、各地、各国の人々に生でスズキの子どもたちの「音」を聴いてもらいたい、という鈴木先生や団長を30年間務められた本多正明先生たちの信念が強かったのでしょう。そして、テン・チルドレンの演奏を待っている人々が回を重ね、年を重ねるごとに増えていったのです。


 6人の奏者の皆さんにこの2日間の「ツアー」の感想をいただきましたので、ここで紹介しましょう。皆さんには、現在の練習曲についてもお答えいただきました。
 

有名な会場で、メンバーの皆さんと共演できて、とても楽しかったです。

関東地区ピアノ科・小田嶋直子先生クラス 安田 耀(9歳)
 

 テン・チルドレンのメンバーに選ばれたと聞いて、とても驚きましたが、嬉しかったです。ですが、アンサンブルの楽譜を見て、準備が間に合うか心配になりました。他の演奏会もあったので、練習期間が短く、大変でしたが、小田嶋先生のおかげでがんばることができました。

 大阪公演では、とても大きい会場で一番目の演奏ということもあり、ソロは少し緊張してしまいました。アンサンブルや、たくさんのヴァイオリンの皆さんとの共演はとても楽しかったです。東京公演では2日目ということもあり、リラックスして弾けました。有名な会場で、メンバーの皆さんと共演できて、とても楽しかったです。
 
 スタッフの皆様、一緒に演奏してくれたメンバーの皆さんに大変感謝しています。ありがとうございました。また、テンチルのメンバーの皆さんと一緒に演奏できたら、嬉しいです。
 
 現在、お稽古中の曲は、モーツァルトのソナタ イ長調K.331第1楽章です。


 

夏期学校で再会できるのが楽しみです。

関西地区チェロ科・原 力海先生クラス 水田至音(9歳)
 

 ぼくにとって、NEW STARS CONCERTは、ふだん経験できないとても濃い2日間でした。大阪と東京の会場は、舞台袖の感じや音の響き方が全然違って、どちらも特別な想い出として心に残っています。

 一番の想い出は、ピアノ、ヴァイオリン、フルートとのアンサンブルです。チェロのソロがある「アリオーソ」は、これ以上ないくらい素敵な音を出せるように、当日の朝までみんなでたくさんリハーサルをしました。みんなの息が合って、きれいなハーモニーになったとき、とてもワクワクしました。
 
 あっという間に終わってしまって、コンサートのあとしばらくは、もう一緒に弾けないのがさみしくて、みんなと過ごした2日間の想い出話ばかりしていましたが、今はいつもの生活に戻って、ハイドンのチェロ協奏曲を練習しています。夏期学校で再会できるのが楽しみです。
 
 東京でも大阪でもたくさんの先生方にお世話になり、最高の経験をさせてもらいました。本当にありがとうございました。


 

メンバーの皆さんと、音楽を通じて、心を通わせられた気がしています。

関東地区ヴァイオリン科・守田マヤ先生クラス 髙添遥加(12歳)
 

 今回、テン・チルドレンNEW STARS CONCERTに出演させていただいたことにとても感謝しています。

 私が演奏したメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は勉強するのが2回目で、この曲の背景や構成、オーケストラとのバランスの組み立て方など、この曲についてより深く知ることができました。現在はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲に取り組んでいますが、今回勉強したことを活かして、聴いてくださる方の心を動かす演奏に仕上げたいと思っています。
  
 ソロの演奏はもちろんですが、6人でのアンサンブルは初めての経験で、改めて音楽の楽しさを実感しました。事前に全員で練習できたのは1度だけで、合わせることが難しく少し心配でしたが、本番では最初から最後まで息の合った演奏を披露することができ、テンチルメンバーの皆さんと音楽を通じて心を通わせられた気がしています。
  
 このコンサートでの素晴らしい経験を大切にし、これからもより真摯に楽しく、音楽と関わっていきたいと思っています。きめ細やかな運営をしてくださった実行委員の先生方、伴奏をしてくださった臼井文代先生、貴重なレッスンをしてくださった竹澤恭子先生、いつもご指導くださる守田マヤ先生、そして演奏を聴いてくださったお客様に心より感謝いたします。


 

