国技館のあちこちで、準備作業が進行した前日!
升席にも色別に番号が置かれ、どこに着席すればいいか、わかりやすく表示されました 大相撲のメッカで知られる国技館。普段は関取や付き人、そして大相撲ファンで賑わう会場に、グランドコンサート前日の4月3日(火)は、グランドコンサート実行委員会のスタッフをはじめ、各科のスズキ・メソードの先生方や音響、照明のスタッフが集結。広〜い国技館のあちこちで、打ち合わせや作業が進みました。
中でもフロアづくりが大変です。子どもたちが並んだ時に綺麗に映えるように、数字が記されたラインがどんどん引かれて行きました。椅子の配置なども実際にテストするなど、それまで紙の上で検討されてきた配置や子どもたちの動線に関するシミュレーションが、現場でどのように落とし込んでいけるか、ここでの判断が重要になります。
6,000部のプログラムに挟み込み作業を終え、記念撮影 一方で、音響会社が用意したPAなどの装置も舞台周りを囲むように配置され、見上げると、大相撲の時にワイヤーで吊られている「吊り屋根」の代わりに巨大な4面マルチヴィジョンが据えられていました。鈴木鎮一先生の生誕120年を記念する様々な映像や写真、そして海外のスズキ・メソードを学ぶ子どもたちからのメッセージなどを上映したり、演奏する子どもたちの表情をアップで捉えるなど、大活躍する画面となります。
正面玄関では、翌日の来場者に配布するプログラムに、チラシの挟み込み作業が行なわれました。6,000部ですから、ちょっとやそっとでは終わりません。それでも先生方や、OB・OG会事務局による人海戦術で、なんとか前夜祭パーティまでには終わりました。お疲れ様でした!
17:00 前夜祭がスタート!
国技館地下1階の200坪以上ある大広間が、前夜祭の会場でした。大相撲の時は、各部屋が担当する「ちゃんこ料理」が食べられる場所です。9年ぶりの開催、それも国技館という初めての会場での開催とあって、先生方のお顔は、いずれも期待に膨らむご様子。まずは、早野龍五会長のご挨拶から、始まりました。
早野龍五会長
「いよいよ明日になりました。思えば、7年前、2011年の3月、第53回グランドコンサートは、東日本大震災が起きたため、中止を余儀なくされました。それ以来、いつ再開するかという声が会の内外から寄せられました。このたび、意を決して、鈴木鎮一先生の生誕120周年に合わせて開催することにしました。1年間の準備期間、実行委員会の先生方をはじめ、フロアをいっぱいにするほどの生徒さんを送り出してくださった先生方、そして親御さんの皆様に感謝します。今回は、震災で大変な被害に遭われた福島県相馬市、岩手県大槌町に、震災後に生まれた子どもオーケストラの皆さんも参加されます。私たちが音楽を通じて子どもたちを育てる、そして関係する皆さんと手を携えて世の中にアピールする、一人でも多くの方々にスズキ・メソードを知っていただくことを目的に開催します。大変ありがたいことに、天皇皇后両陛下、高円宮妃久子殿下のご臨席を賜ることになり、子どもたちにとっても一生の思い出になるコンサートになるでしょう。我々も次の世代、次の機会につなげる責務があります。明日は、フロアに子どもたちの笑顔が溢れることを期待しております。あと1日、がんばりましょう!」
続いて、ヴァイオリン科上級生100名によるメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲第3楽章の指導をくださる豊田耕兒先生からご挨拶をいただきました。
豊田耕兒先生
「鈴木鎮一先生は、お相撲が大好きでした。横綱千代の富士を尊敬されていました。そして、ハワイから来た高見山が転がるような相撲があると、すごく喜んでおられました。その場所でグランドコンサートが再開されることをきっと喜ばれておられると思います。この10年間、才能教育研究会は大きな変換期でした。教育は、生まれた時から始まっています。この時期に注目することが、鈴木先生のアイデアの根本です。その時期に一番いいものを与えてあげる、そのことを我々は今一度考える必要があります。人間にとって一番最初に与えられたもの、それが一生の基礎になります。その基礎を作っていってあげることで、心が育てられると思います。そして最も美しい芸術に子どもたちに触れていただく、例えばクライスラーです。楽器の奏法はもとより、クライスラーの人間性の高さも感じられます。鈴木先生はそのことを繰り返しおっしゃっていました。今回、久しぶりのグランドコンサートですが、これを開催することは、同時に次の一歩を歩み出すことでもあります。これを機会に、鈴木思想の発展をますます発展させていただきたいと思います」
