装いも新たに、鈴木鎮一先生選の一茶俳句100句が、英訳されました!
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俳句の背景〜宮坂勝之
俳句の七五調:音節と拍
俳句の発声リズムは、日本人であれば定型の5-7-5は、ごく自然に指折りで数えられ、心地よい響きを感じます。指を1つ折る単位は拍(モーラ)と呼ばれ、1拍はほぼ同じ時間の長さであり、そのため揃ったリズム感が生まれます。拍は基本的に5つの母音「あ、い、う、え、お」と撥音の「ん」、そして「子音と母音の組み合わせ」であり、かな1文字が相当します。例外は長くのばす長音「-」や、促音「ッ」、拗音「キャ、シュ、ショ」などで、こちらも1拍と数えます。日本語の拍は、音節(シラブル)と同じ意味を持ち、俳句の日本語での字句の数え方は、音節(シラブル)単位というよりは、拍単位ということになります。
一方、英語などのほとんどの外国語は音節単位で発声されます。音節の単位は「母音を中心とした音のまとまり」です。二重母音の「ああ」などは例外ですが 1 音節には原則母音が1つです。このため音節の長さは拍とは違い、一定ではなく、拍で流れる日本語のような、揃ったリズム感はありません。
音節と拍の違いを例で示してみます。「やせがえる」は5音節(5拍)、「スキニーフロッグ」は8音節(8拍)ですが、skinny frogは3音節です。「かえる」は3音節(3拍)、「フロッグ」は4音節(4拍)ですが、「frog」は1音節です。リズム感の根幹をなす発声単位が違いますので、拍をベースとした日本語の定型の5-7-5の美しさは、そのままでは英語での表現は難しいことがわかると思います。
一茶の時代の俳句の紹介、そして日本人への英語の理解を深める意味では、俳句の定型化の持つリズム感を英語に込める方法として、英語音節で5-7-5にする方法は最善だと思います。しかし一茶の俳句の心を英語圏の文化として表現することを中心に考えると、音節で形式を整える方法にこだわらず、選択する語彙が広げられ、またより自然な響きをもたらし、口ずさみやすいスタイルも重視すべきだと考えました。本書では27句で音節による5-7-5調を用いました(◎で表示しています)。
今月は、51句〜60句を紹介させていただきます。
また、スズキ・メソード公式サイトの会員ページからは、この100句の日本語を立川志の輔師匠、そして英語をパックンにお願いした音声データをリスニングすることもできます。鈴木先生が選ばれた一茶の俳句への特別な思いが込められていますので、ぜひお楽しみください。
→スズキ・メソード公式サイト会員ページ
著者・演者の紹介
宮坂勝之
長野県生まれ。小児科医、麻酔科医。スズキ・メソード初期の生徒で、1947年(3歳)からヴァイオリン、一茶の俳句を習う。カナダ、アメリカ留学後、国立成育医療センター、長野県立こども病院、聖路加国際病院などに勤務。在宅医療児支援、日野原いのちと平和の森活動などに参加。和洋女子大学長補佐。スズキ・メソード顧問。聖路加国際大学名誉教授。
宮坂シェリー
米国ニューヨーク生まれ。ペンシルバニア大学で心理学専攻。トロント大学日本語学科を経て、文部省奨学金にて東京学芸大学へ留学。1977年より日本在住。スズキ・メソードの生徒の母親として息子たちと俳句暗唱に参加。日本語能力試験N1、華道池坊華監。外国人知的障害児教育、医学英語論文編集などに関わる。
柳沢京子
長野県生まれ。信州大学教育学部美術科卒業。信州の自然、いのち、平和をテーマにした独自の切り絵の作風が注目され、国内、欧米各地で個展開催。公共施設での展示、長野冬季五輪(1998年)企画に参画。1977年「柳沢京子一茶かるた」(奥野かるた店)、2017年「一茶365+1きりえ」(ほおずき書籍)など一茶関連作品出版。
立川志の輔
富山県生まれの落語家。明治大学卒業。サラリーマンを経て立川談志に入門。1990年真打昇進。古典から新作まで幅広い芸域で知られる。北海道から沖縄まで全国各地のほか、定期的に海外公演も行なっている。2015年紫綬褒章受章。1995年より現在まで続くNHKの長寿番組「ガッテン!」の司会で知られる。2018年より富山国際大学客員教授。
パトリック・ハーラン(パックン)
アメリカ・コロラド州出身のお笑い芸人・コメンテーター。ハーバード大学卒業。1993年来日。英会話学校講師などを経てマックンと組んだ漫才コンビ「パックンマックン」で広く知られる。幅広い領域で活躍するタレントである。立川談志(志の輔の師匠)とも共演。東京工業大学リベラルアーツセンター非常勤講師。
日本語解説ナレーション/宮坂久美子
長野県生まれ。信州大学大学院修士課程終了。元JICA海外協力隊員。
英語解説ナレーション/宮坂シェリー