より良い音楽に進化していく過程を感じられてとても楽しかったです。

関東地区フルート科・岩波寿美先生クラス 山田理乃(16歳)
 

 まず今回、テン・チルドレンの一人として出演させていただきありがとうございました。演奏旅行をした経験がなく、始まる前は楽しみでもあり、緊張もありましたが、実際にホールで吹いてみると、響きが気持ち良くて、楽しく吹くことができました。他の皆さんの演奏もとても素敵で、そのバトンを引き継いで演奏した気分でした。

 アンサンブルも回数を重ねるごとにお互いの音を聴けるようになって、より良い音楽に進化していく過程を感じられて、とても楽しかったです。
 
 今回演奏した「カルメンファンタジー」は昔から憧れていた曲だったので、こうして多くの人に演奏をお届けすることができて光栄でした。技巧的にも難しい曲で、初めは挫けそうになったこともありましたが、次第に指が回るようになってきて、イメージ通りに吹けるようになりました。またカルメンの妖艶な雰囲気を出すのが難しく、大人になったらもう一度吹きたいと思います。
 
 今は尾高尚忠のコンチェルトが終わり、イベールのコンチェルトに進むところです。これからもがんばりたいと思います!


 

本番は私の中で一番の演奏ができたと思います。

東海地区ピアノ科・杉本弘子先生クラス 田代なおみ(13歳)
 

 もの悲しく美しい「ラ・カンパネラ」を心をこめて演奏ができるように、この1年間、杉本先生といろいろなお話を考えて練習してきました。大阪公演の前日には、大好きなフジコ・ヘミングさんがお亡くなりになったことをニュースで知り、とてもショックでしたが、「今まで素敵な演奏をありがとう」と感謝の気持ちをこめて弾きました。本番は私の中で一番の演奏ができたと思います。

 2日間連続のコンサートは初めてで、移動も多くて大変でしたが、大阪も東京も、先生方がいつも面白いことを言って励ましてくれました。アンサンブルは、6人で心を1つにして演奏できてうれしかったです。当日まで丁寧にご指導してくださった印田先生、ありがとうございました。
 
 目標にしてきたコンサートが終わって、ホッとしましたが、とても寂しくもあります。今は夏の発表会にむけて、ショパンの「木枯らし」を練習しています。自分のあこがれの曲が1つずつ弾けるようになって嬉しいです。中学になって部活や勉強も忙しいですが、これからもピアノを続けていきたいです。


 

夢のような数日間でした。

関東地区ヴァイオリン科・青木博幸先生クラス 三島万稔(14歳)
 

 大阪と東京で本番があり、みんなで旅行をしながらのコンサートがとても楽しかったです。

 演奏の方は、前日のリハーサルまで緊張でドキドキでしたが、リハーサル後に関西の先生方に声をかけていただき、少しリラックスできました。大阪のホールは、とても大きなホールだったこともあり、とても緊張しました。本番直前まで、うまく弾けるかどうか不安だったのですが、舞台袖で先生に声をかけていただき、少し安心できました。本番は、たくさんのお客様に聴いていただき、緊張していましたが、とても楽しく弾けました。
 
 東京での本番は、前日の本番があったので、ほとんど緊張することもなく、とても楽しく弾けました。合わせの練習が数回しかできなかった合奏曲も、本番ではとても楽しく弾けたのが嬉しかったです。たくさんの先生方にサポートしていただき、とっても楽しい演奏の経験ができたことに感謝しています。夢のような数日間でした。現在は、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲のお稽古をしています。ピカピカに仕上げられるように、がんばりたいです。


第2部 東京公演プログラム

 
大谷康子さんによるお話と演奏
 
 第2部は、東京公演の独自プログラムです。早野龍五会長が参加された1964年の第1回テン・チルドレンツアーに、同じように参加され、現在はヴァイオリニストとして八面六臂の活躍をされる大谷康子さんが真紅のドレスで登場。テレビやコンサート会場でお馴染みですね。冒頭、ピアノの石川咲子先生とアイコンタクトでいきなり演奏されたのが、クライスラーの「愛の喜び」。日常的に「ヴァイオリン大好き!」を表現されている通り、全身でヴァイオリンを弾く喜びを披露してくださいました。
 