OB・OG会会長で、才能教育研究会業務執行理事の木村眞一さんの乾杯ご唱和の後、食事と歓談が進みました。そして、今回、共演するエル・システマジャパンの菊川穣代表理事がご挨拶をされました。
菊川穣代表理事
「私どもが進めている福島県相馬市、そして岩手県大槌町の子どもオーケストの子どもたちがスズキ・メソードのグランドコンサートで共演させていただく、このような機会を設けてくださった皆様に、まずは感謝の意をお伝えします。エル・システマは1975年にベネズエラで始まりましたが、実は1964年に早野会長も参加されたテン・チルドレンによる海外演奏旅行で、すでにエル・システマの関係者とスズキ・メソードとの接点がアメリカでありました。その後も多くの関係がありましたが、エル・システマジャパンを立ち上げた2012年以降、特に今日、これから演奏する大槌町のプロジェクトは、スズキ・メソードの上杉理香先生ご夫妻のご尽力があってこそのものでした。現在も大槌町では、4人に1人が仮設住宅住まいという現実がありますが、日々音楽で困難を乗り越える生活をしております。鈴木先生のおっしゃった『どの子も育つ』音楽で、社会を変えていく、人生を変えていく力を身につけることができると思います。これから大槌子どもオーケストラ8名による演奏をお聴きください。そして明日は、どうぞよろしくお願いします」
大広間の中央ステージに、岩手県大槌町から、この日に到着した子どもオーケストラの皆さん(ヴァイオリン6名、チェロ2名)とエル・システマジャパン大槌プロジェクト講師の櫻井うららさんが登場しました。櫻井さんは、機関誌199号で詳しく紹介された通り、東海地区ヴァイオリン科の野田豊子先生のもとで学ばれ、今は大槌町に移住し、子どもたちに寄り添う活動をされています。子どもたちの演奏曲は、2曲。いずれも岩手県に深く関わる曲で、まずは、宮澤賢治作詞作曲の「星めぐりの歌」。そしてNHKの人形ドラマで一世を風靡した「ひょっこりひょうたん島」のテーマソング。この島のモデルとなったのが大槌湾に浮かぶ蓬莱島、という説明を聴きながらの演奏となりました。
次に登場されたのが、ベートーヴェンの交響曲第7番第4楽章を指揮される金森圭司先生。ヴァイオリニストであり、指揮者であり、そして医者でもある金森先生からご挨拶をいただきました。
金森圭司先生
「今回のベートーヴェンの交響曲第7番ですが、300名が参加しての演奏となります。もしかしたら、この曲の世界記録としてギネスに登録してもいいかもしれません。音のバランスなど通常とは違う世界があるかもしれません。私自身、7年前の震災の時に日本医師会の一員として現地入りをしました。震災の数年前から、いわき交響楽団の指揮をしていましたので、心配でしたし、災害派遣の要請もありましたので、とるものもとりあえず、4月上旬に自分の車で一人で駆けつけました。体育館での診察を中心に行ないましたが、あの時の大変さに比べれば、明日はなんとかなると思っています(笑)。ベストを尽くしたいと思いますので、よろしくお願いします」
続いて、アメリカから参加されたキャリー・ベス・ホケット先生、ブライアン・ルイス先生、そしてオーストラリアから参加された水島隆郎先生のご紹介の後、歓談タイム。スクリーンではいろいろな映像が流されていました。
そして、紹介されたのが、東京スカイツリーで3月16日〜22日の1週間、展示イベントを担当されたヴァイオリン科の小林庸男先生と野口美緒先生。松本市の観光PRとともにスズキ・メソードのPRを展開された内容を紹介されました。7日間の通しイベントで少しずつ見せ方を変えるなど、さまざまに工夫された様子やお客様の反応についてもお話がありました。
続いて登場されたのが、翌日の特別演奏に期待が集まる、チェリストの宮田大さん。この前夜祭でも演奏してくださいました。演奏前には、子どもの頃に参加したグランドコンサートの思い出話とともに、本番では子どもたちの思い出に残る演奏をしたい、とのお話もいただきました。前夜祭では、次の2曲を披露され、先生方はうっとりと聴き惚れておられました。
・バッハ:無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV1007 よりプレリュード
・カザルス:鳥の歌
最後に紹介されたのが、佐藤満実行委員長と実行委員会の皆さん。国技館を開催会場とするに至る経緯などの紹介とともに、本番のアナウンスをされる北代裕子さん、実行委員会メンバーの紹介がありました。最後に、翌日のコンサートで流されるオープニングムービーをお披露目しました。また、クロージングで行なう「どの子も育つ」を唱和して、お開きとなりました。