 そしてマイク片手にお話が始まりました。スズキ出身のヴァイオリニストとして見聞されてこられたさまざまなエピソードを、思い出深い曲やこの日のためにご用意された曲の合間にお話しされる姿は、並大抵ではないことです。スズキの活動を応援してくださる「先輩」からのエールであり、未来を担う子どもたちへの応援歌でもありました。
 
 みなさん、こんにちは。私はこうやってヴァイオリンという楽器に出会えたことに本当に感謝しています。私は仙台で生まれて、2歳8ヵ月くらいの時に、ヴァイオリンの演奏を演奏会で初めて聴いて、やってみたいと言ったんですね。その後、名古屋に引っ越して、西崎信二先生に習い始めて、本当に楽しくお稽古をしてきました。
 
 そして、1964年の第1回のツアーに選ばれた時は、小学生になったばかり。父がアメリカの大学に赴任していた時なので、母と一緒にとても喜んだことを覚えています。それで、ニューヨークの国連などで演奏すると、本当に大きな、青い目の見ず知らずの人たちが興奮して抱きしめてくれたり、スタンディングオベーションをしてくださったんです。言葉がわからなくても、ヴァイオリンを弾くと通じるという驚き、その発見は「音楽は世界の共通語」と、子どもながらに思わされるほどだったんです。

 今日のプログラムにも書かれていましたが、音楽が世界共通の理念であり、「音楽が世界を救うであろう」という鈴木先生のお考えは本当に素晴らしいと思います。
 
 今から10年前にテン・チルドレンの50周年のコンサートがありました。その時にもこれから演奏するヴェラチーニのソナタを弾きましたが、実は第1回のテン・チルドレンの時に当時の畑麻子さん(現在の岩澤麻子さん)がアメリカで本当に感動的なヴェラチーニを弾かれました。そのことを思い出して演奏しますね。
(ヴェラチーニのソナタ 第1楽章、第2楽章を演奏)
 
 スズキ・メソードでは、最初に「キラキラ星変奏曲」をお稽古します。開放弦から始めますから、ヴァイオリンがとてもよく響きます。この響く音から始まるから楽しかったんです。そのうち、小指の4の指を使って、同じ音になるようにお稽古していきます。「カーン」という開放弦を弾く楽しさを最初に味わうことができたことは、本当によかったなぁと思いますね。子どもにとっては、褒められますと嬉しいですもの。鈴木先生がおっしゃった「どの子も育つ、育て方ひとつ」がやはりいいですね。親御さんがお子さんにストレスを与えないように育てることで、明るい未来が待っていると思います。
 
 次の曲は、イタリアの作曲家レスピーギの「ロマンス」です。このホールにぴったりの曲と思って、今日は選びました。(レスピーギのロマンスを演奏)

 スズキの素晴らしさはいろいろありますが、他の団体とどこが違うかと言いますと、「全人教育」ですね。「心を育てる」という部分です。今、世界で環境問題とかいろいろな問題がありますが、子どもさんの時代にどう育つかで、未来の社会が大きく変わってくると思うのです。その大切さを鈴木先生は早い段階で気づかれ、スズキ・メソードとして、提唱されたわけです。目先のことを考えるのではなく、もっと先の先を考えること、それをお子さんのうちから感受性豊かに育ててゆくことで、大人になった時、いざという時の判断に役立ちます。お子さんの心を育てること、これをしっかりやっていきたいですね。
 
 井上ひさしさんの残された言葉で、好きな言葉があります。
「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに」
 鈴木先生が目指されていた想いに通じる大切な言葉だと思います。
 
 最後にラヴェルの「ツィガーヌ」です。この曲を今日選んだのは、前半にヴァイオリンだけの独奏部分があり、途中からピアノとのデュオになるからです。
(ラヴェルのツィガーヌを演奏)
 
 来年デビュー50周年になられるという大谷康子さん。新年早々、幅広い企画が目白押しだそうです。最後は、子どもたちと「キラキラ星変奏曲」。舞台狭しと、それぞれの子どもたちに寄り添いながら演奏される大谷さんの姿が印象的でした。